第33話 拡散6
出張前の最後の投稿です
藤波の連絡を受け、青島、黒瀬、岩永は監視モニターを A号エレベーターに切り替えて、藤原達がエレベーターに現れるのを待っていた。
突然、カメラの死角からエレベーターに向かう感染体が現れた。
「ヤバいぞ。扉を出た瞬間を襲われる!」
黒瀬が悲鳴に近い声をあげた。
「いや!訓練通りにやれば、扉が開けばショットガンを持った隊員が制圧行動を取るはずだ」
岩永が祈るように言った。
その後、監視モニターの映像は和久井の体験のままが映し出されていた。
同じ画面に見入っていた高柳は、ヘッドフォンから複数の悲鳴が聞こえることに気がついた。
(いつから?聞こえていたんだ?)
音を感知した監視カメラを選別する命令を操作用のパソコンに打ち込み、どこで悲鳴が起こっているのかを確認しようとしたところ、5箇所のカメラで音声反応があることがわかった。
急いで、その5箇所のモニター画面を分割表示した。
「………………」
通路には数え切れないほどの感染体うろついていた。
大半が研究所員であり、示されたエリアと通路番号は居住区域であった。
「2尉!居住区域に感染体大量発生!画面切り替えます。」
高柳の悲鳴のような報告と同時に、和久井の画面から、通路一杯の感染体の画面に切り替わった。
「こ・こんなに?… な・何で…増え続けるんだ!」
黒瀬が力なく床に崩れ落ちながら絶叫した。
「り、理由があるはずだ!監視カメラの映像を遡ってチェックするんだ。」
青島は、黒瀬と高柳に指示を出しながら、岩永を手招きで呼んだ。
「いいか!本部警備班全員で入り口を固めさせろ!
それと、数名を選別して、警備班のバックアップにつかせろ!2名に1名程度でいい、予備弾薬の補給が出来るようにしろ。
最悪の場合には弾幕を張るつもりで撃たすんだ!しばらく任すぞ!
通信兵、織田陸将補に回線繋げ!」
毛利と秋葉。
「秋葉よぉ。すげぇ音がして、戦場みたいな銃撃の音がしてんのに向こうの3体は動かんよな?何故だと思う?」
「確かにおかしいですね。あの3体以外は通り過ぎて音に向かってるんで……音に対する仮説は間違いないと思うんですが・・・」
「まだこっちの方を向いてるよな?何故こっちを向いているんだろう?」
「そんなこと、私に分かるはずないじゃないですか?それより、音に向かっていったゾンビの数、すごい数でしたよ!ここに住んでいる研究員、全員が感染したじゃないですか?」
このまま、ゾンビとにらめっこしててもしょうがないよな。秋葉、ゆっくりと階段をおりて、藤波達を呼んで来い。
最悪は実力行使で切り開くしかないかも知れないからな。」
「了解。毛利さん1人で怖くないですか?」「ガ、ガキじゃないんだ。マシンガンだって持ってるし、それより早く呼びに行け!」
音を立てずに、秋葉が扉の向うに消えた瞬間に、急にゾンビ達はこちらの方向の興味をなくしたように、フラフラとしだしたかと思うと、3体とも同じ方向に進み出した。
「何なんだ?秋葉がいなくなった瞬間にこっちの報告に関心がなくなったみたいだな。音じゃなかったら……何だ?
俺と秋葉が2人だとこちらに関心があり、秋葉がいなくなると関心がなくなるということは、
問題は秋葉ということか……
俺と秋葉の違いは?男と女?だよな。でもその違いは見ないと分からないよな…もしかして、匂いか?でも、秋葉は香水なんざぁつけてなかったし。」
色々と考えも巡らしている間に、秋葉が藤波班を引き連れてきた。
「准尉。藤原んとこが1名を残して全滅です。移動に使ったエレベーターが落下したんだそうです。岩永3尉から連絡がありました。
本部員は本部内に立て篭もるらしいです。監視カメラによると研究員の8割以上が感染したみたいだそうです。
すみません、無線が入りました。副長、説明を頼む。」
藤波が毛利に説明している間に、簡単な防衛ラインを5メートル先に設置しを得て戻ってきていた小沢曹長が説明を引き継いだ。
「現在、地下1階で確認がとれたぜ依存者ですが、F会議室に柊・キャサリン博士と来客者1名に足立班の6名の計9名。弾薬が切れてた青山曹長と末長3曹の2名がロビーの自販機の上に登ったままでゾンビに取り囲まれています。
それと、西脇分隊の福永曹長と酒井2士、斉藤分隊の中曽根2曹と竹原曹長。竹原曹長は膝を撃たれた状態でかなり重傷みたいです。それと、和久井がこの4名に助けられました。それと我々です。」
説明が終わるのを待ち、秋葉が毛利の肘をつついてきた。
「何だ?」
「ゾンビが3体増えてます。もともといた奴と同じでこっち向いてます。でもさっきより頻繁にこちらに歩いて来るそぶりがあります。」
「分かった!……秋葉!小沢!こっちに来てくれ!君、ゾンビの様子を見ておいてくれ」
隣にいた隊員にゾンビの観察をたのみ、毛利は秋葉と小沢を扉の向うの階段に連れ出した。
「ちょっと、ここで待っていてくれるか?」と言い残し扉の向うの通路に戻っていった。
「秋葉さん、どうゆうことなのか説明してくれる?」
「曹長、私も訳がわかんないんですよ」
「そう。なら准尉が戻って来るまで待つしかないわね。」
そういいながら、小沢は階段に腰掛けてリラックスしたように壁にもたれかけた。
「おまたせ!」毛利が通路側から戻ってきた。
「どういうことですか?私には指示を出さないといけない部下がいるんです。何時までも階段で休んでいる場合じゃないんです。」
小沢が毛利に詰め寄った。
「失礼な質問で恐縮なんだが、2人とも、その・・・・今日なんだが、その・・・、本当に失礼なことなんだが・・・・・・・生理か?」
「もう!こんな非常事態に何聞いてんですか!後で正式の抗議しますからね!馬鹿馬鹿しい、完全にセクハラ発言ですわ!」
イライラしていた小沢は、毛利を突き飛ばすように通路に向かった進もうとした。
「わかった!わかりました、毛利さん。そういうことなんだ!ゾンビはどこかに行っちゃった?」
「ああ、という事はお前は生理と言うことだな!」
「そうです。それも一番きつい日です!ゾンビって犬並の嗅覚って事なんですね!」小沢は毛利を秋葉の顔を交互に見ながら
「感染体が、匂いをかいでいるとおっしゃられるんですか?准尉は!」
「その通りさ。実際にお前さん方が階段にでた途端に、回れ右でいなくなっちまったよ。
曹長も生理と思っていいかな?」
顔を真っ赤にしながら小沢は頷いた。
「毛利さん、本部から命令が入りました。隊を半分に割り、1隊は青山班長の救出。もう1隊は、談話室にバリケードを作って立て篭もっている福永達と合流してF会議室に行き、柊・キャサリン両博士を救出して研究所から県警本部に警護してお連れしろとの事です。
小沢!ちっとハンデだが頑張ってくれよな!」
通路で藤波は隊を半分に分けた。藤波が率いる隊は青山曹長の救出。毛利(実質は小沢)が率いる隊は談話室と会議室を目指した。
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