第28話 拡散
死にそうな勢いで書いてますが…
身体が持つんでしょうか?
眠たいです。
本部
「あ・お・し・ま!
どうなっているんだ!とうに3分は過ぎたぞ!
自家発電はどうなってる!非常灯すらつかないじゃないか!」
手元で小刻みにバイブレーションを起こしている携帯電話にも気づかずに田坂は青島に怒鳴り散らしていた。
「んっ?」
やっと震える携帯電話に気がついた田坂は相手も確認せずに通話ボタンを押した。
「田坂!」
「田坂…佐で…須永…です。い……り…てい…ん。」
「須永が?よく聞こえないぞ!」
「ツー・ツー・ツー」
「くそ!切れた。」
田坂はコールバックしようと着信履歴を見て、若干安堵の表情を浮かべた。
(須永達が岡田博士を確保したようだな。)
取りあえず、岡田博士の無事を感じとった田坂は、柊博士とキャサリン博士の安否を確認にいかせたこともあり、これ以上焦っても仕方ないことを悟り、本部機能と館内の通信網の復旧作業の指示に専念することにした。状況が把握出来なければ、的確な指示すら出せないからだ。
「毛利、どんな具合だ。」
青島が心配そうにパソコンを覗き込みながら尋ねた。
「ウィルスが侵入したみたいです。」(毛利)
「ウィルス?ここのネットワークはここ本部室以外の端末は外部と遮断されていると説明を受けていたが?」(青島)
「まぁ、ある意味では…外部と遮断はされてますが…
この部屋が使えると言うことは、外部に抜ける穴はあると言うことですから……完璧かと言えば…ご想像の通りです。問題は誰かという部分はさておきますが」(毛利)
「ごたくはいい!復旧の目処はどうなんだ?」
「私の持っているルート権限で出来る範囲の事はやってるんですが…
自家発電機のスイッチを入れに行き、サーバのメインフレームを再起動するしか方法がないかと…
真鍋1尉がお持ちの権限ならもしかしたら何とかなるかもしれませんが……」
真鍋と聞き、青島は力なく頭を振った。
ゾンビが館内にアウトブレイクした時から、強弁にアラーム発令を主張したせいで、鎮痛剤を注射され自室で昏睡させられていたのである。
(クソッ!ビビりの真鍋を排除したのが裏目か…ったく、田坂の奴の体育会系気質の弊害出まくりじゃねえか)
「発電機は誰なら操作できる?メイン何とかは君なら出来るのか?」
「発電機なら、私と黒瀬と秋葉…くらいですか?メインフレームは、真鍋さんと私と秋葉です。」
「秋葉って?あの小娘か?確か初教あけじゃないのか!?」
「あいつはあんななりですが…多分日本の中で5本の指に入るハッカーなんです。PCやネットワークなら真鍋さんも子供扱いですよ!
但し、権限がないんで彼女を行かすんなら、2尉のICカードを貸して貰わなきゃなりません。」
「ハァ?何で俺のICカードなんだ?お前と二人でいけばいいじゃないか?」
「もしもの時に、私のICカードの場合はその後に生体認証をくぐらなきゃなんないです。
その点、2尉のICカードだけがオールユーザー登録なんで、秋葉でも使えます!」
「な・なんで?田坂3佐でなく俺のICカードなんだ?しかも、本人にも知らされてないし」
「知りませんよ!そんなこたぁ。真鍋さんが、青島2尉のICカードをオールユーザーに設定しとけば、きっと緊急時に役に立つと・・・・田坂3佐にも内緒で上にくらいついて設定したんですよ。」
(なるほど、真鍋の奴も、田坂3佐は信用していないわけか!)
「分かった!で?その秋葉はどこにいる?」
「さっき、警護班に呼びに行かせましたから、追っ付けきますよ!
寝癖茫々でね!あれさえなけりゃ、萌え萌えのピチピチなんですがね!」
そうこうしている内に、ドタバタとした小走りの長靴音が青島の後ろで止まり。
「秋葉2士。到着しました。」
うっすらと灯るパソコンの光の中、ボサボサの寝癖のままで迷彩服のボタンもちぐはぐに留め見事にブラジャーを公開している、秋葉が精一杯の敬礼をしていた。
(大丈夫かよ!てか・・・・ブラジャー見えてんぜ)
声も出さずに、毛利は秋葉に近寄り、秋葉の迷彩服を正して一言
「ここは、男が圧倒的に多い職場なんだよ!変な物出してっと皆にぶっこまれるぞ!ボケェ!!!今から、発電機起動させてメインフレームを再起動にいくから用意しろ!ICカードは青島2尉に借りろ!
