第9話02 プレッジシーン 「誓いを胸に、戦場へ」
――それは、いつからかアトラタンに伝わる慣習。
ここぞという決戦の前に、成し遂げるべき誓いを立てると、戦場で生き残る確率が上がるのだという。
ある者は、決死の一撃で限界以上の力を引き出し。
またある者は、すんでのところで致命傷を免れた。
その様は、まさに「天運」を味方につけているかのようであったという。
誓いを立てて目標を明確にすることで、それを果たさんとする意志の強さに混沌が応えやすくなるのだ――とも言われているが、実際の所は定かではない。
いずれにせよ、負けられない戦いを前に「誓い」を立てることは、アトラタンの者たちにとって暗黙の了解となっていったのである――
***
GM :はい、では決戦の準備として、部隊編成とプレッジを行ってもらいます。ルークの指示書とシェリーの署名があれば、砦の指揮官は訝しみながらも兵を貸してくれるでしょう。で、まずはその部隊の編成を決めてねって事で。。
ましろ :はーい、何が貰える?
GM :lv1の歩兵部隊が二つ、まぁこれは言っちゃ悪いけど雑魚兵ですね。そして残り二個小隊が、lv2の任意の部隊として扱えます。あ、任意と言っても、騎士団や魔法兵団みたいなカウント(※1)必要なやつは無しで。
ましろ :amida 、どれが良さげ? っていうか、先に誰が強い部隊持つか決めようか。
amida :君主はまず持っといていいと思うよ。
ましろ :あとはイス様は盾役だから、強いの持っといた方がいいと思う。もしくは、一人で突っ込んで動き回るローランかな?
ニーグ :カバーリング1sqしか届かないし、正直動き回られるとサポートしきれないと思うから、ローランに良いの持ってもらった方がいいと思う。
ましろ :じゃあ、フレアちゃんとローランで強い部隊を率いて歩き回って、リオンとイス様は歩兵で我慢と。
ニーグ :そうそう。
amida :一応「精鋭兵lv2」っていうのが、部隊特技(※2)でダメージ+15できる。あと能力値修正も白兵向けな上に、上昇幅もかなり高いね。
ましろ :じゃあ、精鋭兵安定かな?
ななむ :ローランも火力の上乗せしたいから、それでいいと思う。【筋力】値の伸びもオイシイし。
GM :フレアとローランが精鋭兵lv2、リオンとイスキューロンが歩兵lv1、でいいね? そしたら砦で休憩したって事でHP/MP全快して、その後プレッジです。部隊補正は各自まとめておいてねー。
***
GM :それではプレッジシーン、「誓い」を三つまで立てることで、その分の天運を取得できます。天運を受け渡ししたい人は、誓いの内容を共有するのを忘れないようにねー。
ましろ :はーい。フレアは「取り戻す」、「民を護る」、それから「敵を打ち倒す」。 何を取り戻すかはあえて明言しない、まぁ色んなものだね。
ななむ :ローランは「フレアを護る」、「フレアを支える」、「戦いに勝つ」。シェリーに生かして連れ帰るって約束したしね。あと、「支える」はフレアの望みを叶えるって解釈して、「取り戻す」と共有できる?
GM :いいよー。あと打倒系も、皆取るなら共有してて大丈夫。
ニーグ :「信者を増やす」、「信者を護る」。この二つは基本で、あとは「この戦いに勝利する」で。
amida :リオンは「身の安全を確保する」と「戦いに勝利する」、それから「フレアを護る」にしておこう。
ましろ :誰か、「民を護る」を共有してくれないですかね?
amida :リオンは民を護るってガラじゃないからなぁ。
ななむ :ローランも、姫様第一だからねー。
ニーグ :その民は、信者になってますか?(小声
ましろ :……なってないです(白目
ニーグ :俺ら、まだ国を持ってないんだよなw 信者の数は[国レベル×CL×100]人程度らしいから、つまり国レベルが0で0人なんだよw
ましろ :て、「程度」なら一人くらいはいますって!w それにフレアちゃんは絶対に信者ですから!
ニーグ :つまりイスキューロンはフレアちゃんのおかげで現界している……? 宗教絡んでるわ共依存だわそもそも同性愛だわ、この国ヤバいぞ!?www
amida :もう手遅れだなこの国、亡命しなきゃ(遠い目
***
「さってと…大体準備も出来たし、そろそろ”アレ”をしておきましょうか?」
ぐいっと伸びをしたフレアが、3人に向かって問いかける。
「ああ、”アレ”ね。僕はあんまり信じてないけど、姫様がやるなら付き合うよ」
「ま、丁度神様もいるし、験担ぎにはもってこいだわな」
すぐさま察したリオンとローランに対し、未だ戦場での慣習に疎いイスキューロンは怪訝な様子だ。
「”アレ”……とは何じゃ?」
「誓い(プレッジ)ですよ。絶対に成し遂げたい目標を、自分自身に誓うんです。……そうしたら生き残れるっていう、願掛けみたいなものですね」
神様もどうですか? と、明るく笑ってみせるフレア。あるいは気丈な彼女にも、何かに縋りたくなる時があるのだろうか。
「ふむ……興味はあるが、ワシは願を掛けられる側じゃでな。己で誓うような願いは持ち合わせておらん」
「それなら、私は神様に向かって誓います。ですから神様は、私達に加護を約束して下さいませんか?」
そう言って跪くと、彼女はイスキューロンの瞳をまっすぐに見つめ、宣誓の言葉を述べる。
「私、フレア・ルージュは、己の信念と聖印に懸けて、”失なわれたものを取り戻す”事を、”祖国の民を護る”事を、そして”祖国の敵を打ち倒す”事を誓います。……どうか神様、この誓いが果たされますよう、お見守り下さい。」
「ほ、良かろう。……汝の決意と祈り、このワシが聞き届けた。破壊と豊穣の神、”力強きもの”の名において、お主らに戦勝を約束してやろうぞ」
そう宣言し、ふわりと笑みを浮かべるイスキューロン。肢体は幼い少女のものでありながら、その笑みは慈母のごとき暖かさを湛えていた。
***
GM :はい、ではこれでプレッジシーンも終わり。……次はいよいよ、クライマックス戦闘です。
※1 カウントについて
『グランクレストRPG』におけるカウントとは、主に「国を治める君主がどれだけ魔法師協会に協力したか」を表す数値であり、国がアカデミーサポートを受けるための費用にもなる。
フレアは未だ統治する国を持たないため、所持カウントは問答無用でゼロである。
※2 部隊特技について
それぞれの部隊に固有の特技で、「士気」を消費して発動する。士気が0になると部隊崩壊になりペナルティが付くので、使いどころには注意が必要。