第31話 拡散 4
来週から出張生活に入ります。
更新が出来るか不明ですので一話だけでも
お読みいただければ幸いです。
システム復旧の二人組
「よし!メインフレームの再起動は終了時したぞ!
秋葉!あとはお前の腕次第だ。
無線・ネットワーク・電監視カメラ・電話の順に再構築できるか?」
携帯用の小型ノートパソコンを起動させている秋葉はコクンと小さく頷いて
つかつかと毛利に向かって歩いてきてすれ違い、メインフレームに自分のパソコンを接続した。
「毛利准尉。先週の会議の私の提案、覚えてます?」
毛利は、きたか!と苦笑いをした。
「緊急時のメインフレームのバックアップデータの件か?
確かに、お前の言う通りになったわな。
しかし…真鍋さんにゃ逆らえないからな、俺は…。
お前の案はいい筋してるとは思ったぜ。
でもよそのプログラム自体がな。
こんな組織だから…はい、そうですかとは使えないんだわ。」
「僅か18の小娘が作ったプログラムを認めるのがいやだったんですよね。」
喋りながらも、信じられないスピードでキーボードの上を走る、秋葉の指先にたまげながら毛利は諦めたように
「お前の言う通りだよ。真鍋さんも、陸自ではトップクラスの自負があったんだろうな。
ポッとでの……
わりぃ!な
小娘が!てなところだったんだろうよ。
で……お前さん。今、何のプログラムを走らせてんだ?」
エンターキーを大袈裟に叩き終わり、オーケストラの指揮者のように両手を広げおえて、秋葉は、くるりと回り毛利に顔を向けた。
「やっぱり!毛利さん爪を隠してたでしょう?
何で、私がプログラムを走らせたと気がついたんです?」
「つ、爪?なんだ?そりゃあ?
まぁ。話しの流れから見りゃ。見返すチャンスじゃねえかよと思うだろうがよ。
てか…お前。いっつも勤務明けたらメインサーバに不正アクセスしてっだろう!
一応、不正侵入されたら俺の責任だかんな。ログは完全に消さしてもらったからな。
しかし、かなわんことにお前以外にももう一人居てやがるだ、こんな閉鎖的なところによ!」
「やっぱり!毛利さんって、普段は適当に仕事流しているだけでしょ?
ここのサーバの不正アクセスを感知出来るって、私の知ってるレベルでは、
スモールマンかバカボンかキャプテン・G。
もしかしたら、チームBoo?
くらいしか思いつかないんですけど。」
「て、全員。名だたるハッカーじゃねえかよ。
でも、最強のおぼっちゃまがぬけてんじゃ………
な〜るほど!おぼっちまは俺の目の前の、寝癖小娘か!
こりゃ、一本取らたな。
毎夜の不正アクセスはバックアップデータのためか?」
「システム構築の要件書を見たんですけど、あるところまで侵入すると要件に載ってない、特殊なファイアウォールが出てくるんですよね。
2年前に統合幕僚本部に侵入した時も非常に似たタイプにぶち当たったんで……
更にその後のトラップに引っかかっちゃって……ピンポンダッシャになっちゃいましたけど。
で、誰が作ったのをかしりたくて自衛隊に入ったんです。
隊内の実力分布から見たら、真鍋さんが一番怪しかったんですけど……
実際にあったら、テンでど素人ですし…
毛利さんでしょ?」
「はっ!ばれてりゃ、惚けても意味ねえわな。
俺だよ。2年前に『さっちゃん1号』が突破されときゃぁ、ショックでよ。
挙げ句に無駄とは思ってて念のために用意してた『黒髭』にひっかかりやがるもんで……
更にショック倍増よ!
『黒髭』に引っかかる。イコール大人ではない。ってことになりゃ、『さっちゃん1号』は子供にハッキングされたってことだかんな。」
右袖で涙を噴くまねをしている毛利であった。
「あれ、『黒髭』って言うんですか。確かに、社会人になっちゃったら、引っかからないですね。」
「で?目的は達成。辞めんのか?」
「正直、迷ってます。私って、結構普段を気にしないタイプだから、だらしなく見えません?
普通の会社だと間違いなく規格外扱いでしょ?