グズグズすんなよ!・・・・・黒瀬!後は任したぞ。」
青島への挨拶もそこそこに、警備班に近づき予備の自動拳銃2丁とスペアマガジンを貰い受けて、本部備え付けの大型マグライトを片手に飛び出そうとしたが、秋葉が警護班とゴチャゴチャと何か言い争っていた。
何事かと近づいた青島は、自分の耳に入った言葉を一瞬疑った。
「私達にも、89(自衛隊の正式採用に自動小銃)かショットガンを持たせて下さい!途中でゾンビにあったら任務遂行できないじゃないですか!館内の情報網の再構築は最重要任務なんです!」
駆け出した毛利が戻りかけると同時に青島も困り果てていた警備の者に近づいた。
毛利が時間がないもどかしさを訴えながら
「2尉!彼女は1級射手およびスナイパー候補官でもあるので・・・・」
「警備、彼女の希望する装備を渡してやれ!兎に角、停電とネットワークの復旧は最優先事項なんだ。ゴチャゴチャせずにさっさといけ!
あっ!毛利 何分で完了できるんだ?」
「発電機まで、障害なしで5分。起動と安定確認に2分。そこからメインサーバ室まで1分。起動と初期設定のパッチ作業に15分 25分時間下さい。
秋葉!モタモタすんな!おいてくぞ!」
毛利が小走りで本部を飛び出す後を、小柄な秋葉が不釣合いな荷物を担いで追いかけていった。
須永分隊
「ツー・ツー・ツー」
「駄目だ!電波状況が悪いみたいだ。このままじゃ本部は当分あてにはならんかも知れないな・・・・・。
仕方ない、当初の命令通りに動くぞ!」
「隊長!俺、暗視装置装備してます。中に入っていいですか?」
須永が電話をしている間に、本田が装備の中から暗視装置を引っ張り出して装着していた。
暗視装置は、非常に視野が狭くなり、慣れないとこのような格納庫内の探索には向いていないが、本田は常日頃、鈴元の指導の元、真っ暗闇の倉庫内で鬼ごっこの暗視装置訓練を行っていたので苦もなく格納庫内の探索に向かった。
「クリアー」
「クリアー」
「クリアー」
本田は小学校の体育館ほどの大きさの倉庫内のくまなく探索し、危険がないことを確認し大きな声で
「室内!クリアーです!!」と叫んだ。
「よし!安部は残って扉を確保。全員指定の区域に向かえ!」
既にC−2エリアに先に到着していた本田は、操作盤をライトで照らして準備をしていた。
「隊長!停電してるのに・・・・開くんですかね? てか操作盤自体に電気がきているようには見えないっす・・・・よ」
操作盤に張り付いた長谷部は、隊長に渡された情報端末と操作盤の交互に見やりながら、暗証番号を入力してみた。
「入力完了しましたが・・・・何の反応も無いっす。」長谷部が呆れ顔でつぶやいた。
稲本はおもむろに扉らしき部分に近づくと、まるで潜水艦の扉についているような大きな回転式にハンドルを力いっぱい回した。
ギッギッギッと僅かな抵抗の後、あっけなく扉がひらき分隊と岡田博士は地下駐車場にその姿を現した。
すぐ近くにいた2名の自衛官が小走りに近づき敬礼をしながら
「志村三曹と加藤士長です。命令により須永分隊に仮配属となります。よろしくお願いします。」
敬礼を返しながら
「こちらこそ!
須永曹長だ!博士を搬送用の車両にお連れしてくれ。
それと、地下駐車場は停電していないみたいだが、三曹、本部に無線確認してくれないか?研究所内は停電の上に無線も駄目なんだ。」
「了解!地下は停電しているんですか?
本部!本部! 青島2尉! 警備 志村・・・・
駄目です。無線機に反応が無いです。」
「あっ!そうだ!博士、携帯電話拝借できます?・・・・・・・・・・・
須永です。館内は大丈夫ですか?
