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Day.1-1 始まりは酩酊

酒井雄大、35歳。派遣社員。彼女なし、才能なし、人望なし。

得意技:酒を飲むと陽気になること、及び酩酊時の裸踊り。


これは、日本社会の底辺に生きる中年男子が、神様から“酔えば酔うほど地獄耳”というスキルを授かって異世界転移をし、そこに住む人々と交流したり、冒険したり、危機に立ち向かったりするお話である。

一見クズスキル、しかし使ってみると実はチートスキル!?

果たして彼の異世界ライフの先に何が待ち受けるのか?

美少女あり、無双あり、コメディあり、シリアスあり、時に激しいバトルもあって、エッチな展開もあったりするかも?


さぁ、酔いどれ英雄が繰り広げるドタバタ劇の世界へ、一緒に旅立ちましょう!

「やい、起きろ」


 おっさんの声で目が覚めた。

 おかしい、俺はどうしておっさんに起こされているのだ。


 確か……忘年会で裸踊りをしていたんだ。

 さすがに酒を飲み過ぎて酩酊状態で、大事な部分を覆っていたタライが滑り落ちて、それから━━。


「んんーーーーー、頭の頭痛が痛い!!」


「さっさと起きんか、落伍者!!」


「はい、人生袋小路男ですけど、何か?」


「ほれ、さっさと起きて立ち上がらんか」


 おっさんの声に促されて俺は起き上がった。頭痛が……いや、別に痛くなかった。治っている、不思議なこともあるもんだ。いや、待てよ。もしかして三日三晩寝込んでいたとか!?


 おっと危ない、自己紹介を忘れるところだった。

 俺の名は酒井(さかい)雄大(ゆうだい)、もうミドルエイジだが絶賛派遣社員を満喫中である。

 いや、違うな満喫はしていない。そもそも正社員になったことが無い。まぁ一般的に見ると底辺な場所で生きてる人間ということになるのかな。

 貧乏暮らしだが腹には立派な贅肉が乗っかりつつあるぞ、明らかに酒の飲み過ぎだな。


「ほれ、こっちを向け」


 なんか白くて眩しいオッサンがいた。後光が差しているというやつか?っていうと……


「ちょ、ええええええええ!?

 俺もしかして死んだんですか!?」


 嘘だろ!?

 だってまだ、黒髪ロングで清楚なはにかみ笑顔がかわいい美少女との恋愛結婚も経験してないのに!?


「ノーノー、死んではおらんから落ち着きなさい。

 ワシは見てのとおり、神じゃ!」


「……めちゃくちゃざっくりした説明っすね。

 ええっと、神様が俺に何の用?」


 周囲は、俺の足元以外真っ暗で何も見えない。神おっさんはまばゆく輝いているけど。


「まぁまぁ落ち着くんじゃ。

 自己紹介からさせてもらおうかの。

 ワシは酒の神、ゴッド・アルコホールじゃ!」


「え、バッカスとかそういう名前じゃないんだ」


「それはもっともっと古い時代の神じゃな!

 今は神界もだいぶ様子が変わっておってな!

 もっとカジュアルに地上の者たちと接していこうという方針になったので、神ネームもみんなわかりやすく付けておるんじゃ」


「へぇ~、じゃあ裸踊りの神もいるの?」


「おったがこの前さすがにセクハラで捕まってしまっての」


「いたんかい!!」


 しかもセクハラで捕まるってのはどういう状況だよ!?


「本来ならやつがおぬしの前に現れるはずだったんじゃが、代わりにワシが行くことになった」


「ふぅーん……いや、てか裸踊りの神って何する人なんだよ!?」


「え?裸で踊るんじゃが?」


「え?」


「……え?」


「そっか、わかった」


 うん、そうだね八百万(やおよろず)の神がいる国だもんね。枕をひっくり返すだけの奴もいることだし。いや、こいつは妖怪だったかな。


「そんな事よりも!

 おぬしにビッグニュースがあるんじゃよ!

 神界も最近では選挙によって各地方の代表を選出しているんじゃが、神界の選挙方法、伝わっておる?」


「いや、ぜんぜん」


「おお、そうかそうか。

 ならば説明しよう。

 神界得点総選挙じゃ!!」


「何何、何なのそれ!?」


「要するに、地上界にこっそり降りて行って神の力で人々に善行をばら撒くのじゃ。

 で、神界で善行の量を集計してもっともポイントが高かったものが代表になるのじゃ」


「おお!なんかすごそう。

 じゃあ俺にも善行があるわけだよね?」


「うむ、あるぞよ。

 それこそビッグニュースじゃ!」


「オッシャァ!!!!

 人生大逆転だぜ!!!!」


「うむうむ、喜んでもらえて何よりじゃ。

 では異世界で存分にスローライフを満喫してくるのじゃ」


「え?今なんか異世界とか聞こえたんですけど」


「異世界好きじゃろ、おぬし。

 スマホで見とるじゃろ、“小説家になろう”。

 ワシは何でも知っておるぞ!

 おぬしをこれから30日間異世界満喫の旅へご招待!!」


「と、唐突だなおい!!

 俺の仕事どうなるんだよ!?」


「なぁに、現実世界ではほんの数秒の出来事じゃ。

 おぬしが酩酊して倒れるまでの時間ぐらいじゃな」


「そ、それは助かるが……俺を異世界に招待してどうするつもりなんだよ?

 俺にはとくに優れた能力なんかないぞ」


「ふふふ……大丈夫じゃ。

 チートスキルをひとつ、おぬしに与えてやるからな」


「……き、来た!!この展開!!」


 胸が熱くなってきやがった。ついに俺にも異世界転移してチートスキルで無双しながらハーレム作ってウハウハな日々が訪れるに違いない。


 どんなチートスキルなんだ一体!?


 異世界でスローライフっていうと何だろ?


 やっぱどんな敵でも一撃死の“即死チート”か!?

 人から無条件に好かれる“魅力”チートもいいな。

 それか異世界の文化レベルが低すぎて俺が知識チートを発揮しまくる展開もアリっちゃアリかな。


「期待してよいぞ。

 ではさっそく発表しよう、おぬしの持つチートスキルは……」


 ワクワク!!


「酔えば酔うほど地獄耳になるスキル、アルコール・コーリングじゃあ!!!」


 ドン!!


「な、なんじゃそれぇえええええええ!!?」


「何を驚いておるんじゃ?

 あまりに凄過ぎて腰を抜かしたかのう?」


「ちょっと待ってくれよ、その……耳が良くなるスキルってことでいいんだよね?」


「うむ、いかにも」


「それ以外は?」


「ん?おぬしにやるチートスキルは一つだけじゃよ?」


「……」


「よし、納得したのなら転送するぞい」


「ん、え、いや、もうっ!?」


「それでは30日間異世界転移の旅へいざ、出発ー!!」


「ままま、待って!!

 まだ何も!心の準備が!!」


 あぁ無常。

 俺の願いは聞き入れられず、強烈な重力が俺をどこか遠くへと引っ張っていく。

 そのあと、俺はまっさかさまに落下して行った。無限の闇へと。


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