第27話 田中一郎 おいおいどうなってんだ②
やっとこさ。物語中のリアルタイムに戻れました。
反省を踏まえて、これからはリアルタイムの中で適時話しの前号を埋めて行くようにします。
一気に展開を動きのある話しにしたいのですが…
如何せん、襲われた時のリアリティがどうしても書ききれないです。
「今までのところ、残念ながら何の成果も出ていないが…
解明出来れば、人類の不老不死すら可能になる、秘めたるウイルスじゃよ。
あなたにもわかって貰いたいものじゃな。
人類の永遠のテーマなんじゃ!」
少し遠いところを眺めているような黄昏た表情を見せる柊に、渾身のウエスタンラリアットをぶちかましたい衝動が警備の自衛官に伝わったのか?
自衛官が自動小銃のグリップを握り直した姿を視界の隅で見取った田中は寸でのところで駆け出すのを踏みとどまった。
「え・永遠って…そりゃ永遠に追いかけることが出来るからテーマとして素晴らしいんでしょうがね。
映画のゾンビみたいなのは…いかがなもんすっかね。
不老不死どころか…一歩間違ったらゾンビになりゃしませんか?
そんな危なっかしいのは、流行んないと思いますよ。」
田中の反論が意外だったと見え、柊は足を止めて
「おや、おや?『カニバリズム』を理解されておられる方の発言とは思えませんな!
『人』と言う生き物は所詮強欲な生き物なんじゃよ。
『人』は、この地球上の食物連鎖の頂点に立ち、ありとあらゆる物を手に入れてきたんじゃ。
最後に残ったものは『死』を回避する手段だけなのじゃよ。
もう、誰も『死』を怖れなくてよくなるんじゃ!
素晴らしいとは思わんかい?田中君?」
ふざけんじゃねえやい!この傲慢コンチキチンが!
「ひと…」
田中が反論をしようとした瞬間に、いきなり照明が切れ通路は真っ暗になった。
ガチャガチャと慌ただしい音が続き小さな灯りがともされた。
警護の自衛官が手持ちの懐中電灯をつけながら
「博士に2人つけ! 全員初弾装填!バーストだぞ!
新庄!前方警戒! 梨田!後方警戒!十分に注意しろ!
発砲は許可してからだ!」
「新庄、了解」
「梨田、了解」
「つきました!」
「本部!本部!こちら、警護足立班。いきなり停電したが、状況連絡と指示を願う。
柊博士は現時点では無事確保中!以上。」
「3分で自家発電に切り替わる!各個注意!」
「三宅!田中さんを博士の横までお連れしろ!」
キャサリン
停電2分前
自室に到着したキャサリン博士は、自身のパソコンに接続されていた外付けハードディスクを取り外す作業中に、パソコンに新着メールの表示が出ていることに気がついた。
ハードディスクの映像を会議室に持っていき用意しなければならないが、メールを1件確認するくらいは構わないだろう。
メールを開くとキャサリンが利用しているネットランジェリーショップからの新製品の案内であった。
身長2メートルを越す巨漢のキャサリンが唯一入手出来るランジェリーを販売しているのだ。
物心がついた頃からキャサリンは同世代の女性の2倍は大きく、お洒落どころかサイズの合う服を手に入れることすら困難であった。
家もどちらかと言えば貧乏な方であり贅沢を許されることはなく、巨漢ゆえに友達からも敬遠されてキャサリンには勉学しか友達がおらず、結果一心不乱に励み現在の地位を築き上げたのである。
しかし、どんなに科学者として立派になろうとも…キャサリンは女性としての幸せを掴むことは出来ず、唯一、誰に魅せることもないランジェリーを購入するのが生き甲斐となっていた。
本来、特殊な研究活動中であるので、インターネットとなど外部との接触は禁止されていたのだが、キャサリンには誰にも知られていない特技の一つに超一流のハッキング能力があった。
おかげで世界中にキャサリンが入れないところなどなく、暇があれば大統領のスキャンダルをもみ消すCIAの報告書などを色々なところに侵入し眺めていた。
勿論、このビルのセキュリティも赴任した3日目に突破し、ネットサーフィンなどを楽しんでいた。
