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小悪魔彼女に惚れられました。 作者:南条仁

小悪魔彼女

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第37章:愛の行方

【SIDE:日野大河】

 希美の悪行(?)が明らかになってから一夜があけた。
 当初はショックで俺も希美にひどい事を言ったが、翌日になれば怒りも冷めた。
 あの子はあの子なりに俺を想ってくれていた。
 そう考えれば、一方的に望みを責めたのは間違いだ。

「謝っておくか」

 朝、目が覚めてから俺は彼女の寝室を訪れる。
 まだ寝ているのかと思ってドアを開けると既に希美は起きていた。
 ベッドで眠る梨紅ちゃんの寝顔を見つめている。
 優しい笑みを浮かべている。

「……あら、兄さん?おはようございます」

「おはよう。その、昨日は……」

「昨日はすみませんでした。兄さんに謝っても足りないでしょうけど、本当に反省してます。……もう兄さんの恋愛の邪魔はしませんから許してください」

「俺もきつく言いすぎたよ」

 希美はこれからも可愛らしい妹でいてくれ。
 姉があんな悪魔なので俺にとっては救いであり続けて欲しいのだ。

「それで、何をしているんだ?」

「“梨紅”の寝顔を見ていました」

「梨紅……?」

 希美が誰かを呼び捨てるのは珍しい。
 誰相手でも敬語口調の彼女だからな。
 年下相手でも口調を変えることはまずない。

「昨日、梨紅が言ってくれたんです。私をお姉ちゃんみたいだって。私、今まで姉扱いされたこともなかったんですけど、初めて妹のような存在を愛しく思えて……」

 そういや、姉ちゃんが言っていた。
 希美と梨紅ちゃんの仲がよくなっている、と。
 それはこういう意味だったのか。
 寝顔を見つめ続ける彼女。
 梨紅ちゃんの寝顔は確かに可愛い。

「梨紅ってばすごく可愛いんですよ。昨日も一緒に寝たんですけど、その前にずっと兄さんの話をしていたんです」

「俺の話って何の話だ?」

「兄さんのどういう所が好きなのか。惹かれたのかって事です。梨紅は昔から年上の人を好きになる傾向があったようですけど、大河兄さんは他の人達と違い、本気で好きになった相手だと言っていました」

 希美は「こちらが妬けてしまうほどに大好きなんですね」と呟く。
 それは、俺に対してか希美自身に対してか、どちらの意味だろうか。

「兄さんは梨紅の好意を受け止めてあげないのですか?」

「……歳の差もあるし、梨紅ちゃんはいい子だけど、俺にはちょっとな」

「私には大河兄さんにはよくあっていると感じます。本当に兄さんを愛していますし、性格だって背伸びしている子供っぽさが可愛いじゃないですか。自分に無理してでも相手に合わそうとするのは本気の証拠です」

 梨紅ちゃんが俺に好意を抱いてるのは知っているが、そこまで思われていたのか。
 当初は振り回されてばかりだった。
 もう少し、年上ならば魅力もきっと変わっていただろう。

「彼女なら、きっと兄さんの良きパートナーになると思いますよ。これから成長していきますから、兄さんもいつまでも子供扱いしないで、女として見てあげてください」

「希美がそう言う事を言うなんて珍しいな」

 昨日までは敵対(?)していた相手のはずだが。
 和解して、いろいろとあったんだろうか。

「……今は私にとっては大事な妹のような存在ですから。信頼しています。兄さんもこの子の本質に触れてみてください。きっとすぐに好きになりますよ」

「そうかな?」

「はい。年下だから、好みじゃないから。そんな理由抜きで本当の梨紅と向き合ってみてください。そうすれば、兄さんも梨紅が好きになります。私も昨日までは正直言って気に入らない相手でした」

