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12 あれ? そんなに匂う?

いろいろありすぎて、タイトル迷いました。


笑っていただければ、うれしいです。

「きゃぁぁぁぁぁ!」


 僕が幸せに包まれていると、突然悲鳴が聞こえた。

「血……血がぁぁぁ!」

 ……ん? 血?


 あ。そうだ。

 今、ドアの所にいるであろう女性は、僕がローランを抱きながら血まみれになっているように見えるのか。


(……びっくりした〜)

 ん? ああ、ルークか。ベットから落ちたのが入口の反対側でよかったな。おかげで見えないじゃないか。……いや、僕としては、見つかってほしかったかな。

「あ、あの、これは大丈夫なんで」

 久子が慌てて声をかける。

「大丈夫!? この光景を見て、大丈夫というんですか!?」

 かなり取り乱している。もう、よくあるサスペンスドラマ並の叫び声だったからな。もうそろそろ名探偵さんが来そうな勢いだ。

「あ、えと……その、大丈夫な方の血なんで」

 大丈夫な方ってどんな方だ。こっちとしては、意識が薄れかけて、ローランの感触を確かめるだけでもしんどいというのに。


「本当、ですか?」

「ええ。本当です。洗えばオッケーです」

 何その広告感。

「……わかりました。ならば結構です。洗うのでしたら川を利用してください。それと……これ、ローランちゃんの服です。ここに来たのも、これを渡すのが目的でして」


「あ、ありがとうございます!」

 ということは、ルーカスさんと一緒にいた人ということかな。名前は忘れちゃったけど。

「……じゃあ、洗いに行きましょうか。ローラン、行くわよ」

「うん」

 そう言って、ローランは僕の腕から離れていった――


 ――ん?


 ローランが、川で水浴び?

 と、いうことは?


「うおおおおおおおおおおおおお! 我は、負けぬ! たとえ、どんなに血を流そうと、我は負けぬわぁぁぁ!」


「うひゃっ、ムッツリ!」

 フッフッフ……ルークも我の復活に驚いているようだな。


「その、洗いとやらに、我もついて行こうじゃないかぁぁ!」



             *



 とほほ……

 もう、ほんとにとほほですよ。

 ええ、確かに僕は、ローランの洗っているところを三角座りで礼儀正しく、紳士的な態度で見ているわけですけどね? 見ているんですけどね?

 でも、よく見たら、ローランが汚れているの、顔と髪だけですもん。

 だから、今は現在進行形で髪だけ洗ってるわけ。服着用ですわ。


 ……というか、日本語しゃべれん。


 悲しい! 悲しいよお!

 この悲しみをどうやって表現したらいいんだよぉぉぉ!

「マジカ?」

 同じく隣に座っていたルークが声をかける。この時だけいっちょ前にカズトヨ語話しやがって! なんかむかつくわ!


 ……ん? むかつく? そうだ!

「プンプン! プンプーン!」

 あ、意外とストレス発散になるかも。


「リョーカ、リョーカ」

 僕が叫んでいると、ルークが頭をなでてくれた。

 ん? リョーカってどういうことだ?えっと、確か、了解、みたいな感じだったような。了解……わかる……ああそうか。「キミの気持ちはわかるよ」ということか!


「シクシク……シクシクゥゥゥ〜」

 プンプンと聞いただけで、僕のことを分かってくれるなんて、ルークはなんていい人なんだ! ほんと、涙が出てくるよ。うぇぇぇぇん!

 僕がルークに抱き着くと、彼の方も強く抱き着いてきた。

 ファースト抱き着きはルークか。まあそれもいいだろう。この、分かり合えた感は久子とは感じあえないからね!


「ぶふっ……」


 なんだ今の音。

 ローランの方から聞こえたような気がするけど。

 ……ああ。久子か。なんか鼻を一生懸命洗ってるけど、大丈夫かな。


 それよりも、この感動に今は浸っていよう。


                *


 その後、外に出たついでに、昼食を買った。

 ちなみに、ローランは新しい服を着用している。かわいくなったね。というか、あなたはもともとかわいかったですよ。

 買ったのは、植物で出来た器に、スープと若干の肉、野菜が入っているものだ。んん〜。デリシャス。

 もう、草の味を知っている僕に言わせれば、なんでもデリシャス。やっぱり、おいしさっていうのは、日ごろどんなものを食べているかによって決まるものなんだと改めて思った。


 食べ終わると、ルークがある場所に案内してくれた。

 僕達が店を開いていた方とは反対側。メインストリートの端にあるゲート(ゲートあったのか!)から、道なりに(道があったのか!)進んで、少し道の外の森に入ったそこは、似たような植物の器や、器代わりの大きな葉っぱがたくさん入った穴があった。ここに捨てるのか。

「――!」

 見ていると、久子がクロニクルを僕の腕から奪い取った。そのまま、挟んでいたペンを取り、何かを書き始める。

(ええと……『この世界でも、微生物に処理させているのね。燃やすのも、ありだと思うけど』……)

 どうでもいいわ!