キャサリンが3日もかかったセキュリティは久しぶりであったので、研究所自体のセキュリティのレベルはアメリカ合衆国の諜報機関並と言えた。
そんな、慢心があったのだろうか、普段ならば、メールに添付されたデータは自作のセキュリティソフトで検疫してから解凍するのであったが…
キャサリンが添付ファイルダブルクリックした瞬間に…キャサリン自身が検疫漏れのウイルスを検知した際に防御壁を作動させるソフトがいきなり起動した。
「えっ?……」
ダブルクリック自体を片手間で実施したキャサリンは一緒何が起こったのか把握が出来なかった。
キャサリンの防御壁はデータを持ち出させない、外部に出るデータのポートをブロックするタイプであったが……
メールに添付されていたウイルスは、愉快犯タイプのウィルスであり、キャサリンのパソコンを通し、研究所のメインサーバに侵入し、主に、設備面でのセキュリティを無効にしてしまうタイプのものであった。
館内の電源を切断し、監視カメラの監視パターンを初期化し、内部ネットワークのデータをでたらめに書き換え、電話交換機や館内無線機のデータを初期化してしまった。
研究所内では、各情報機器に設定されていたNAT機能(インターネットに接続された企業などで、一つのグローバルなIPアドレスを複数のコンピュータで共有する技術。組織内でのみ通用するIPアドレス(ローカルアドレス)と、インターネット上のアドレス(グローバルアドレス)を透過的に相互変換することにより実現する機能)を無茶苦茶なデータに書き換えられたことで、ありとあらゆるコンピュータで制御されているシステムが作動しなくなった。
「やばいわ!ばれたら・・・・責任問題ですまなくなっちゃう!停電だから、部屋から出れなかったと言えば、警備の兵隊さんが来るまでは時間があるかも・・・・」
キャサリンは、ノートパソコンのバッテリーを頼りに必死にキーボードを叩き、自分が研究所内のメインサーバにアクセスした痕跡を消しながら、外部とのインターネット接続やメール接続のログを探しては削除し続けていた。
「データが無茶苦茶になっている!いやだわ!ログがなかなか見つからない!」
須永隊
岡田博士を無事に確保した須永分隊の面々は第2格納庫の正面に到着した際に館内の停電に遭遇していた。
「各個!フラッシュライト点灯!」
隊員は各自の自動小銃に装着されていたフラッシュライトのスイッチを入れ、左右前後をまんべんなく照らしながら周囲を確認した。
「後方クリア!」(長谷部)
「左前方クリア!」(安部)
「格納庫!扉開けます!」(稲本)
「本田!稲本をカバー!突入はするな!開いて内部の確認を優先しろ!
岡田博士は私の横から離れないで下さい!」
「扉開けました!内部は・・・・今のポジションで確認出来る範囲はクリア!
どうします?隊長」
稲本は暗い格納庫の中を目を凝らしながら覗き込んでいた。
「隊長!俺が入ります!」(本田)
「駄目だ!岡田博士がいてるんだ!安全が確認出来るまで、これ以上人数が減るのはヤバイ!」
「本部!本部!・・・・・・・駄目だ!無線に反応がない。クソッ!本部の連中は何をやってやがるんだ! 誰か携帯電話もって来ているか?」
「わ・わたしのでよければ・・・」岡田がポケットから携帯電話を差し出した。
「博士、折角ですが・・・・田坂3佐か青島2尉の番号が必要なんで・・・」
「田坂3佐の電話番号は緊急用でメモリーに入れさせられたよ。使ってくれたまえ。」
「遠慮なく拝借します。」
携帯電話のメモリから田坂の電話番号を選択ながら、電波状況を確認し、心の中で毒づきながら(アンテナ1本!繋がるのか?)須永は田坂3佐に電話をかけ始めた。
本部
本部全員で館内の各部屋の在館者確認を監視カメラで行っている最中に、キャサリンのもたらしたウィルスが停電を引きおこした。
「停電だと?あおしま!!!どうなってんだ!あおしま!」
田坂が顔を真っ赤にしながら青島に叫んでいた。
「システム担当!至急原因を調べろ!