ここだって、毛利さんだけが普通に接してくれるだけですし……」
「まぁ、システム屋に近い匂いみたいなもんで、お前を放っておけないだけだよ。
ついでに言えば、だらしなく見えるんじゃなく、女性としては十分にだらしないと認識した方がいいと思うがね。」
ピィーと言う音がなり、秋葉はメインフレームに駆け寄った。
何度か、パソコンを操作してメインフレームに指示を送り
「毛利さん、完了しました。
でも、2点問題が……」
毛利は秋葉のところに駆け寄り、報告を聞くまでもなく
「1つは入退室管理だな!真鍋さんが組んだプログラムなんだけどバグだらけなんだ。
どれどれ………ひっでぇなぁ。中学生レベルのミスじゃねぇかよ。
チッ、こんなレベルの設計にパスワードつけるかぁ?ふつう?
あの人は、わかんないんだよな。こんな初歩的なミスをするかと思うと……
予測できない優秀なプログラムを書き出したりで……
しかし、現状ではヤバい問題になるな。」
「えっ?でも、25回の開閉動作でセンサーが、最終更新設定に戻るじゃないですか!
25回の意味が分からないですけど……」
「館内の者は自然とICカードを利用するだろ。
しかも、センサー自体がICカードをかざすタイムラグを10秒としている。
つまり、通常ではセンサーでの入退室はあり得ないんだ。
でも、今は感染体がそのセンサーで各部屋に入ることが出来ると言うことになるんだ。
更に、よく見てみな。再起動後に本部のホストコンピューターから指示を出さなきゃ作動しないことになってる。」
秋葉は、毛利の顔の真横で爪を噛みながら
「ほんとだ!しかし、わかりにくい指令コマンドですよね。」
「あの人の特徴だよ!ダッシュで本部に戻るぞ!」
「本部! 青島2尉!
毛利です。」
「毛利か?助かった!一斉に無線が入って大変な状況なんだ!
もうしばらくそちらに待機しておいてくれ!」
「参ったな。こちらの話しを聞こうともしないぜ。
しかたなねぇな。こっちから本部に乗り込むとするか!。行くぜ。」
メインフレームは、地下3階にあり、エレベーターなどから一番遠い位置にあるため、徒歩で戻るしかなかった。
本部から行く場合は、階段を駆け下りるだけで済むが、戻るのは階段を上がらなければならず、秋葉の銃器が意外とかさばり、地下1階まで思ったより時間を要した。
「よしゃぁ!後は平坦な通路だけだな。
しかし、お前さん……ちょっと多すぎへんか?
むちゃくちゃ重いぞ。
弾、持ちすぎと違うか。」
扉を開けながら、担いでいたバックパックをドサリと床に下ろした。
「パーン!」と小さな音が聞こえたような気がして、毛利は思わず通路を振り返った。
「な・何だ?お前も聞こえたか?」
「銃声みたいですね。」
秋葉は腰のホルスターから自動拳銃を抜き、スライドを引きチェンバーに初弾を送り込み、安全装置をセットしホルスターに戻しながら答えた。
更に無言のまま、89小銃にも初弾を装填して、バックパックから予備弾倉を携行するためのベストなどの装備を引っ張り出し次々と武装していった。
本来、非戦闘員である毛利も秋葉の雰囲気に呑まれ見様見真似で同じように装備を身につけ始めた。
89小銃を手に背中にショトガンを背負った秋葉と、両手にMPー5を持った、即席戦士が誕生した。
「毛利さんは実戦訓練は受けられたんですか?
何か、あまり『さま』になってませんけど?
まるで自衛官じゃ無いみたいですよ。」
「ない!
自慢じゃないが、俺は文部科学省からの技術出向なんだよ。兵隊さんじゃないんだ!
あんまり長い間出向してるんで…みんな勘違いしてるがな!
だから、実弾を撃ったのは…ここに配属された4日前。
使い方を知ってるのも、ピストルのピー22何とかとこのマシンガンのNPなんたらだけ!
但し!教えてくれた鈴元士長によると、一般隊員より命中率は高いらしいぞ!
特に、動く標的に動きながら当てるのは天性の素質だって言ってたぜ。
まぁ、黒瀬に言わせりゃ。変わり者は変な才能があるんだとよ。
お前と同様にな!