ハイ!岡田博士は無事に地下駐車場までお連れしました。
ええ、地下駐車場は停電はしていません。
まだ、本部は停電が続いているのですか?
はい、外部の送電線ですか?確認はしますが・・・駐車場は問題ないですから、ちと考えにくいかもしれませんですね。
このままでいいですか?
全員乗車!新人2名はドライバー席に、博士は先頭車両に、分担はいつも通りで行くぞ。」
全員が乗り込み、軽装甲機動車はユックリを地下のスロープから街に繰り出した。
「三曹!停車してくれ!
ちょっと待ってろ!
3佐、今駐車場を出てほぼ建物の真正面です。
はい、地上階は停電しておりませんね。エントランスから最上階まで明かりがついてます。
電力会社か応援部隊に電話などしなくていいんですか?はぁ、あと10分程度で自家発電がですか?
分かりました。我々は当初の任務を継続します。
はい、織田陸将補ですね。えっ!私が陸将に説明するんですか?
了解しました。
よーし、出発するぞ。
三曹、行き先変更だ。県庁に向かってくれ!10分くらいで到着できるだろう?」
須永分隊と岡田博士はひとまず地獄から一歩遠のくことが出来たが、それも大した時間もたたずにまた巻き込まれていくのである。
柊博士一向
突然に停電にはびびったが、流石に訓練を受けてる軍人、ん?軍人って言ってもいいんだっけ?テレビや映画みたいにすばやく体制とりやがるわ。案外日本の自衛隊の捨てたもんじゃないのかも知んないな。
しかし、謎めいた1日に秘密基地めいた建物に停電かよ。こりゃぁ、間違いなく貧乏くじのフラグがフィバーだな!多分確立変動に間違いないぜ!
「柊 博士。ここの警備はどうなってるんですか?そのゾンビとやらはどこに居てるんすかね?」
「そんなことを聞いてどうするつもりなんじゃ?こんな暗闇のなかじゃ見学は許可できんがね。今いるところが地下1階じゃで、感染体は1階したの地下2階じゃよ。」
「ゾンビって走るのが早いんでしたよね?(確か、事務の由美ちゃんが走るゾンビは怖かったとか深夜放送を見た朝にわめいていたよな!)」
「おやおや!ゾンビの映画は見ないんじゃなかったのかね?
君の言ってるゾンビはリメイク版じゃよ!走るゾンビは夢がない!と思わんか?
ましてや、ワクチンで人間がゾンビ化する映画で壁を這い回るゾンビなんぞ、言語道断じゃよ!」
また、ホホホ付きかよ!お前のゾンビ映画の評論を聞きたいんじゃねえよ!映画の評論なら、やっぱり『故水野晴男』先生だろうが!
『いやぁ〜ほんとっに映画っていいもんですね』だろうが!さいなら・さいなら・さいなら・したるぞ!(淀川先生スマン!)
「は・博士・・・映画の話しじゃなくて、ここに居てるモノホン!
ホ・ン・モ・ノの話しがききたいんですが?
まさか?走ったりしないですよね?」
「走るの何も、ベットに拘束してあるから大丈夫じゃよ」
かみ合わない親父やなぁ。
二人の会話を見かねて、警備の自衛官が話しに割って入ってきた。
「アメリカでの発生した時点の映像では、走ってる姿は確認されていません。軍隊の生き残りの証言からの、走るどころか、酔っ払いが必死に走ろうとするスピードより少し遅いくらいということです。
これで、少しは安心していただけましたか?いざとなれば走って逃げれますよ。」
酔っ払いが必死に走ろうとするスピードより少し遅い?どんな速さなんだよ?
その酔っ払いが、ウサイン ・ボルトやカール・ルイスだったらどうすんだよ。
普通に走る親父より早いかもしねぇじゃねえか?
べん・ジョンソンなんてドーピング!てかドーピングしたゾンビだったらやばいじゃねかよ!
「ちぃぃぃと尋ねてもいいかい?兵隊さん?酔っ払いが必死に走ろうとするスピードより少し遅いてぇのはどのくらいのスピードをアンタは想定してるんだい?」
「えっ?いや~ぁ。私は実際に映像を見てますから・・・その、なんと言うか・・・最大速度が普通に80歳位の老人の早歩き位ですかね?」
またまた、新しい基準だよ。何で時速とかで表現しないんだろう?
まぁ、走らないんだったら救いもんだわな!
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