第26話 源五郎丸 拓也 5日前
連投です。
仕事の合間に……せっせと書きました。
もう少しペースを上げていくよう 努力しますのでお楽しみにして下さい。
「ゲンだ!。ホアンか?」
後ろ手に扉を閉め、しっかりと首に巻きつけられているネクタイを外しドカッとリクライニングシートに座り込み、相手の返事を待ちながら、1本の煙草に火をつけ紫煙を深々と吸い込み、身体中にニコチンの快適な刺激が廻る感触をじっくりと味わっていた。
「久し振りだな、マイブラザー。激務に後の一服の時間はもういいかい?
警察を辞めても相変わらずだな。特に2匹のドラ猫を飼いならすとはすごいじゃないか!どんな手口を使ったんだ?」
「ホアン。娘さんは・・・リーシェちゃんは気の毒に思う。しかし、だからと言って感染体を日本国内に連れてくるのはいかがなものかな?」
「リーシェ?ああ、あのベトナムの娘か?かわいがってやったのに変な病気で入院しやがったんだぜ。おかげでFBIでの稼ぎも何もあったもんじゃねぇや。
金がかかりすぎて・・・・ワイフはいかがわしい店での仕事まで考え始めやがるし、蔵前 翁に出合ってからやっと俺にも運が回って来たんだ。もう入院費も気にしなくていいしな。
おっと!昔話しのために電話したんじゃないんだがな。
九州の柊 博士の研究施設に、例のモノを運びこむ予定なんだが・・
・・やはり日本国内ではおおっぴらに銃器を担いでの警護は難しいし、偏屈な柊 博士の許可も大変なもんで・・・・
何かあったら、困るだろう?蔵前 翁のルートで政治屋を脅してもよかったんだが、やはり信頼できる相手と組まないとな。
その点、ゲンなら安心だよ。
既に、頼みもしないのに自衛隊の選りすぐりを集めて対策を考えてくれてるんだからな!
柊 博士の手前もあるから、指揮権はそちらに譲ってもかまわないぜ。条件とは言えないが博士および研究所でのデータについては、日本も共有してかまわない。
但し、データは常に2日遅れとさせていただくがね。
そうそう、俺のことはゲンが一番知っているから・・・・
2日間の間にサーバのデータを廃棄したりウィルスを仕込んだりしないのは分かってもらえるかな?
情報戦略で2日間は大きいからね。さすがのゲンでも取り返すのは厳しいだろうね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「返事がないところをみたら、OKと判断してかまわないのかな?
では13時に六本木の『ダウト』に僕の代理人を向かわせるから詳細は彼から確認してくれ。
一応、彼は現在の僕の右腕なんでね。まぁ、ゲンの7割程度の力かな?」
「ホアン。貴様が出て来いよ。代理とは話しは出来ないぜ。」
「駄目、駄目。ドラ猫ちゃん達に僕を襲わせるつもりだろう?無駄死にするつもりはないからね。
それに、こちら側もそれなりに助っ人を用意してあるんでね。
ドラ猫に対抗しないといけないんで、それなりのチームを用意したんだぜ。」
聞きながら、源五郎丸の頭の中では目まぐるしく動いていた。待ち合わせの状況に対する数種類の対応策、dangerous twinsに対抗出来そうなチーム編成の傭兵等のチームのうち最近動きの少ないものや居場所の把握できないものなど・・・・・
「ニムロド(ヘブライ語で『我々は反逆する』)。西側ではニムロッドの方が通り名としてはいいかな?」
新たに咥えた煙草が、静かに唇から離れて床に落ちることに気がつかずに、ホアンの発したチーム名を何度も頭の中で繰り返した。
「な・なんで・・・・なんで、よりによってニムロドなんてチームと組んでるんだ!!
