第35話 拡散 8
またまた 脱線しまくりです。
次話で元に戻るつもりです。
またまた、主役の田中さんを食っちまうキャラとして毛利准尉が急浮上です。
小沢さんですが…フルネームは 小沢 柚木〈おざわ ゆずき〉です。
秋葉さんは…秋葉 郁恵〈あきば いくえ〉です。
毛利・秋葉・小沢
「女を囮にする作戦だと!何を血迷った事をいいだすんだよ。
お前はよくても、小沢曹長は…………嫌だよ。なぁ!」
毛利が呆れたと言わんばかりに小沢に共同戦線を申し入れるために、出来るだけの笑顔をふりまきながら小沢の方に顔を向けた。
げぇ!…小沢ってわっかりやすい奴だな、やります!やります!楽しそうです!って顔にかいてやんの、そういやぁ、こいつは可愛らしい顔して、バリバリの武闘派だって誰かが……そう!鈴元が言ってたなぁ
協調が無理と悟った毛利はさっさと白旗を上げた。
「あーー、もう好きにしてくれや。どの道、部隊の最上位官は俺だが指揮権は曹長だかんな。
でもよ、あんまり女が死ぬとこは見たくないんだよな」
「大丈夫です!」
いやいや、目をウルウルさせながら頬をポウッと赤らめてゾンビ狩にワクワクと胸をときめかすってぇのは……ほとんど変態の域だぜ。
鼻歌を歌い、スキップでもやりそうな勢いで二人は、先頭のポジションに向かっていった。
「俺たちがついてますから…心配せんで下さい。」
あまりパッとしない、30後半くらいの隊員が声をかけてきた。彼の後ろには似たよう世代の隊員が3名かたまっていた。
「石原1曹です」
石原は毛利に握手を求ながら
「後ろに控えているのは渡2曹、舘2曹、神田2曹です。
姫は私らが守りますんで安心なさって下さい。
では、失礼なすって」
挨拶を済ますとさっさと小沢を追いかけていった。
「軍団!4人でカバー頼むわよ!」
まるで後ろに目がついているのか、信頼しきっているのか、小沢は疑いもせずに4名が続いていることに確信したように歩き続けた。
「姫って?小沢のことかぁ?
えっ?軍団?4人で?軍団って…
あっ!石原・渡・舘・神田!か!
ったく、太陽にほえろか?いや、西部警察?出来過ぎやろ!」
「准尉。」
後ろから声をかけられて振り返ると20代後半の隊員が無理無理な作り笑顔で挨拶してきた。
「松田3曹っす。姫の命令で准尉をサポートしますっ」
松田か、こいつも軍団の一員なんだよな、姫って言ってんだから。
てか松田って言えば松田優作だよな?はて石原軍団だったか?
「断っても無駄みたいだね。よろしく。」
訳が分からなくなった毛利はやけくそ気味に愛想よく、ボディガードの松田を引き連れて秋葉のサポートになりそうなポジションを探しに行った。
「小沢さんの武器は何ですか?私はこのバディ君(89式自動小銃
の自衛隊内での呼び名)でぇ~す。」
小沢に負けないはしゃぎっぷりの秋葉だった。
「そう。
私は基本的には格闘戦派なんだわね。
だからメインウェポンはこれよ。
今日は思いっきり殴っても誰にも怒られないわよね~?」
うふっと笑いながら、手のひらにピッチピッチの黒皮の手袋をはめて、ポケットからなにやら取り出して人差し指でクルクルと回して握りしめた。
「ジャ〜ン!ブラスナックルゆずぽん仕様よ」
そこには、ピンクメタリック色の5つの穴の空いた板状の鉄らしき物体があった。
「こうやって握って拳を作るんだ。
そうしたらね、ほら!丁度、正拳で殴るとこがナットの尖った部分になるの、これで殴るんだよ!」
