一章 春
受験の言葉が本格的に日常にくい込んできたのは、大体2年の冬と春の境目──具体的には2月末あたりだった。
その頃私は、受験なんぞまだまだ遠くのものだと思っており、志望校すら朧気にしか考えていなかった。校外模試で志望校を書く欄が6つほど毎回用意されていたが、2/3はその場のノリで書いていたのを覚えている。(しかし、変なところで真面目だったので、ネタ枠を書くことは結局一度もなかった)
三者面談でもちょいちょい大学の話が出ていたが、正直気に求めていなかった。これには理由がある。高校受験の際、私は自分の実力よりいくらか下の学校の試験だけを受け、当然の結果として合格していた。
故に、受験というものに対して危機感を持つことができなかった。
さらに、昔から不器用で中途半端な人間だったが、それでも最後はなんとなく上手くいく……というポテンシャルを持ち合わせていたのもひとつの原因だったと今では思う。
一見自慢のようにも聞こえるこの話だが、実際「上手くクリアしている」のではなく「クリアラインを上手く下げている」と表現するのが正しいだろう。自分で自分を納得させるのがどうやら一番の特技だったのかもしれない。
そんなわけで、大学受験という未知の戦いに、私は丸腰&慢心で挑んでいくのだった。