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4 もじもじポール

色々あって、かなり短くなっちゃいました。すいません。




「はぁ〜。何とかひと段落ね〜」


『僕はムッツリです』という、黒歴史となりうる自分でも衝撃的な発言をした授業も終わり、昼食後。

 自分の部屋に戻った僕たちは、朝食振りの休み時間を迎えていた。城からメインストリートまでは、往復で考えるとまあまあ距離がある。これまでにも、全速力で走ったり、峠のアップダウンをひたすら歩いたりしている僕達だ(飛行ローランを除く)。僕の場合、筋肉痛はまだ残っている。おそらく、久子も筋肉痛だろう。さっきの声からも、確かな疲労が感じられた。


 ちなみに昼食は、サンドイッチ(のようなもの)だった。形は、あの町で買ったものにそっくりだったので、ローランと出会ったころが思い出されて、少し不思議な気分になった。


「ぷしゅるるる〜」

 久子はそう言って、ベッドに寝転がる。

 なんだよぷしゅるるる。いろいろ古い。

「ぷしゅるるる〜」

 ローランもまねをする。なんだよかわいい。


 よし、僕もやろうかな。……ちょうどいい。ローランの隣を狙おう。

「ぷしゅるる――あべば!?」

 僕ドッコーン壁にドーン。

 久子の右ストレートが、斜め方向からクリーンヒット。

「ひどい! ひどいよ! これまで旅を共にしてきた僕たちの仲じゃないか!」


「ローランの真上から口を『る』の状態にして飛び込んで来たら、誰でも守りたくなるわよ」


 あれ〜。おっかしいな〜。少し足が滑っただけなんだけどな〜。


 コンコン。

 僕が自分の本能に疑問を抱いていると、扉がノックされた。

 なんだよこんな時に。せっかく休めると思ったのにな〜。

「どちら様ですか」

「あ、ムッツリ……ちょっといいかな?」

 扉を開けると、そこには優男ポールがいた。ちなみにサイノとオックはいない。午後の授業はもう少しのはずだけど……なにかあったのかな?

「ちょ、ちょっと、相談があって」

 そう言うポールは、眉毛を八の字にしながら、もじもじとしている。

 

 ん? なんだこの、『未熟な小学生の男子が、同級生の女子に思い切ってラブレターを送って体育館裏に呼び出したが、いざ好きな人を目の前にすると言葉が出てこず、もじもじとしたまま時間だけが過ぎて行ってしまう』という感じは。……まさかポールも僕のことが気になってしまっているのかな?

 二人の男から友情とは別の好意(もう一人は行為)を持たれるとは、人生に二度とない経験だ。しかし、なにもうれしくはない。これはどうしてだ。

 というか、昨日のムッツリという呼び方は、決して『その場限りの雰囲気による一時的なあだ名』ではなかったということがこれで証明された。しかし、なにもうれしくはない。これはどうしてだ。


「どうしたの?」

 いちいちムッツリを言及することもどうでもよくなってきたので、普通に聞き返すことにした。……もう末期だな。

「あの……えと……」

 しかし、ポールはなかなか答えず、もじもじとするばかり。なんだ? そんなに言いにくいことなのか?


 そんなにじらさなくていいよ? 『実は、初めて見たときからムッツリが気になっていたんだ』とかいうセリフを言おうとしていたところで、相手にしないからね?というか、もう扉をバタンと閉めちゃうからね?


「どういう目的で来たの?」

 もういい、短期決戦で行こう。相手にこのままもじもじされていても、こっちが困るだけだ。久子なんて、ローランとそのまま寝始めてるし。なんで僕一人だけ甘―い告白タイムを演出しなければいけないんだ。

 まあ、そうとは限らないけど。僕も、ルークといろいろあっておかしくなっているのかもしれない。

 

「…………」

 しかし、そんな僕の質問にも、ポールは下を向いてしまう。

「えと……」

 もじもじ。もじもじ。

 優柔不断か!

 優男の優は優柔不断の優か!

 ここまで来たなら言ってしまえよ! そういうことは、もう相手に『コイツ何者だ?』って思われる前に言ってしまった方が、後の後悔が少なくなるんだよ! 僕が初めてラノベを買ったときもさっさとレジに持って行ったよ! ラノベの萌え絵の表紙を持ちながら、あるいは絵の側を服で隠して持ちながら、レジに持っていく勇気が出ずに永遠と徘徊するよりマシだろうが!


「もう、僕寝るよ?」

 もう言わせよう。こちらとしても、この問題は保留なんかにしたくない。相手にこれ以上は待てないという意思を示すことで、無理やりにでも言わせるんだ!

「あ、あの……人間関係のことで相談が――」


「ポール! なにしてんの? 授業始まるよ!」

 やっと、ポールが話の内容を言いかけたところで、元気な女性の声がした。ドアの関係で見えないが、幼馴染の女の子のような声だ。(どんな声だ)それと内容からして、サイノで間違いないだろう。

「ご、ごめん。今のは、忘れてもらってもいいから!」

 ポールはそう言うと、慌てて声の方へ向かっていった。

 はぁ、結局保留か。……でも、僕に対する告白ではなかったことだけは救いだ。これはよかった。

 しかし問題は、ポールの言葉。『人間関係』って……そんな、三人の中が悪いようには見えないし……どういうことなんだろう?






ポールが好きになってしまった男の人は、ぜひ感想欄にご報告ください(嘘)

受けにぴったりですよ。

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