 希美ははっきりと言う。
 昨日、この子の本性も初めて見たのでショックが大きかったな。

「でも、思いやりもあり、とても人を惹きつける魅力のある女の子だと知り、考えを変えました。今はとても可愛く思います」

 希美には年下の相手と付き合う機会がほとんどなかった。
 俺の従姉妹も大抵年上ばかりだったので、甘えてばかりの存在だったのだ。
 そんな彼女が目に見えて変化した。
 その事に俺は驚く。

「……そろそろ、朝ご飯の時間ですね。梨紅を起こさないと」

 彼女はそっと梨紅ちゃんの頬に触れて優しく声をかける。

「梨紅、起きて。もう朝だよ」

 梨紅ちゃんと言う存在が希美を変化させた。
 不思議な子だ、改めて俺はそれを感じさせられていた。

 

 
 朝から梨紅と希美は一緒に仲良く出かけてしまった。
 少し遅めの起床の姉ちゃんはコーヒーを飲みながらその光景を見ていた。

「あの二人、仲良くなってよかったじゃない」

「……それはいいが、これは姉ちゃんの企みか?」

「企み?なんて言い方をされると悪い考えをしていたみたいじゃない。私はずっと希美には甘えてくれる子がいればいいな、と思っていただけ。あの子は人に甘える事に慣れ過ぎていたもの。逆に甘えられる子がいれば、きっと彼女も変われると思ってた」

 あのふたりを近づけたのには姉ちゃんなりの理由があったのか。

「……でも、実際にこううまくいくとは思っていなかったのよ」

「最初はどこか仲違いしているように見えたが」

「そりゃ、お互いに敵同士。そう単純なものじゃないわ。でも、梨紅ちゃんも一人っ子で甘えられる存在が欲しいって言うのは分かっていたからね。その気持ちを希美に向かせるようにしたのは正解だったみたい」

 コーヒーを飲み終えた彼女はそう呟いて俺を見つめる。

「……大河にとっても妹離れ、寂しい?」

「どうだろう。昨日のショックのせいでよく分からないや」

「ふふっ。あの子は純粋すぎるの。だからかな、私にはなぜか懐いてくれない」

「それは姉ちゃんの性格のせいで……ぐはっ!?」

 俺の後頭部を襲うクッション。
 この人は自分を否定されるとすぐに暴力に出るから怖いのだ。

「……大河も少しはお姉ちゃんに懐いてくれないかしら」

「こう言う事をする姉にどう慕えばいいのやら。地味にクッションで痛みが来るな」

 勢いによっては衝撃も大きい。
 クッションを投げた本人はしれっとした顔でトーストを食べていた。

「だったら、俺がお姉ちゃん大好き~っとかいうシスコンだったらよかったというのか」

「くすっ……それ、悪くないわ」

「ごめん。俺の方が無理」

「そう?私としては大河がそんな風に慕ってくれたら嬉しいのに」

 うっとりとした表情を見せられて俺はゾクッとした。
 姉ちゃんの望む俺にはなれそうにもない。
 ていうか、俺に何を望んでおるのだ、姉ちゃんは。
 実は思いっきり、ブラコンだったというか衝撃の事実はないと思いたい。
 今までの悪意も殺意も、その他もろもろも全部が好意の裏返しだったとか。
 そんなのありえない、ありえないけど……いつもの冗談だよね?
 やっぱり、姉ちゃんの事だけはよく分からない。

「それで、梨紅さんの事も考えてあげなさいよ?あの子、希美を攻略して、次は本格的に大河を狙いに来るはずだから」

「その背後に誰かさんの影を感じるのは気のせいか?」

「……気のせいでしょ?誰かさんって誰なのよ」

 笑みで誤魔化す姉ちゃん。
 梨紅ちゃんとこっそり手を結んだのは今回の事で明らかだ。

「次は何を企んでいるのやら?」

「別に何も企んでいないわ。私は大事な家族が幸せならそれでいいのよ」

 姉らしい言葉を、一番似合わない人に言われる事ほど違和感というものはない。
 美鶴姉ちゃんの企みはともかく、俺も梨紅ちゃんの事を真剣に考えた方がいいのだろう。
 春の訪れが俺にも変化を与えようとしていた――。
 
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