 自分の思ったことを言わずにはいられないのか!

 そう思ったので、『どうでもいいわ!』と、大きな字で書いた――

「あべば!?」


 はいドッボーン。


 田中卓郎、今日、晴れてゴミになりました。


              *


 くさい。

 服がくさい。


 今、僕たちは、城に向かって歩を進めている。

 というか、僕も川に行きたい。

 ……と思ったが、下着のみになるのはいやなのでやめる。


「ヤー!」

 ルークが、農業をしている人々に、意気揚々に手を上げそう言った。

 人々も、それにこたえるように、ヤーと返す。

「ヤー!」「やー」

 久子とローランも、それに続く。


 言い忘れたが、城の敷地の前には、農園が広がっているのだ。下から、住宅街、商業地域、農園、城って感じ。よくできてるよ。

 ちなみに、ヤーっていうのは、あいさつ的なものらしい。出る前にルークが教えてくれたんだ。

 カズトヨ語の全般も、きっちりクロニクルに書き写した。まあまあ種類があったよ。


 ……え? どうして、僕はあいさつしないのかって?

 なんだよ。そんなの簡単さ。

 

 くさいから、離れて歩いてんだよ。


 だから、タイムラグが起きるのは仕方ないことってわけ。

 おっ。そうこうしているうちに、あいさつポイントに到着! ヤーっていうのも、日本に近いところあるけど、言ったらやっぱり気持ちいいよね。あいさつって大事。

「ヤー!」

「「「「「「…………」」」」」」


 あれ、そんなに匂う?


           *


「あ〜。臭かったわね〜」

 部屋に戻るなり、久子が言った。ルークはといえば、僕たちが帰り次第話をする予定だということを知り、評価を上げるチャンスだ! とか言ってルータスさんを呼びに行ってくれた。子供だ。


 ……え? どうして、久子の言葉が過去形なのかって?

 そんなの簡単さ。


 僕が、ローランのボロいローブを着ているんだよ。


 あはは。ローランのローブ着れてうれしい。

 だって、シャツとパンツにぼろローブ一枚だから、ローランエキスを肌で感じることができるんだ! しかも、ローブ短いから、長さが太ももくらいまでしかないんだよ!

 ……どこの変質者だ。


「むっつり、にあってる」

 似合ってなぁぁぁぁぁい! いくらローランでもやっぱりそれは肯定できなぁぁぁぁい!

「……ありがとう。ローラン」

 ――なんて言えるわけもなく、僕はその言葉を受け入れて、ローランの頭をなでる。

「見苦しいけど、それしかないからしょうがないわよ。私も、さすがに少しは反省しているわ(両手を合わせて首をちょっと曲げる)」

 まあそうだろうな。でも、臭かったわね〜とか言ってる時点で僕はプンプンでしたよ。ええ。そのしぐさも少しプンプンですよ。


「ところで、もうすぐよね(腕時計見るフリ)……」

 そう。もうすぐ呼び出しの時間。ルークがお父さんを見つけるのも時間の問題だ。

 さすがに、おしりペンペンはないと思うが、どんな話かは全く分からない。今の心境をカズトヨ語で言うなら「ドキドキ」だろうか。


 ノックされるまでに時間はかからなかった。


「入るぞ」

「はい。どうぞ」

「昼食を食べ――! ……たと……き、いたぞ……では、案内、す、る」

 あれ? なんだかルータスさんの様子がおかしい。

 何かあったのかな。

「こっち、だ」

 そう言って、ルータスさんはぎこちない動作で歩き始めた。いつもの威厳はどうしたんだろう。

「あの、一つ、聞きたい……んだが――」

 


「――やっぱり……タクロウは、変態なのか?」



 ……あ。服のことね。






カズトヨ語については、まとめるためにも、次に説明回を設けようと思います。

簡易ですが、どうして簡易なのか。そこも、考えていただければ、楽しめるのではないかと思います。


絵に描いていたぼろぼろローブの破れ具合からして、端の部分が卓郎の太ももにあるとすると、いろいろと――いや、なんでもありません。

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