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Day.1-15 屍体使いのシトリ

「あんな……汚らわしいお店に行くなんて!!」


 シトリの叫びが木霊する。

 な、なぜバレているんだ!?


「不潔です!」


「わぁ、不潔だって!クスクス」


 と、これはジューク。なんて楽しそうな、邪悪な笑みをするんだ。


「おい、クスクスじゃねぇよ。

 ちょっと、な、何のことだか俺には」


「みっともない言い逃れをするな!」


 今まで黙っていたイリヤさんが一喝した。


「はい、すいません……。

 俺は卑しい人間ですぅ……」


 するとイリヤさんは大げさにため息をついて、滔々(とうとう)と語り始めた。


「勘違いするな、お前がどんな店に行こうが勝手だ。

 それに私の渡しておいた金をどう使おうと、自由だ。

 そこはどうだっていい。

 大人のすることに、いちいち口を挟もうという気は更々ない。

 しかし、だ。

 言っておかなければならないことがある。

 私が怒っているのは、お前の行動の迂闊さについてだ。

 この街に慣れてない人間が、あんな治安の悪い場所をうろつくな」


「え……」


「金を盗まれたのもそうだ。

 危機意識が低すぎる。

 そんなことでは次は命を落とすぞ」


「マ、マジですか……」


 そこまで、この街は危険なのか。風俗街の治安は確かに言いとはいえないだろうがそこまで剣呑な雰囲気でも無かった気がするが……。いやしかし俺は実情に詳しいわけでもないしな。


 ん?

 てか待てよ。

 どういうことだ、なんで一から十まで俺の行動が筒抜けになっている?

 おかしい。おかしいですよ、これは。


 俺はさっき、イリヤさんの判断は甘いとか考えていたが本当にそうか?

 この人がそんな、甘い考えで動くだろうか。

 なぜ、シトリの宿に俺を置いた?

 なぜ、俺を自由に泳がせた?


「もしかして……尾行してました?」


 おずおず聞いてみた。


「当たり前だ!」


「はっ、はひっ!」


 すごい剣幕で返された。


「お前がどう行動するか確認したかったからな。

 善人か悪人か見極めるには、自由に行動させて秘密裏に監視しておくのが良いと考えたのだ。

 結果から言えば、お前は悪党ではないがあまりに無防備だ。

 まるで襲ってください、身ぐるみはがしてくださいと言わんばかりの惚けっぷりだ。

 だからこそあっさり悪党に金を盗まれるし、得体のしれない客引きに引っかかるのだ。

 あれがもし悪意ある人物だったらどうなっていたと思う?

 路地裏に引き込まれて身ぐるみ剥がされた挙句、殺されていても不思議ではない」


 そんな物騒なのか、この町は!?

 いや、最悪のケースの話をしているのだろう。そう思いたい。


 にしても、密かに監視していたのか……。全然気づかなかった。

 イリヤさん自ら尾行をしていたわけではないだろう。俺はイリヤさんの気配を察することが出来なかったし。

 アルコール・コーリング発動中にイリヤさんが近くにいれば、俺はそれに勘付いただろう。

 別の誰かに追わせていた可能性が高いか。


 なるほど、これであのコソ泥との一悶着の場面、警備兵があまりにタイミングよく近くにいた説明もつく。俺の身を案じたイリヤさんが先手を打っていたわけか。何かあった時の為に。


 つまり俺は、単に泳がされていただけだ。

 シトリに買い物を頼まれた時からすでに、俺はイリヤさんの掌の上で踊っていたわけだ。


 一本取られた、というより他、ない。


「でもどうやって尾行を?」


 俺が尋ねたら、イリヤさんはジュークと目配せした。無言でイリヤさんが頷く。


「わかった、教えておこう。

 なぜお前をこの宿に置いたのか。

 シトリ!」


 呼ばれてシトリが一歩前へ出る。


「改めて自己紹介しておきます。

 私はシトリ・クローネ。

 ロメール帝国魔導部隊、通称“アビスハウンド隊”所属の屍体使い(ネクロマンサー)です」


 え?

 ええ~!?


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