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Chapter2 ルークの心 前篇

2章までの、ルークの心情。まだ大丈夫?

 それは、突然の出来事だった。

「何やら、二ホン語を話す人が三人ほど出現したようです!」

 と、役人が大声でお父さんに伝達していたのだ。

 時間は夕方。ボクは、計四回の厳しい授業を終え、夕食を食べていた。夕食は、朝食とは違い、『授業の時間差』が存在しない。なので、王族が全員集まって食事をとる。

 だから、いつもは聞くことのない『役人からの伝達』も、この時だからこそ聞くことができた。

 

「その人は役人か?」

 お父さんの表情は落ち着いているが、少し早口になっている。

「いいえ、違います。見た限り、私たちとは違う人種の可能性が高いかと」

「そうか。なら、二ホン人の可能性が高いな。……ちなみに、その人たちは、私たちの国の人々を襲ったりはしないんだな?」

「ええ。特に目立った事件は起きていないので、その可能性は今のところありません」

「……ほほう。で、どこにいるんだ?」

「舞台の上で、何やら『ラッスラロンライ』なるものをしている、と……」

「ラッスラロンライ?」 

 そのまま、お父さんと役人の話は続いていった。

 しかしボクの中では、ある言葉が頭から離れなかった。


 二ホン人。


 これまでは歴史の授業でしか聞いてこなかった、幻のような存在。

 私たちに、二ホン語というものを伝達し、また、王族と役人以外にはカズトヨ語なるものを教えて回り、また、カネの実を生やすとともに、それを貨幣として運用するなど、今現在の平和なルーカス王国を作り上げた、『カズトヨ』と同じ人種。

 その、幻のような存在が、ここにきているかもしれないというのだ。


「では、至急、王城内に呼ぶことにしよう。カズトヨの部屋を使える状態にしてくれと、係りの者にも言ってくれ」

「わかりました――」


「その人たちと話がしたい!」


 気づいたら大声を出していた。

 もう、お父さんと役人がこれまで何を言っていたのかなんて関係ない。僕の奥底に眠るホンノウというものがだまっていなかった。


 ただ、こういうお願いはお父さんにいつも止められる。だから、いつも勝手に授業を抜け出したりとかで無理やり行くんだけど。……じゃあ、『〜がしたい』といわずに秘密のまま行動すればいいじゃんってことなんだけど、自分でも言うのが止められないんだよね。まあ、それでいいや。

 

「……わかった。今回は特別だ。こんな機会、めったにないからな」

「え! ほんとに!」

 あのお父さんがすぐに許してくれるなんて! 今日この王国がつぶれてもおかしくないよ!

「ただし!」

「……はい」

「二ホン人の前では礼儀正しくふるまうように。くれぐれも、馬鹿な国だと思われないようにな」

「…………はーい」

「返事は短く!」

「はい!」


 しょうがない。最初は礼儀正しくふるまっとこう。


――――――――――――


 すごい人たちだ!

 ムッツリやヒサコは、ボクの知らないことをたくさん知っている。しかも、興味の持てる話題ばっかりだ。

 途中で父さんに止められちゃったけど、十分大収穫だった。まさか、ラッスラロンライがラ●●●●●●イだったなんて!

 

 中でも、一番の収穫は……。

 

 ムッツリって意外とカワイイ。

 

 詳しいことはよく覚えていないけど、無性にムッツリのことが気になって気になって。もし時間が許されるならば、ずっと一緒にいたいくらいだ。

 もちろん、ヒサコもローランもいい人だし、ヒサコは何やら手振りを駆使して面白いところがある。

 ……これはもう、授業を受けている暇はないな。うん。道徳の授業なんてつまらないだけだし。

 よし。ぬけだそう。


――――――――――――


 はぁ〜。痛い痛い。おじいちゃんのおしりぺんぺんが一番こたえるよ。

 ムッツリたちと話す約束をしているっていうから、帰ってきたって伝えればほめられるって思ったのにな〜。


 ……おしりといえば。


 あの、ヒサコがいっていた、男同士の行為というものにものすごく興味がある。

 中でも、「それは、異性への好意という普遍的生理現象を超越した、まさに本能を超えた人類の芸術よ!」という言葉には、ボク自身の欠点を埋め合わせするだけの魅力的な価値があった。

 あの言葉を聞いてからは、自分の欲望を抑えるのに必死で……。正直、川でローランの髪を洗っているときも、商業地域で買い物をしているときも、城に帰る際に民衆に挨拶をした時も、ずっとそのことで頭がいっぱいで……。

 特に、川辺でムッツリが抱き着いてきたときなんかは、もう心臓のバクバクが止まらない状態になって、思わず、強く熱い抱擁をしてしまった……。

 ちなみに、いま、こうやって教室に向かっている最中も、ムッツリの穴を想像――ああ、だめだダメだ! そんなこと想像したら、ボクは我を見失ってしまう!

 今まで、本能に従順に過ごしてきたボクだけど、流石にこの行為は魅力的な中にもアブナイ何かがあって、まだ実際の行為には踏み込んでいないと思うんだけど――いや、どうだろ? よく覚えてないけど、おそらくはまだだと思う。


 ……もう少し、我慢してみるか。


 なに、どうせ、あとひと月ぐらいしたら別れてしまうような出会いだ。だからといって、伝説とも呼べるような二ホン人との出会いをおろそかにしようとしているわけではもちろんないが。それに、ボクはムッツリだけにドキドキするのであって、ほかの男にはそんなにしない。将来は女性と結婚も考えてはいるほどだ、大丈夫大丈夫。


 ああ……しかしさみしい。

 ムッツリ。

 ムッツリムッツリ。

 ムッツリムッツリムッツリ。


 後、いくら名前を呼べば、この切ない思いは報われるのだろう。

 ああ、●れたい。


 そして、一緒に●●――――――


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「……すみません。僕の気分がすぐれないため、ここでいったん区切らせていただきます」

 というかなんだこれ。誰も見たい人いないんじゃないだろうか。

「……さすがに私も反省しています。シチュ的にはOK(片手でOK)ですが。未熟者王子×いじられキャラの変態男(腐笑)」

「OKじゃないよ!」

 一言多いわ! あとマニアックだわ!

「ねえ、●●ってなに?」

「ああ、これはね、天国に上るって意味で――」

「おい久子。それ以上言ったら……わかってるよね?」

 少しトーンを落としてそう言うと、久子はつまらなそうに僕を見た。なんだよその眼は。僕だって、もうローランには傷一つ付けたくないんだよ。ここは何が何でも止めるべきだ。


 ……まあでも、まだ話は終わらないわけで。



「じゃあ、むっつりとるーくはしんじゃうの?」



「……ええそうよ」

「おいおいおいおいおい! 何言ってんだよ! もっといい言い方が――」

「はい! じゃあ、ムッツリにお別れの挨拶! な〜む〜」

「な〜む〜」



 く、悔しいけど……。

 ローランのな〜む〜は嫌いじゃない!

 






                 後編に続く。






後編は、何回か話を挟んでからです。

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