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小悪魔彼女に惚れられました。 作者:南条仁

悪魔な彼女

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第2章:美しき月夜

【SIDE:大河内蔵之介】

 その人はとても綺麗な人だった。
 大勢の人々で雑踏する駅前の通り。
 僕は友人達を待っていると、一人の女性が目に入る。
 人の気を惹きそうな美しい女性。
 彼女は男性に絡まれているようだ。
 困った顔をしていたので僕は彼女を助ける事にした。
 普段は誰かを助けることなどしない。
 多くの人が気になりながらも、見て見ぬふりをするように。
 僕も面倒事に関わるのは避けたいと思う側の人間だ。
 だけど、彼女は「助けて」と瞳で誰かに告げているような気がして。
 放っておくことなどできなかったのだ。
 幸いにも相手もただのナンパが目的で、暴力沙汰にはならなかった。
 なったらそれは面倒だが、武術をしており自信はある。
 もちろん、無意味な暴力は好まないが。
 彼女を無事に男から引き離す事ができ、彼女は僕に礼を言う。
 僕は気恥ずかしくなり、その場を立ち去る。
 待ち合わせ相手との待ち合わせ場所に戻ると、そこには既に何人かが来ていた。

「よぅ、蔵之介。やっときたのか」

 久瀬とは高校時代からの知り合いで、同じ大学でも一緒だった。
 彼に誘われて、あるサークルに入り、今日はその歓迎だと言う。

「……僕は久瀬が来る前から来てましたけどね」

「ははっ、冗談だよ。悪いな、彼女が俺を離してくれなくてさ」

「どうせ、また貴方が何か言って口喧嘩になっただけでしょう」

「うぐっ!?なぜ、それを……飲み会相手が年上のお姉さんばっかりだぜ、的な発言をしたらものすごく怒られました」

 彼には交際相手がおり、その相手とよく揉めている。
 いつも軽い喧嘩してるようだが、本格的な喧嘩になる事はないようだ。

「それよりも、だ。俺達には大ピンチなのだ」

 どうやら、歓迎会の行われる場所が分からないというらしい。
 何でも、場所を聞いてたはずの久瀬が思い違いをしていたらしい。

「いや~っ、すまん。言われた場所が隣街の飲み屋だと思ってたんだが、どうやら違うようだ。何であの店に行くのにこの駅で待ち合わせるのか疑問だったんだよな。俺もまだこの街をよく知らないからさぁ」

「……久瀬に任せたのが間違いでした」

「それ、正解。次からは調子に乗って引き受けないようにする。今、さっき、先輩に頼んで迎えに来てもらう事にしたから安心してくれ……ものすごくバカにされたけどな。篠宮先輩、性格キツイっす」

 久瀬の言うとおり、すぐに迎えの先輩が来てくれて場所まで案内してくれた。
 そして、僕はそこで思わぬ再会をする事になる。
 先ほど、駅前で助けた女性がいたのだ。
 彼女が同じ大学の先輩だと知った時は素直に驚いた。
 名前は日野美鶴、と言うらしい。
 日野先輩は先ほどの面識もあって、賑わう歓迎会で話をすることになる。

「日野先輩はお酒は飲まれるのですか?」

「うん。それなりに、ね」

 そうは言うが、コップに入るお酒を飲み干すたびに顔色がまずくなってるのは気のせいだろうか.
 ……気のせいであって欲しい。

「大河内クンはまだ未成年だからお酒は早いわよね。こういう大学の飲み会じゃお酒を飲ませたりする悪い人がいるけど、真似しちゃダメよ?下手に飲んで倒れたら大変なことになるんだから」

「……あそこで久瀬たちが騒いでいるのは見て見ぬふりをした方がいいと?」

「そうねぇ。見てない、知らない。だから問題が起きても関係ないってね」

 何か問題が起きても我関せず。
 彼女はそう言ってほほ笑むと僕の顔をジッと見つめてくる。

「……何か?」

「大河内クンってカッコいいなって思って。性格もすごく落ち着いているし、地元ではよくモテたでしょ?人気者だった?」

 社交辞令として受け取っておこう。
 日野先輩に褒められるのは心地よいものだ。

「いえ、全然……。自分でも性格が問題と思いますよ」

「そう?和風と言うか、古風でいいと思うけど?」

「どうでしょうね。古風と言うか、堅苦しいとよく言われます」

 そして、それは僕の事を表現するには正しい言葉だ。
 僕は厳しい家に育てられたために、他者とは少し違う。
 もっと自由に生きて見たいと思っていた。
 今回の大学進学に伴う独り暮らしはそのいいチャンスとさえ感じている。
 あの家から離れる事で束縛されたものから解放されたような気がしたからだ。

「大河内クンは自由に生きたいの?」

「それなりには……。家柄に束縛され続けていたので多少は自由になりたいです」

 実家では礼儀作法にうるさく、しきたりやこだわりが多かった。
 嫌になる事もあったが、今は多少は理解はできているつもりだ。
 それが大河内家と言う旧家の古い家に生まれたものの宿命だと。