3佐!3分で自家発電に切り替わります。しばらく待ってください!」
田坂は無線に各小隊や警護班の責任者の名前を呼び続けながら
「青島!無線も反応しないぞ!」
「システム担当!無線を最優先でやれ!最優先だ!報告も急げ。」
「無線も駄目なんですか? チクショウ!メインサーバのフレーム内に問題が生じたのかも知れません!無線はしばらく駄目と思って下さい!
警備!寝てるシステム担当者の奴らも引っ張って来てくれ!1人や2人じゃ対応出来ない。」(毛利准尉)
「警備!毛利の指示にしたがえ!ここには3名だけ残して残りは全員でシステム担当者をかき集めろ!
いや!2名は柊博士とキャサリン博士の安否を確認しに行け!
無線が使えない間は・・・・・
そうだ!今日の客人用の会議室で待機させておけ、向うの警護班に引継ぎ次第安否連絡に戻れ!急げ!急げ!」
本部内は騒然とした状況に陥っていた。現在社会のシステム化の恩恵の影に隠れた致命的な欠点が、ゾンビが館内を徘徊している今露呈していまっていた。
館内のとある会議室
この会議質には70名近い柊研究所内に勤務する若手研究者が、月1回の勉強会のため集合していた。
各グループに分散し発表が終わったばかりの課題についてパネルディスカッションを始めた途端の停電である。
「きゃ〜〜〜〜あ!」
「何だ?何で停電したんだ?誰か明かり持ってないか?」
「明かりなんか持ってるかよ!携帯電話も没収されてんのに!誰かライター持ってないか?」
「ライターは駄目だ!ここの感知器は敏感だから喫煙ルーム以外での火は厳禁だぞ!」
「でも、なら、どうすんだよ!非常灯も切れてるぜ。完全に真っ暗闇じゃねえかよ!」
「3分!3分で自家発電に切り替わるから・・・じっとしといたほうがいいんじゃないか?」
「自家発電?それなら、緊急電源で館内アナウンスでその旨の連絡放送が流れるだろ?何にも流れないぞ!ヤバイことが起こっているのも知れないじゃないか?出ようぜ!」
「そうだ!そうだ!この階にはあの『感染体』がいるんじゃなかったっけ!」
「そうだ!逃げないと・・・・・喰われるかも知れない! みんな!にげるぞ! にげるんだ!!!!!」
「まて!まて! 単なる停電かも知れないじゃないか?何でも、感染体に結びつけ・・・ゲッ!」
70名の殆どが、パニック状況に陥り会議室の扉に殺到し、停電の注意をしていた古参の研究員は70名に雑踏に吹き飛ばされ、何十人もの人の足に踏みつけられいた。
通路
西脇分隊を襲い終わった感染体の一行は、当初の倍の人数に膨れ上がりどこを目指しているのか?フラフラと同じ方向に進んでいた。
一行が通り過ぎたすぐ後ろで、あわただしく扉が開きたくさんの人が押し合いへし合いであふれ出てきた。
先頭を行く女性がつまずいて転倒してしまいすぐ後ろを走る男性を巻き込んで閉まった。
暗闇の中続く人々も次々に扉付近で巻き込まれて行き、人々が冷静に状況を判断するのに数分を要した。
「誰かが、先頭の方でこけたんだ!誰か助けてやれ!おい!後ろの奴押すな!押すな!」
これだけ騒がしい状況の上、暗闇の中である。誰一人、感染体が近づいてくることなど分かるものか。
暗闇中、誰かが腕を引き上げてくれた
「サンキュー。たすかっ いてぇぇぇぇぇ・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・」
「な・何なの?何、きゃ〜触らないでよ!ぎゃあぁぁぁ〜痛いぃぃぃぃ……」
闇夜では、感染体達の夕げが始まった。
「な・なん…なんだ…どうなってるんだ?」
1人がライターを取り出し…
ポワッと火が灯され、そこには決して映画などの世界ではない、正真正銘の阿鼻叫喚の地獄絵図が浮かび上がった。
「う・うわぁぁぁあ」
驚きの叫び声も… いつしか大量の絶命に至る絶叫に掻き消されていった。
こうして、徘徊する死者たるゾンビは総勢80を超える一団となって しまった。
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