表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/54

3 臨時教師~しりとり編~

パロ封印で頑張ってみました。


途中、シリアス出ちゃってますが、そこもできれば読んでほしいかなと思います。





「「ありがとうございました〜」」


 パチ。

 パチ。パチ。


 ラ(略)が終わり(ローランは三人と一緒に見ていた)、これで僕たちに残ったネタはなくなった。

 初め、異常な盛り上がりを見せていたオレオレ大合唱は、あの最後の久子の掛け声からの全員発声で、終了と思われたらしい。何やってんだ久子。もう少し粘ってくれよ。

 というわけで、まだ僕たちが教室に入ってから今まで、そんなに時間は立っていない。

 ここからは、入る前の久子の言葉通り、機転を利かせて流れに乗ることが重要になってくる。

 その前に、時間を稼ぐことができるとすれば、今僕たちがやったネタについての質問時間だろう。これは、かなり期待できる――


「「「…………」」」


 あれ? とても静か。

 三人は、拍手はしたものの、そこからきょとんとするばかりだった。

「あ〜。え〜」

 タラタラタラタラ。

 久子の額から、汗が尋常でないほど流れている。かなり焦っているようだ。

「な、何か質問とかある?」

 そんな久子の代わりと言ってはなんだけど、僕が一応聞いてみる。

「あの……」

 口を開いたのは、優男風のポール。

「少し、言葉が早すぎて、ついて行けないよ」

 そう、遠慮がちに言った。顔は、困ったように笑っている。愛想笑いというやつか。



 愛想笑い。



 これも、日本語という複雑な言葉が生み出した複雑な感情なのだろうか。なんて考えが、一瞬よぎったが、それは今考える問題ではない。心にしまっておく。

 ……そういえば、メインストリートの役人さんがルークに同じことを伝えたときも、文字が違ったりしてうまく伝わってなかったっけ。しまった、考えもしなかった。

「あと、意味が全然わかりません」

 金髪イケメンのオックもぶっきらぼうにそう言った。

 うう、傷つく。

「あ、あの……すごい、と思います……」

 皆と違ってそう言ったのはサイノ。でもお世辞臭が半端ない。



 お世辞。



 これも、愛想笑いと同じような感じだろうか。やはりこう、連続で複雑な感情を見てしまうと、こちらとしても意識せざるを得ない。


 相手を傷つけないために、嘘をつく。


 一見、合理的な手段にも見える。高度な技術だとも思える。

 ただそれは、見破られた時に、逆効果に働く。コイツ本当はそう思ってないくせに! と感じることも少なくない。


 しかし、それを、咎める者は少ない。


 お世辞だとわかっていても、「それはお世辞だろ!」と怒る人がいるかと言われれば、それは少ない方だと思う。というか、怒ったらダメだとさえ思える。

 これはなぜか。

 それは、外の顔というものを整えるためだ……と、僕は勝手に思っている。


 そして。

 それは自分の気持ちを真っ直ぐ伝えているカズトヨ語とはとても、ほど遠い――



「しりとりぃぃぃぃ!」


 ――場違いな賢者タイムに耽っていたところで、久子の大声。

 迷いに迷った挙句、何とか絞り出したような、苦節二十年並みの叫び声だった。


「しりとり……とは?」

 この声に、優男風ポールは反応した。

「しりとりとはねぇ……言葉の尻を取って、最初に持ってくるのよ」

「「「…………」」」

 何ともやけくそな説明だった。疲れすぎだろ。


 でも、正直いいアイデアだと思う。苦節二十年は伊達じゃない。ただ、流れは全然関係なかったけどな。

 じゃあ補足と行きますか。

「しりとりっていうのは、誰かが言った言葉――例えば、タクロウと言ったとして、その言葉の尻……つまり、『う』だね。その『う』から始まる言葉を次の人が言う。そして、また次の人がその『う』から始まる言葉の尻を取る……と言った感じで、順番に言っていく、という遊びだよ」

 ……うまく言えたかな?


「なるほど!」

「素敵です!」

「いいんじゃね」


 おお、三人とも理解。僕、ぐっじょぶ。

「いい遊びだね! 言葉の練習にもなるし。僕も参加していいかな?」

 お兄さんも、ノリノリで言ってきた。これは、楽しい授業になりそうだ。

(久子、ナイス)

 僕は久子に声をかける。しりとりの説明はともかく、案を出したのは久子だ。場違いな賢者タイムだった僕に比べれば、かなりの大仕事。芸人のネタの範疇を越えただけでも、かなりの機転の利かせようだった。

(ま、まあ、これぐらい楽勝よ)

 楽勝は嘘だと思うけど。

 ……まあ、とにかく、始めますか。

「じゃあ、みんな円になって」

 僕が声をかけると、ローラン、お兄さんを含めたみんなが輪になった。その際、机はポールによって端に寄せられた。本当に優男だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

☆第一ラウンド

〈ム…卓郎 久…久子 ロ…ローラン ポ…ポール サ…サイノ オ…オック 兄…お兄さん〉


 ム「じゃあ、右回りで行くよ。最初はしりとりの『り』!」

 久「リンゴ」

 ロ「……りんごって、なに?」

 ポ「……ニープル」

 サ「ルーカスさん!」

 オ「ん?」

 兄「ん?」

 

 ム「ストォォォォォォォォォォォォップ!!!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 カオス! 実にカオス!