(わかりやすく言えばメリケンサック。わからなければ調べてちょ:作者)
「いいなぁ〜。愛用品で。私なんか借り物ですよ」
普通の格好をして、原宿辺りを歩いていたら間違いなくスカウトされそうな肢体と美貌を持つ二人が、銃器や武器についてまるで化粧品の品定めのように会話をしている。何とも物騒な話しである。
流石に隊長とは言っても若い女性である、隊斥候に起つのは古参兵に反対されたため、先頭はショトガンを持った隊員が勤めていた。
「小沢さん、小沢さんの班って、変わった武器を持った人が多いんですね。」
キョロキョロと回りの隊員を見ながら秋葉が羨ましそうな声で聞いた。
「そうね。私の班はちょっと風変わりなのよ」
確かに風変わりな装備の隊員がいる部隊であった。
全員で8名
普通の装備を持っているのは、斥候の位置についている牧田士長と最後尾を受け持つ沖田曹長の2名だけだった。
他の者は自動拳銃などの最小限の基本装備だけは持っていたが使用するのは特異な武器だった。
石原はククリナイフ(別名グルカナイフ)
渡は日本刀
舘はシルバーのS&W M686リボルバーの2丁拳銃(357マグナム弾を使用する回転式拳銃)
神田はAA−12(フルオートショトガン)
松田に至っては、左右の手首に長さが50センチほどの3本手鉤(但し鉤の部分が尖った槍状になっいる)を装着していた。
斥候を勤める牧田は拳を握りながら腕を上げた、『止まれ』の合図である。
その合図を認めた小沢は音もなく牧田横に進んだ。
「どうしたの?」牧田の顔に頬がつくほど顔を寄せ、牧田の視線を追いながら小沢がたずねた。
「先の通路を曲がったところに居てます。」
「見えないじゃない?」
「曲がる後ろ姿を確認しました。間違いありません。どうします?
様子をみますか?」
牧田の問いに、ニッコリと微笑みながら小沢は即答した。
「馬鹿ね!殺るわよぉ〜。そのために来たんでしょ?用意して!」
「神田!前に出る用意だ。直ぐに姫が飛び出すぞ。」
石原が横にいる神田に注意をした途端に、小沢が立ち上がり、牧田のフリッツヘルメットを大きく叩き。
「いやっほほーーーい。皆のもの!突撃!」
脱兎の如く、通路角に向かって走り出した。
「ウソ〜〜!いきなり突撃ですか?心の準備がないですよ〜〜」と文句をいいながらも、秋葉は小沢を追った。
小沢が最初に通路角に到着し通路を曲がった。
通路には数え切れない感染体が回れ右をしているところだった。少なく見積もっても40体は居た。
「もっと、広いところで遭遇したかったなぁ〜」残念そうに言いながら2歩、3歩と前進し、近づいて来た最初の感染体の顔面に体重をかけた『ブラスナックルゆずぽん仕様』の一撃必殺の右フックを放った。
ブラスナックルは、素手ではありえないほど感染体の顔面にめり込み、その肉と共に頬骨を粉砕した。
小沢は更に止めを刺すために、叫びながら1歩踏み込んで左のショートアッパーを感染体の右顎下から斜め上に撃ち抜いた。
「ブゥーーーメラン テリオーース!!!」
感染体はあらぬ方向に首を曲げて、床に崩れ落ちた。
「さあ!お次は?」
次なる獲物を求めて通路に顔をもどした瞬間、小沢の顔は冗談を言っている顔から、一気に真面目な顔になり、口を真一文字し気合いを入れ直した。
1メートル以内に感染体が4体ほど戻って来ていた。
(やばいなぁ。一気に4体は相手に出来ないわ。引くしかないの?)
