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小悪魔彼女に惚れられました。 作者:南条仁

小悪魔彼女

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最終章:恋の始まり?

【SIDE:桐原梨紅】

 大河先生に本気の告白。
 先生に相手にされるか、心配ながらもちゃんとした告白は初めてだった。

「うぅ、昨日は眠れなかったし」

 だって、緊張するんだもの。
 告白したからには私も本気で先生を好きだって伝えたつもり。
 私は桜並木の立ち並ぶ公園で彼を待っていた。
 桜はちょうど見ごろで花見客も多い。
 ひらひらと舞うピンクの桜の花びらを私は見つめていた。

「素直にお花見気分にひたれないよ」

 それよりも、胸の奥からじわじわと締め付けてくる緊張感が強い。

「こんな風に緊張した事ないのに~っ」

 私はベンチに一人座っていた。
 先生が来る約束の時間はあと5分程。
 それまでの時間が長くて怖い。

「先生と出会ってから3ヶ月。ものすごく長く感じる3ヶ月だった気がする」

 私は彼との出会いを思い出していた。
 初めての家庭教師。
 最初はただのカッコいい人だと思っていただけ。
 私にとってはすごくお兄ちゃんのようで親しくなるたびに好きになった。
 先生は本当に優しくて、私はその優しさにずっと惹かれていたの。

「初めは私の方が主導権を握っているつもりだったのに」

 そうだよ、最初は私の魅力に翻弄させるつもりだった。
 でも、全然なびいてくれなくて……。
 同世代にはモテるし、自信もあったのに相手にもされなくて悲しかった。

「これで答えを出してもらった方がすっきりするよね」

 私はふぅ、とため息をつきながら心の準備をしていく。
 もしも、ダメだったとしても諦めたりしない。
 時間をかけて成長してまた告白すればいい。

『兄さんもきっと梨紅の想いに応えてくれますよ』

 昨日、希美お姉ちゃんにメールをして返って来た返事。
 和解して仲良くなってからはよく相談にも乗ってもらっている。
 不安はぬぐい去れないけれど、ここまできたら逃げられないし、逃げるつもりもない。

「……お待たせ、梨紅ちゃん」

 やがて、待ち合わせ場所に先生がやってくる。
 私を探していたので、手を振ってここにいると私は示した。

「あっ、大河先生っ!」

「待たせたかな?」

「ううん。時間はまだだから大丈夫。ちょっと早めに来ただけだから」

 そう、ほんの1時間前にね。
 だって、ドキドキしすぎて早く来すぎたの。

「あの、先生……ここは人が多いから移動しない?」

「この賑わいだとどこも人でいっぱいじゃないか?」

「ううん。私、この公園の穴場スポットを知っているの」

 少し高台になっている公園で上の方には記念碑みたいなものが建っている場所がある。
 そこまで上ると下とは違い、花見をするスペースが少なくなるので人も少ない。
 記念碑の前には誰もいない、桜の大木の前に私は座る。
 誰もいないその場所ならば、私達もゆっくりと話ができる。

「綺麗な桜だよね」

「今週末でもうお終いだって聞いたな。もう新学期だし、そういう時期だよ」

 あと数日で見ごろを終えてしまう桜。
 散ってしまう桜は少しさびしそうに見える。

「先生、この前の告白の答えを聞かせて欲しいの」

「……」

「私のことが好きか、嫌いか。どちらか決めて」

 私にとっては大事な選択。
 好きな人に好きと言って欲しい。
 先生はジッと私を見つめて考える。

「梨紅ちゃんは、可愛いと思うよ。女の子としてはすごく可愛い」

「……」

「でも、俺の好みもあるけど、それ以上に梨紅ちゃんはまず家庭教師の生徒なわけだ」

「……」

 何か言い訳を始めた彼に私は黙り込んでしまう。
 もしかして、これって、ごめんなさいフラグ?
 やばい、その流れは非常に私にとっては困る。

「さすがに家庭教師の子と付き合うってのはダメな気がするし、年齢的にも歳の差があるじゃないか。梨紅ちゃんは後1年で高校生になるって言ったけど、その1年って大事だと思うんだよね」

 やっぱり、ヘタレの大河先生だ。
 こういう言い訳をしてくる彼に私はムッとする。
 うだうだとした長ったらしい言い訳を並べてくる。

「もうっ、好きか嫌いかどちらか決めてって言ってるの。はっきり言ってよ」

「……いや、話は最後まで聞いて欲しかったんだが」

「最後まで聞いたら私に得な事はあるわけ?」

 辛い事実しかないなら、私は言い訳なんて聞きたくない。
 だけど、先生は私の態度に笑みを見せた。

「最後まで聞いてくれ。俺はそう言う意味で、今まではずっと梨紅ちゃんの事を対象外として、恋愛対象として全く見ていなかった。俺の好みでいえば年上趣味だし、年下なんて正直、苦手なんだよね」

 ガーンっ、予想していてもフラれるのはキツイ。
 何よ、期待させておいてやっぱりそうなんじゃない!