 しりとり一回戦目にしていきなりピンチ!

「ふふ……ふふふふふ」

 久子爆笑寸前。……確かに、いろいろとおかしすぎた。僕の説明不足でもあったし。


「あの……みんなごめん。いろいろと確認したいんだけど」

「「「「「「?」」」」」

 僕と久子を除く全員が、一斉に首をかしげる。そりゃあ、そうだわな。

「まず、しりとりで、最後に『ん』のつく言葉を言ったら負けなんだ」

「えっ! うそ!」

 サイノが悲鳴じみた声を上げた。

「あ、でも、今のは無しだよ。大丈夫」

 問題は、ローランの回答にある。あと一応ポールにもある。

 僕がそういうと、サイノは胸をなでおろした。

「で、ローラン」

「なに?」

「ローランはリンゴを知らないんだよね?」

「うん。しらない」

 あちゃちゃ。これは致命的だ。

 思えば、この世界の食べ物や動物――つまり名詞となりうるものに至ってはみんな日本語と違うということを忘れていた。

 ポールの言ったニープルというものも、何かしらの名詞だろう。

「どうする? 久子」

「もう、どうしようもないわよ。とにかくやるしかないわ。いっそ、何を言ったとしても気にせずやってみましょうよ」

「……わかったよ。みんな、じゃあ、最後に『ん』が付かないことだけ意識して、もう一度ね」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ☆第二ラウンド


 ム「じゃあ、今度は左回りで行こう。しりとりの『り』!」

 兄「リトラ」

 オ「ラーグ」

 サ「グレーウス」

 ポ「スンガル」

 ロ「る……るーる」

 久「ルンバ」

 ム「バラ」


 久「ぶほっ(鼻血)」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 なぜ鼻血ィィィ!?

「だ、大丈夫か!」

 血を出す久子に、お兄さんが話しかける。ポールら三人も驚きの表情を浮かべた。

「さ、最近、BLに飢えていて……」

「び、びーえる?」

 ああ。バラか。

「あ、大丈夫です〜。これは大丈夫な血なんで」

 慌てて僕がお兄さんに説明する。BLのことなんて教えたら、とんでもないことになる。国を壊すことだけはしたくない。

 ……というか、ルークは本当に大丈夫かな?


「そ、そうか……ならいいんだけど」

 僕の言葉を聞いたお兄さんは、何とか納得してくれた。

「ご、ごめんムッツリ。もう一回しよ」

「わかった」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ☆第三ラウンド


 ム「じゃあ、今度は右回りで。今度は長く続けようね」

 全「はい。(うん)」

 ム「じゃあ、しりとりの『り』!」

 久「リンパ節」

 ロ「つんでれ」


 ム「ストォォォォォォォォォォォォップ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ローラン! どこでそれを!」

 思わず叫んじゃったよ!

「むっつりが、ねごとでいった」

「なっ――」

「ブフッ」

 ローランの言葉に、久子が噴き出した。


「あの。なんで止められたかわかんねえんだけど」


「……あ、ごめんね」

 僕たちが盛り上がっていると、オックがめんどくさそうに言ってきた。

「もう。オック。せっかく楽しいんだから、そんなに怒らなくてもいいじゃない」

「お、おう。ごめんな、サイノ」

 そんなオックをサイノがたしなめた。

 ……あれ?なんかオック、いま照れてなかった?

(甘いニオイがするわね)

 うるせえ。久子は腐ったにおいがするよ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ☆第四ラウンド


 ム「じゃあ、気を取り直して。そろそろ最後かな? じゃあ、左回りで行くよ。しりとりの『り』!」

 兄「リ……リオープ」

 オ「プ? プとかねえし……ぷ……ぷらぷらと立ち寄ったルーカス王国」

 サ「え? それいいの? ……じゃあ、首の長い人が野菜を収穫した」

 ポ「た……タクロウが先生でしりとりをした」

 ロ「たくろうはむっつりだった」

 久「卓郎は最初はタクだったけど、結局ムッツリだった」






 ム「……僕はムッツリです」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ってあほかぁぁぁぁぁぁぁ!」



 それからというもの。僕は生徒の皆からムッツリと言われるようになりました。めでたしめでたし。




 いやめでたくねえよ!?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