そうか!黒瀬に!」
「本部!本部!黒瀬曹長!
こちら毛利!」
「こちら、黒瀬です。
無線連絡が混乱してて緊急以外は禁止されてるんです!
用件は何ですか?どうせ厄介ごとでしょうけど。」
「空きチャンネルをひとつ教えろ!
チャンネル、変えりゃ2尉も文句ないだろ!」
「Σ 2 で待ってます。2尉は今偉いさんに状況説明中です。」
毛利は、素早くチャンネルを設定し、呼びかけた。
「黒瀬か?」
「ハイハイ、なんっすか?
今、すげぇ状況なんすっよ。
地下2階で、若手の研究会の会議室が感染体に襲われたみたいで……。
西脇、斉藤、両分隊で生き残りが僅か4名っす。1名、重傷なんで実質は3名ですが…。
最悪で、ざっくり…50から80近い感染体が発生しちまったみたいなんです。」
「な・なんてこった!真鍋さんが言ってた通りじゃないか!
で、感染体は地下2階か?」
「いえ……そ、それが、何でか分からないっすけど、貨物用のエレベーターに乗って1階にいっちまって……
監視カメラから見たところ、1階に20体くらいが徘徊してて……
後は建物の外に出たっぽいです。
馬場分隊が駐車場ルートで外をに、鶴田分隊がB階段ルートで1階を、索敵・殲滅行動予定です。
で、須永、斉藤の明け勤務者で1分隊を編成して馬場分隊の応援に出します。
馬場、鶴田両隊とも既に展開開始しました。
後、2分で編成した隊が馬場隊の応援に出ます。」
「もしかして、戦闘部隊が空っ欠になっているのか?
館内はどうなってるんだ。」
「足立班は柊博士やキャサリン博士に付いてます。
他の保護対象者を青山班と本部詰めの住友班の半分を割いて地下1階で集めてます。
警備の藤原・藤波の両班が地下2階の索敵に出たばかりです。地下2階は最優先で監視カメラで確認し、2体が徘徊してるのを確認してます。」
「地下1階の監視カメラの確認はどうしているんだ?」
「地下1階ですか?確認順位最下位なんで……」
「黒瀬!よく聞け!さっき、銃声が地下1階で聞こえたんだ。
至急に地下1階の監視カメラをチェックするんだ!
本部の警備班に注意歓喜するんだ!」
「了解!」
(本部はICカードがなきゃ入ること出来ないのに、毛利さんもびびって判断力低下してんじゃねぇか?)
「おい!地下1階を写してくれ!」
オペレーターがパソコンを操作して地下1階を写し出した。
「毛利さんの取り越し苦労か。」
順々に写し出される画面を覗き込みながら、黒瀬は毛利に返事を返そうとした瞬間に、画面に黒っぽい染みのような物があるのを見つけた。
自分のパソコンでその画面を拡大して、信じられない物を見たように、黒瀬の目が飛び出さんばかりに大きく見開かれた。
「け・血痕?」
突然、画面の血痕らしき物を、自衛官が履いている長靴が踏みつけた。
(誰か知らんが、いいタイミングで現れてくれるな!)
画面右上の映し出されている場所を確認し、画面をズームアウトさせながら
「地下1階のC通路、5番付近にいてる者!聞こえたら返事をしてくれ!」
監視カメラがなかなかズームアウトを開始しないことに苛立ちを感じながら
「地下1階 C通路にいてる者!返事を!」
やっと、カメラがズームアウトした。
「………ヤバいぞ!」
そこには、カメラに映し出された自衛官以外に7〜8体の感染体がいた。
保護対象者の確保に赴いた青山班の隊員と保護対象者達であった。
黒瀬は、無線の警報ではなく。館内放送の警報装置を作動準備をし
「こちらは本部です。地下1階を感染体が徘徊しております。各自は部屋から出ないで下さい。
警備班が感染体を排除するために発砲する場合があります。」
とマイクに吹き込み、自動録音で同じ案内3回流れるように設定し
「地下1階に感染体発見!各個、装備装着!ゾンビだ!」
本部内に警戒を呼びかけて、力一杯にアラームのスイッチを押した。
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