「うぅ……ぅっ……」

 私は涙ぐみそうになる心を必死に抑える。
 けれど、ある言葉にひっかかりを感じる。

「……今までは?」

「そう。多分、告白された一昨日くらいまでは。俺の気持ちとして梨紅ちゃんは恋愛対象じゃなかった。けれど、昨日から違うように感じてきたんだ。歳なんて関係ない、大事なのは何なのか」

 先生は私の頬に手で触れてくる。
 顔を近くで見つめようとする素振りに私はドキッとする。

「梨紅ちゃんって真っすぐな子なんだよなぁ。そういう真っすぐさが希美を変えたんだと思うし、俺にも影響を与える気がする。昨日、一日かけて梨紅ちゃんの事を考えていた。俺にとっては年下の妹みたいな女の子だったはずなのに……」

「大河先生?」

「それなのに、考えれば考えるほどにたった3ヶ月の間に俺の心を支配している存在になっていた事に気づいた。梨紅ちゃんがいる日常が当たり前のようになっていて、逆にいない方が寂しいなんて思い始めていた」

 彼は頬に触れていた手で、私の瞳の端をぬぐう。
 指先が私の溢れかけた涙をぬぐったんだ。

「梨紅ちゃんを離したくない、そんな風に感じる気持ちって何だろうって考えて見たら、出た答えは単純で分かりやすいものだった。本当に簡単な事だったんだ」

 先生が私に優しい声でその言葉を告げる。

「……俺、梨紅ちゃんの事が好きだ」

「大河先生……だって、私のこと」

「うん。一昨日までは気づいていなかった。けれど、昨日気づいた。それじゃダメかな?」

「ダメじゃないっ。全然、ダメじゃないよ」

 私は嬉しくて思わず両手で顔を覆ってしまう。
 恥ずかしさと嬉しさが入り混じった感じ。
 幸せな気持ちが心の底から溢れ出てくる。

「……今、梨紅ちゃん、すごく顔が赤いよ」

「そ、そう言う事は言わないのっ」

「この桜に負けていないくらい可愛い。そう言う顔をするんだ、初めて見たかもしれない」

 私だって、照れて赤くなることもあるっての。
 いつもはヘタレな先生に私が翻弄されている。

「うぅ、先生……何か意地悪だ」

「それが年上の余裕って奴かな?」

「絶対違うしっ。先生の場合は余裕って言うより……?」

 私が文句を言おうとするのを彼は行動で押さえ込む。
 そっと彼の腕の中に抱きしめられて私は驚いた。

「梨紅ちゃんが好きだよ、その答え……聞かせてくれ」

「私も……好き、大河先生のこと、大好き」

 人を好きになる、その意味を私は身にしみて感じさせられていた。
 彼の腕の中は温かくて、心地よくて。

「んぅ……」

 私はそのまま唇を突き上げると彼はそっと唇を重ねてくる。
 桜が舞い散る中でのキス。
 私と先生のファーストキス。

「梨紅ちゃんって大人しくなると案外可愛いな」

「案外って何よ、むぅっ」

「ははっ。そういうふくれっ面も、馴染みだけど、俺は笑顔の梨紅ちゃんの方が好きだ」

 はっきりとした言葉に私は何も言えなくなる。

「ず、ずるいよ、先生……ぁっ……」

「大人は皆、ずるいんだよ。だから、素直な梨紅ちゃんに俺は惹かれている」

 こんな風に私を受け止めてくれる彼氏。
 私の恋人、大河先生……その実感がようやく湧いてくる。

「花見もいいけど、これから街の方にでも出ようか」

「うんっ」

 私達は桜並木の道をゆっくりと歩く。
 恋人らしく、腕を組みあいながら、同じ速度で歩んでいく。

「……ここから始まりだ。俺達の恋愛、いい関係を作って行こう」

 私は先生の言葉に頷いて微笑みながら「もちろん」と答える。
 ピンク色のカーテンのように舞い散る桜が私達を祝福してくれる。
 季節は春、新しい季節が始まり、私達の恋もここから始まったんだ――。

【 THE END 】
 
次回からは美鶴さんを主人公にした続編です。
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