そう考えた瞬間に、小沢の脇から軍団の1員の神田が飛び出して、AA−12を感染体に向け、引き金を弾いた。
「ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド」鈍い重低音が鳴り響き、4体の感染体はボロボロになっていた。
神田の利用するAA−12は毎分350発の発射スピードを持つフルオートショットガンである。
今装着しているドラム弾倉には32発のダブルOバックの散弾が装填されている。
あっという間に10発の散弾を感染体に浴びせたのだ。
「神田!アンタの武器 反則だよ!」礼どころか助けた神田の武器にいちゃもんをつける小沢であった。
「姫!30メートル後ろのホールまで退却しましょう!その方が楽しめますぜ!」
神田が小沢の前面に位置し、感染体の動きを確認しながら怒鳴った。
小沢にとって撤退は絶対に嫌なことだったが、神田の広いところなら楽しめるの一言に乗っかった。
回れ右をして「た・いきゃ〜〜〜〜く」と叫ん走りだした。
その後を神田が散弾をフルオートでばら撒きながら後退した。
「て・撤退ですかぁ〜」
すれ違いかけた秋葉は、急制動が間に合わずに、神田の真横に出てしまった。
「きゃぁぁぁ!」
とか悲鳴を上げながらもスリングで肩にかけてあった89式を構えて、3点バーストで打ち出した。
「微妙〜〜!」
狙ったところと着弾点が思惑通りに行かないみたいである。
しかし、引き金を1回弾いて発射された3発の銃弾は全弾、感染体の頭部に命中していた。
6体に銃弾を撃ち込んだところで
「何やってんだよっ!撤退だろうが!
撤退しながらリロードしろよ
ほら!いくぞ。」
そう言いながら毛利は感染体に向かって、1弾倉分のバラベラム弾を浴びせていた。
その横には影のように松田が張り付いていた。
3人で撤退し、30メートル後方の開けたホールにたどり着い時点で
「毛利さん。射撃が上手いって自慢していませんでした。さっき撃った弾はぜ〜んぶ、感染体の足にしか当たってなかったですよ?」
秋葉が『勝った』と言わんばかりに鼻をフンフンと鳴らしていた。
「馬鹿か?お前は!ありゃ膝を狙って撃ったんだよ!
膝が駄目になりゃよ。あいつらだって、歩けやしまい?
這ってるところなら、バットを持った中学生だって殺せるぜ!」
目をキラキラさせながら『凄い冷静な計算的な作戦ですね』とかくるかと思ったら……
「そんなことしたら…楽しみがなくなるじゃないですか!」
あまりに真剣でみるみる内に顔を真っ赤にし始めた。
マジかよ?本気で怒ってやがる!こいつは感染体相手にシューティングゲーム感覚なんじゃねえか?
「もういい!あっちいけ!シッ、シッ」
毛利は秋葉を追い払う右手の仕草をみせ、背を向けてしまった。
「毛利さんは浪漫がなさすぎ……」
毛利と秋葉がじゃれている間に、他の物は防戦体制を敷いていた。
「いい!最低10体はホールまで無傷で来させるのよ!
出来たら1~2体単位でね。みんな、わかった?」
ハァ~ こっちのお嬢ちゃんもか………
普通、無傷で陣地に招き入れろなんて指示だす指揮官がいるかぁ?
