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3 旅路の会話~リズムネタ編~

「むっつり」

 

  寝床を見つけ、寝ようとしていたところで、ローランが僕を呼んだ。寝床と言ってもそこは草原。寝心地もあったもんじゃない。わらの方がまだ良かったような気さえする。

 もちろん、いまは真っ暗なので、ローランだと判断できるのは声だけだ。


「きょうのすてーじ、なにいってるのかわからなかった」

「……そりゃあそうだよ。でも、リズムはよかっただろ? 地球でも、内容よりはリズムを大事にしている感じだからね」

「ふーん」


  いや、ふーんて。まあ、確かに、あのネタはローランには理解しにくいだろうけど。

  でも、暗い中、声だけでコミュニケーションとっていること考えてくれないかな。正直、ふーんはキツイ。

  沈黙を破ったのは久子だった。


「さっきも言ったけど、わたしは面白かったわ。見るのもいいけど、やっぱりやるのも楽しいわよね。特に、今日みたいなリズムネタとか」

「確かに、見るのとはまた違った楽しみってやつだよね」


  久子の言う通り。言ってしまえば、たとえ、客のリアクションがなくても、やっていて自分達が面白いから続けている芸人もいそうっちゃいそうだ。


「わたしもおもしろくなりたい。そんなりずむねた、やってほしい」


  じゃあ、かわいいからやる! ……とはならなかった。なぜなら、そのかわいい顔が見えないからサ――思っている自分が気持ち悪くなってしまったので、さっさと返事をしよう。


「いいよ。じゃあ、明日ね……というか、明日もやると思うよ? あのステージで」


 観客さん 拍手してたし。お金みたいなやつもちょっとは手に入ったし。このままコツコツと――


「いやだ。いまがいい」

「そう?」


  なんかローランさん、だんだんわがままになっている気がするのですが……気のせいかな。

  じゃあ、かわいいからやる!


「なにがいいかな~。リズムネタでしょ? 思い当たるやつをやってみるね。……あと、ローラン」

「なに?」

「リズムネタはその名の通り、リズムが命だ。リズムを……自分の心の中のリズムを感じるんだ!」

「ムッツリが言ったら変に聞こえるからやめて」


  正直、あなたのあだ名のせいだと思います。

  まあ、何はともあれ。


「じゃあ、いくよ――」


  右ひざ左ひざ交互に見て♪×3

  トゥントゥタトゥンタントゥタントゥン♪


「「「………………」」」


  静かだ。

  やっぱり少し――


「……ブフッ……アハハハハハ! アーッハハハハハ! 右ひざ……ひひっ、見て……見てって……へ、へへへへへ……あ~、ヤバいつぼる……ひひっ……」

 

  なんと。突然久子大爆笑。どうした?

  いや、確かに、ノーリアクションはいやだと思ってたけど、ここまでは望めないと思ってた。ほんと、想定外。


「そんなに面白かった?」


「いや……暗闇で見え……ひひっ、見えないのに……右ひざ見て♪ って言われても……ふっ、フフハハハ………」


  ……あ、なんかジワジワきた。

  暗闇で、右ひざ左ひざ交互に見て♪


「ブフッ……」


  あーあ。笑っちゃったよ。確かに面白いな。この、後から気づいた感じ。ヤバい。僕もツボりそうだ。


「おもしろくない」


  ローランの平然とした声。しかし、そこからは確かな不満が感じ取れる。僕たちを黙らせるには十分だった。


「ほかのをやって」


  えぇ~。もう、いろいろとしんどいよ~。なんて言えない。

 それに、かわいいからやろうかな。

 

「ヒェ! ヒェ! 集中集中!」

「それ、リズムネタじゃないわよ」


 久子の鋭い指摘。


「え? そうかな?」


  特に、ヒェ! ヒェ! の間のリズムが重要だと思うのだが。違うのか?


「ひえ。ひえ。しゅうちゅうしゅうちゅう」


「「文体がかわいい!」」


  平仮名で書いたら、何でもかわいくなるからあら不思議! もちろん、ローランもかわいいよ!


「……ふふ。おもしろい」


 今のは面白かったの? もう、ローランの面白さの基準がわからないよ!


「あ! いいこと考えたわ!」


  久子が叫ぶ。今度はなんだよ? ケントデリカットでもしてくれるのか?


「あしたは、ローランのマジックも混ぜましょう!」


  またまた突飛なことを。種も仕掛けもないのに。久子のメガネじゃケントデリカットくらいしかできないのに。


「できるの? そんなこと」

「ええ。なにか、布みたいなものがあれば、できると思うわ」

「布? 布といえば……鳩に変わったり、花に変わったり、2人が端をもって早着替えとかか?」

「いや。違うわ。ただし、二人で布を持つところは同じ。……もう言っちゃうわね。私が考えているのは、ローランの空中浮遊よ」


 空中浮遊……ああそうか!


「冴えていらっしゃいますね。久子さん。やはり、お金のこととなれば、お任せあれですね~」

「ふん!」

「あべば!?」


 今起こったことを、簡単に説明しよう。久子の裏拳が僕の顔面を直撃。……どうだ? 簡単だろ?

 距離感つかんでやがる。


「とにかく。明日は、草食ってからまず布屋よ。実が足りない場合は、外国人に対してもいけるネタで何とか稼ぐ。もちろん聞き込みも行うわ……そして、布が買えたあかつきには――」

「ガッポガッポですね。さすがはマネー久――あべばっ!?」


 今起こったことを、簡単に説明しよう。久子の裏拳が僕の顔面を直撃。

 おんなじことを~しました~!(わかったらすごい)


「あがががが、鼻が、はながぁ!」

「むっつり、いたそう」


 ローランの、心配そうな声。


「ああローラン! やっと僕のことも心配して――」

「でも、おもしろい」


 え? え? なんて?


「じゃあ、明日の幸せを願って、今日はお休み!」

「おやすみ」

「ちょっと待って! ローラン今のは――あべば!?」


 そのまま僕は、朝まで眠り続けた。


 





どちらも、大好きです。


次回、急展開。

王子様登場です。

お楽しみに。


ではまた。

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