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第25章:警告と後押し

【SIDE:桐原梨紅】


 桐原梨紅、14年間の人生で最大のピンチ到来です。

 どうしよう、大河先生の妹さんってかなりヤバい人だった。

 希美さんは最初はのんびりとしてほのぼのとしている人で可愛いと思っていた。

 けれど、大河先生に気がある女の子は敵らしい。

 本気で怖かったので私は怯えていた。

 あんな一面があるなんて思ってなかったし。

 やっぱり、美鶴さんの妹だと納得もした。

 

「……でも、放っておくわけにはいかないよ」

 

 私は勇気を出して、今、先生の家の前にいた。

 事前に連絡していないけど、どうしても会いたくて。

 何て言うか、希美さんの本性を知った今じゃ本人には会いたくない。

 だからと言って、無視できるはずもなく。

 私は複雑な心境で彼と希美さんにもう一度会おうと決めたの。

 チャイムを鳴らすと部屋から出てきたのは美鶴さんだった。

 

「……梨紅さん?大河に用事でも?」

 

「美鶴さんか。あ、あの、大河先生と希美さんは?」

 

「あぁ、あのふたりなら出かけてるわよ。今日は仲良くデートだって?」

 

「で、デート!?兄妹なのに!?」

 

 思わぬ言葉に動揺する私。

 それを面白そうに笑う美鶴さん。

 うぅ、また騙された……?


「デート。訂正、街を案内しているわ」

 

「はぅ。変な事を言わないで下さいよ」

 

「別に変なことじゃない。希美本人はデートだと思ってるだろうし。まぁ、立ち話もなんだから家に入って。お茶くらい入れてあげるわ」

 

 私はリビングのソファーに座りながら美鶴さんに尋ねる。

 

「希美さんって……その、えっと」

 

 美鶴さんは彼女の本性に気づいているの?

 私の疑問は向こうから答えてくれる。

 

「昨日、希美に散々な目にあわされたでしょ?分かってるわよ、あの子の本性っていうのかな。裏の方の顔っていうのをね」

 

「……意外すぎてびっくりしました」

 

「小さな頃から大河が大好きなのよ。それゆえに、暴走気味な所があって……。とにかく、大河に近づく女の子は排除したがるの。過激な意味で。それで泣きを見た女の子は片手で足りない数なのよ」

 

 美鶴さんは呆れた顔をしながら私に紅茶を差し出す。

 私はそれを飲みながら、いろいろと希美さんの事を教えてもらった。

 

「……大河って性格はヘタレでアレだけど、見た目は結構いい男だと思うでしょ?」

 

「そうですね。大河先生はカッコいい人ですよ」

 

 私が見た目で気に入ったのも好きになったきっかけのひとつだ。

 

「何で、あの子が高校時代に恋人の一人もいなかったのか気にならない?」

 

「それは……ずっと気になってました」

 

 先生本人は性格とか言ってたけど、基本的に優しい人だからおかしいとは思ってた。

 何かその事にも原因があったのかな?

 

「裏で希美が暗躍してたのよ。好きになりそうな相手に先制攻撃。ありもしない事を吹き込んだり、梨紅さんが味わった“牽制”を受けたりしてね。暴力じゃなくて、言葉や雰囲気、威圧感ってので相手を追い込むから怖いのよ」

 

「で、でも、普通のブラコン気味の妹さんってそこまでしますか?」

 

「マジで愛しちゃってるからじゃないの?」

 

「……それは家族愛ですか?」

 

 違うのは分かってるけど心配なので聞いてみる。

 私と同様に美鶴さんの表情も複雑だ。

 

「それだったら私も安心できるけど、残念ながら本物の“恋”の方っぽい。“血が繋がっていない”とはいえ、兄妹なのに」

 

 ちょい待って?

 今、聞き捨てならない事を言いませんでした?

 

「え?美鶴さん、今、何て言いました?」

 

「あははっ、冗談よ、冗談。実は……って言ってみただけ。ホントの血のつながった兄妹よ、残念ながら。本物の義兄妹なら私も安心できるけど、本当に血が繋がってるから余計にやっかいなの」

 

 義妹設定とかびっくりさせないで欲しい、冗談にならないから。

 よかった、これで血が繋がっていなかったら私の負けは決まっていたかも。

 でも、美鶴さんが心配する程、仲がいいんだ。

 

「とにかく、あの子は大河に関しては一途過ぎるのよ。自分が大河の一番じゃないと気に入らないし、他に近づく子がいれば牽制する。そうやって、何人も大河の恋人候補を潰してきたの。それに大河が気づいていないのがこの問題の大きい所よ」

 

「先生、気付いていないんですか?」

 

「大河にとって希美は可愛い妹、自分にとっての天使そのもの。あれだけ可愛く懐いてくれる存在がいて、その裏に気づく事なんてあるわけないじゃない。私がどれだけ苦労してるか」

 

 私にもしも、優しいお兄ちゃんがいたら……。

 考えて見ると、彼女の気持ちは何となく分かる気がする。

 ただし、あれだけキツイのはないと思うけどね。

 希美さん自身は大河先生には敵意なんてゼロで好意しかない。

 それだけに先生が希美さんを警戒する事はない。

 うーん、これは何と言うか大変なことになりそうな気がするの。

 

「希美も大河が絡まなければ悪い子じゃないのよ」

 

「大好きなお兄ちゃんのためなら容赦はしないんですね」

 

「それが問題なのよねぇ。実兄ラブ~っ。それって普通にまずいでしょ。希美だっていいつもまでもブラコンじゃ困るでしょ。姉としては何とかしたいけど、何ともできないわけで……」

 

 希美さんの裏側を大河先生が知れば、彼から直すように言ってもらえるけど、彼女はバレる真似はしないだろうし、大河先生に言っても信じてはもらえない。

 手詰まり状態でどうしようもない。

 

「問題なのは大河の自覚のなさ。もしも、大河が梨紅さんとくっつけば希美も諦めがつくだろうから、頑張って?」

 

「その代わり、私の命の危機があるのは気のせいですか?」

 

「……多分」

 

 めっちゃ不安なんですけど?

 先生が好きな気持ちは揺るがないけど、積極的に動くのも怖い。

 そりゃ、これまでの女の子も大河先生を諦めたくなるだけあって、一度希美さんと話すと本当に影響力があるの。

 

「そうねぇ。梨紅さんの協力してあげましょうか?大河と恋人になれば、希美も変わるであろうと期待して、本格的に梨紅さんの味方になってあげる」

 

「……美鶴さんって平気で裏切るから怖いんですよ」

 

「あれ、私って信頼ない?」

 

「これまで何回騙されたか。今回こそ、本当に私の味方になってくれますか?」

 

 ショックを受け続けてきただけにすぐに信頼できにくい。

 美鶴さんが私の味方になってくれれば、強い味方になるのは間違いない。

 

「私的には梨紅さんって気にいってるのよ。純粋で騙されやすくて面白いところとか」

 

「……面白いのは余計です」

 

「まぁまぁ、怒らないで。私が積極的に動いてあげれば大河なんてあっというまに梨紅さんのものになるわ」

 

 私の手を握って「頑張ろうね」と笑顔で誘う。

 うーん、ちょっと信頼できないけど、美鶴さんが私の協力をしてくれることに。

 だけど、希美さんは私の想像よりも手強くて、怖い人だったの――。

  

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