呆れかえって壁にもたれかかる毛利の横に松田が同じようにもたれかけながらガムを差し出した。
「ハッカっすけど…」
「ありがとう」
毛利はガムを口に入れ、手持ち無沙汰を解消する方法を考えていた。
「姫、姫を変わった奴だなんて思わないで下さい。」
「へっ」
いきなり話し出した松田の顔が真剣だったので毛利は続きを話し出すまで待つことにした。
「姫は……親父さん、いや、小沢隆〈おざわたかし〉の娘なんです。
だから…事件の後、丁度8年前の中学の時に報復とかで鳩山組に拉致されて……散々な陵辱を受けて…子供も産めない身体になっちまって。
あんなに、綺麗なのに水着にもなれないほど身体中傷だらけなんです。
それから、姫は変わっちまって……
強いことを示すには圧倒的な力と暴力の誇示だと思い込んじまったんです。
それに気がつかずに、四神が親父さんの変わりに稽古を………。
元々、親父さんが唸るほどの才能があって、僅か3年で……四神達もかなわないほど強くなって…………
とうとう、4年前に……鳩山に乗り込んで……
丁度、俺が警察官になって、偶然に通報で駆けつけて姫だとわかったんで逃がして、四神に匿ってもらったんです。
その後は、自衛隊の織田陸将補が……どこかに手を回して、事件を揉み消して、四神と俺も自衛隊に入ったんです。
まぁ、揉み消しと言うより、鳩山も自分は半殺しで、息子も殺され、組員も30人死亡に20以上が再起不能なんて………恥かきたくはなかったと思うんですが……
あっ、織田陸将補は親父さんにとっては兄貴みたいな人だったらしいです。」
小沢事件
8年前 当時(現在も)日本最大の広域指定暴力団だった鳩山組組長、鳩山幸宏の息子(当時17歳)が大阪市内の女子中学生4名を10日間に渡り拉致監禁、強姦し絞殺した事件で女子中学生が在校していた中学の父兄だった小沢隆が単身、鳩山組に乗り込み犯人の鳩山幸久を襲い、壮絶な争いの後に、小沢隆は30余余りの刀傷と8発の銃創で絶命。鳩山幸久が意識不明の重傷(一命は取り留めた)、他組員20余名を再起不能にした事件である。事件の詳細は
行方不明になった女子中学生の遺棄死体が発見され、最後の目撃情報が鳩山幸久をリーダーにする暴走族『なにわメサイア』に言い寄られて嫌がらせをされていた。と言うものであった。
警察の懸命の捜査により、実行犯の内の1人を逮捕、自供から鳩山幸久が主犯であると断定。
それ以外にも類似の事件の余罪についても自供がされたので未成年であったが異例の指名手配となった。
4名の女子中学生を拉致監禁し強姦の末に死体を遺棄したことで、マスコミにも大々的に取り上げられ、他の実行犯2名も逮捕されたことから発見も時間の問題と思われた矢先に、逮捕された3名の実行犯の肉親が立て続けに通り魔事件に合い死亡。
捜査を担当していた捜査官の子供が誘拐され、死体で発見された。
マスコミがこぞって、鳩山組の関与を糾弾したが、マスコミ関係からも被害者が出ることになった。
どの事件も、犯人は捕まらずに鳩山組の関与を裏付けることは出来なかった。
度重なる警察への協力者の身内の不幸は、協力者達を震えあがらせていた。
幸久がひょっこりと姿を表したところを警察が逮捕したが、公判では実行犯3名が供述を覆したことにより、無罪判決となってしまった。
検察は、証拠がないことや、実行犯達の覆した供述を覆すことが不可能と判断し上告をあきらめた。
小沢隆は、弱小だが実力日本一と噂されていた『実践格闘塾 小沢』の塾長であった。
被害者の女子中学生の1人が塾生であり、塾仕込みの護身術で激しい抵抗をしたがために、アキレス腱を切断されるなどの酷い暴行の後に強姦されていたことを知らさた。
小沢は塾の運営のため、流派を存続させるため、金銭を得るがために、安易に護身術などの教室を開いたことを悔やみ、幸久を殺すことで償い、かたきをとりに単身で鳩山組に乗り込んだ。
しかし、人を殺すことは出来ずに幸久と幸久を守る組員を血祭りにはしたが自身の命も尽きてしまったのだ。
「何故?俺にそんな話しを?」
「わかんないっす。俺、凄いカンが働くんです。誰かに姫の事を伝えておかなきゃ……そんな気がして………」
「わかった。俺の心にしまっておくよ。それより、生きてここから出ようぜ」
毛利は軽く松田の肩を叩き
「小沢の人生の一時には辛いことがあったかもしれないが、今は君や軍団に囲まれてて幸せなんじゃないか?弱気になるなよ」
「准尉。ありがとうございます。」松田は、何かが吹っ切れたような顔になった。
さぁ、聞いちまったら仕方がねぇな。モエモエ秋葉と小沢姫は命に替えても護らなきゃ、男じゃいられねえな。
『誰』かを護るために戦うよりは目標がある方がいいわな!
毛利は手にしているマシンガンのMPー5のグリップをギュゥと握り締めた。
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