「まぁ、いい機会だから楽しめばいいと思う。家を出てみてから気づく事ってたくさんあるはずよ。私もそうだったもの」

「そうなんですか?」

「うん。私には弟と妹がいるんだけど、実家にいた頃は生意気だっり、素直じゃなかったりと文句ばっかり言ったりしてけど、離れてからその大切さに気付いたというか。あの子達がいないとこんなにも寂しいんだなって思わせられたりしたもの」

 僕もあの家が懐かしいと思う日がきたりするのだろうか。

「大河内クンも半年くらいすれば分かるわよ」

 彼女はそう笑って告げると新しいお酒、今度は日本酒を頼みだす。

「……あまり無理はしない方がいいのでは?」

「いいのよ。何だか、お酒を飲んでいると楽しくなってきたから」

 それは既に酔っている人間のセリフだ。
 顔が赤いのでこれ以上は、やめた方がいいと忠告するべきだろう。
 だが、お酒を飲む席でそれを先輩相手に告げるのはいいのか?
 その判断の迷いが、あとで自分にも影響を与える事になる。

 

 
 歓迎会も無事に終わり、解散となった。

「うぉー、俺はやるぜ、やっちゃるぜー。俺様、最強!やる時はやる男なんでよろしくー」

 と、先輩に勧められるままに飲酒したらしい久瀬は意味不明な言葉をつぶやく。

「ああはなりたくありませんね。お酒は20歳になってからにしましょう」

 酔っ払いながら二次会へと先輩達と一緒に行ってしまう久瀬を僕は見送る。

「大河内、悪いんだけどそのお姉さんを家まで送ってあげて?」

「……仕方ないです。これも後輩の仕事ですか」

 篠宮先輩に僕は日野先輩を押し付けられてしまった。
 問題の日野先輩は思った通り、酔ってぐっすりと寝てしまっている。
 僕が背負って連れて帰るしかなさそうだ。

「美鶴のマンションは分かるわよね?そのマンションの521号室よ」

「分かりました」

「家には同居相手がいるはずだから。後は任せるわ。何かあったら連絡して」

 僕は頷くと、篠宮先輩はにやっと嫌な笑いを浮かべる。

「自分の家にお持ち帰りしちゃダメよ?そうしたい気持ちは分かるけどねぇ」

「しませんよ。その辺の飢えた狼さんとは違うので」

「おっ、言い切ったわね。ふふっ、それなら安心かな」

 それに恋人がいる相手をどうこうするつもりは僕にはない。
 日野先輩にそのような相手がいるなら、彼に迎えに来てもらえばいいのに。
 そう思ってしまうが、これも一度引き受けた責任だ。
 幸いなのは僕も彼女も電車に乗らず、家に帰れると言う事だろう。
 さすがに人目が付く場所にはいたくない。
 僕は彼女を背負いながら道を歩いていると、寝言なのか、彼女は何かを呟く。

「……ん、んぅ……たいがのヘタレ……」

「タイガー?虎の事でしょうか。何の夢を見ているんでしょうね」

 背中越しとはいえ、女性を背負うのは色々と気を使う。
 触れてしまっている部分については追求しない方がよさそうだ。
 香水の匂いにも僕は彼女に女性らしさを感じる。
 僕も全くと言っていい程、女性に縁がなかったわけではない。
 交際相手はいないが、地元には同世代の女性の知り合いくらいはいた。
 しかし、彼女達と先輩は全然違う。

「美人すぎると言うのも、問題です」

 魅力的な彼女だけに今の状況は無防備すぎる。
 どうこうするつもりは毛頭ないが、これでもひとりの男だ。
 嫌でも相手に意識せざるをえない。

「……美しい月夜ですね」

 僕は気をそらすために夜空を見上げた。
 今日は満月、蒼白い月が僕らを照らしていた。
 都会では星は見えないが月明かりくらいは感じる事ができる。

「うん……んぅっ」

「……どうしました?」

 背中の日野先輩が反応をするので目を覚ましたかと思った。
 だが、どうやら眠ったままのようで僕は一息つく。

「眠り姫を起こさないようにするのも気を使いますよ」

 だけど、それは苦痛ではない。
 日野先輩は魅力的な女性だ、少なからず男性なら惹かれるだろう。
 僕もそうだ。
 あまり恋愛事には関心はなくとも、この女性には興味を抱く。

「ここですか、彼女のマンションは……」

 僕は問題の彼女の部屋までやってくる。
 相手の彼氏に変な誤解を与えないようにしなくちゃいけない。
 呼び鈴を鳴らすとすぐに中から男の人が出てくる。
 彼が日野先輩の恋人だろうか?

「はいはい、こんな時間に何か用……って、あれ?」

 扉を開けてこちらを見た彼はびっくりしたような顔をする。
 さて、どう言えば現状で誤解を与えないように出来るのだろう。
 これはこれで、言い訳が難しいシチュエーションだと今さらながらに気づいたのだった――。
 
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