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第5話

なかなか本題に入らずにすみません。

俺は、空路福岡に入った。


慌ただしい移動の最中にとうとう娘にメールを返すのも忘れていた。


自宅に迎えに来てから、必要最低限な事しか喋らない無表情な案内人がハンドルを握る高級セダンは、とあるビルの地下スロープを下っていた。


古めかしい外見とは裏腹に、スロープから見えるビルの壁はピカピカで、所々に監視カメラらしき物が設置されていた。


てっきり、ジャパンテレコムの福岡支社に行くものだと思っていた俺は、無表情な運転手に何度目かの質問を投げかけた。

「そろそろ、どこに来たのか教えて貰えないかな?どうも我社の福岡支社ではないみたいだし…

やたら物々しい感じのビルだね」


「……………」


運転手には何の反応も無かった。

そろそろ、堪忍袋の緒が切れそうになっていた俺は、減速したカーブの途中でいきなりドアを開けて飛び降りるふりをしてみせた。


「ちょっ……ちょっと!待って下さい!」


運転手は、慌てた声の割には冷静に急ブレーキをかけながら、開けたドアを壁にぶつけて閉めると言う大技を披露してくれた。


おいおい!この車。かなり高いんじゃないのか?

て言うより、たかが災害対策に来た俺に対して大袈裟すぎやしないかい?


「もう少し我慢して下さい。数分で『イーター対策本部』にお連れしますので…」

と笑うのをこらえながら運転手は言った。


笑えるんなら最初から笑い顔みせろよ!と心の中で毒づきながら……


「『イーター?』って、何なんだ?」と運転手の肩に両手を置き耳元まで乗り出しながら訪ねた。

名前からすると、外国で発生した台風なんかが一番怪しいが…

今の北半球は完全な冬だぞ!

台風なんざぁ、何処にも発生していないはずだった。


「詳しい事をお話しする権限は持っていません。本部で権限のある者から説明があるはずなんで……勘弁して下さいよ。

それより危ないから手を離して下さい。」



「あんなアクロバティックな運転して、何で笑いをこらえて俺に返事をしたんだい?」

俺は両手に更に力を込めて優しく腹の底から低い声で訊ねた。


「見られてましたか!?

チーフから、たまにとんでもない……いや!予想外の事をやらかす…い・いえ、される人物なんで、丁重におもてなしするように命令されてまして……その…予想外な行動をされたので、つい………」


命令?ってことは、自衛隊か!?

いや、自衛官はあんな運転技術は習わないはずだから、警官の線の方が確かそうだな。

何で、民間人の案内人に公僕が、わざわざ東京から福岡くんだりまでぴったり寄り添うんだ?


フライト中に天候の異常を知らせるアナウンスも無かったし、車で走った福岡の街にもおかしな様子な無かった。

一体、どんな災害が近づいているんだ?


「着きました。マジに手ェ退かして貰えます?」

また、無表情な案内人に戻った運転手の口元はキュッと一文字に結ばれていた。


へしゃげてない方のドアから外に出ると、

小さいうえにガリガリで貧弱な体に不釣り合いなデカい顔の白衣の日本人のおっさん(挙げ句に見事なニコルソン禿げだが、似合ってねぇ!)

と見上げるほどデカい白衣の外人のおばはん(178センチの俺より頭二つはデカそうだから2メートル以上あるんじゃねえか?横幅も俺の倍はありそうだな……)が近寄って………

いきなり、おばはんにハグされた!!……


見方を変えれば「鯖折りかベアハッグ」だろう。

背中がミシミシとなる程の親密なハグから解放されて、おっさんの方を向くと、静かに右手が差し出された。


ひいらぎです。遠いところをご足労頂き恐縮です。

熱い抱擁は、キャサリン博士です。」


ヒンヤリとした右手を握り締めながら


「ジャパンテレコム、危機管理対策本部、田中 一郎です。柊  博士?から詳細はお聞かせ頂けるのですか?」


せっかちな俺は、今の状況がまるで見えない事態に多少イライラしていた。

「まずは、落ち着ける部屋に移動しましょう。キャサリン博士、例の映像を準備しておいていただけますかな。

他の者はコード2の体制のまま待機しておいて下さい。」

貧弱な割には力強い声で指示を出し、ついて来いと歩き始めた。


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