お前は、そこまで腐っちまったのか?おい!ホアン!何とか言いやがれ!」
ニムロド:その手段を選ばない作戦行動で作戦成功率は100%であるが、同時に作戦対象外の人物の殺害や建物の爆破、人質や拉致した対象者への性虐待や拷問などなど、傭兵の世界でも一番の嫌わ者部隊であった。ただ狂ったように汚れることにのみ快感を得る狂気のチームであった。
特に、その残忍なチーム気質は2年前のロシアマフィアとの麻薬販売ルートの奪い合いで発揮された。
その手法は、何の関係もない地方のロシア人の赤子を誘拐し、マフィア幹部数十人の自宅前に捨て子を装い、その実、赤子の体内に液体爆薬を仕込んだ、赤子人体爆弾であった。液体爆弾の開発や実験、そして犯行の実施までに及んだ犠牲者の赤子は数百人にのぼるといわれている。
そして、その作戦以降、世界中の傭兵チームを敵にまわす結果となり、来る日も来る日も追いかけまわされ、チーム員は半数以下の4名になってしまっていた。しかし、その4名自体がニムロドの中心の兵士であり、4人になって以降、1年2ヶ月の間に13の傭兵チームを返り討ちにしていた。
「ゲン!何を言っているんだ?散々教えただろう?
作戦行動には、最適なユニットを選出し上手に使いこなさなければいけないんだ。
今回、君の手駒のdangerous twinsに対抗できるチームを選択した場合には彼らしかいなかったんだよ。
丁度、彼らは逃亡に疲れきっていて・・・・楽になりたい。でも普通に死ぬだけでは嫌だ。最強の敵と殺りあいたい。と切望していたんだ。
成功の暁には、永遠の『生』しかも、彼らが望んでいた。最も汚れた『生』につながる『死』を約束しているんだ。
そう・・・成功の報酬はゾンビなのさ。4人とも目の色を変えているよ。
ドラ猫には十分に注意させたほうがいいんじゃないか?」
「ホアン!本当に、性根まで腐っちまったのか?日本国内でニムロドが活動してみろ、死者の数は数百ではすまないぞ!
何でだ!何故、そこまでするんだ?そんなことでリーシェちゃんが喜ぶと思っているのか?ホアン!!!!!」
「黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!リーシェが何故原因不明の病気になったのか教えて欲しいか?
俺たち夫婦が引き取る前の話しだが、リーシェの住む町に日本の企業が工場進出したんだ!
大手企業に海外生産に切り替えらそうだとかで、起死回生に工場進出だったそうだ。
利益!利益!利益!で、工場の廃液はそのまま川に流され続けた。
その化学物質の影響でリーシェはリーシェは・・・・・
興奮してすまなかった。
その工場は既に閉鎖・取り壊しされている上に会社自体も倒産しており、何の化学薬品がどのような調合で利用されていたかも窺い知れないんだ。
もう・・・もう・・・リーシェが目覚める可能性は、翁が求めている。薬にしか、望みがないんだ。
もう一度だけ言っておく、明日13時『ダウト』だ!
ドラ猫の姿が少しでも見えたら、ニムロドをフル装備で六本木の街に突撃させるからな・・・・・
こなければ、柊博士はあきらめて地下に潜っての研究になる。分かるな!危険は数十倍に跳ね上がるぞ。」
「分かった。dangerous twinsは動かさないから・・・早まった事はしないでくれ。
なぁ、ホアン。今なら引き返せるぞ?
力になるから戻ってこれないのか?」
「俺は、この世で2人の人間しか信じない、ワイフと『ワンさん』だけだ。知っているだろう?ゲンには背中は任せられるが、ゲンの前では熟睡は出来ないんだ・・・・」
プツリと電話は切られた。
やるせない気持ちを抱いたまま、今の会話を伊集院に報告に行く源五郎丸の後ろ姿は、必死に涙をこらえている寂しいものだった。
「田中一郎かぁ……」
(会議で一度しか会っていないが、不思議なタイプの人間だったな。媚びてるようで、眼は絶対に媚びないと語っていたな…
的確な判断とそれに見合わない突飛な行動。しかし全ては…最後には何故だか辻褄が合う。
この報告書に間違いがないのであれば、彼はこの事態を乗り切りる。切り札になるのか?
しかし、何故?
源五郎丸が調べているにも係わらず、中学からの記録しかないんだ?
戸籍上、両親は1975年に死亡となっているが…
死亡の理由などの調べがつかない。
これだけ、一定期間とは言えども完璧に消息を絶つ方法に検討がつかない。
と、源五郎丸が最後に備忘を残した資料は初めてだな。
託してみるか!)
伊集院が腹を決めた瞬間に、扉が開かれた。
そこには、初めて見る憔悴しきった姿の源五郎丸が居た。
それから、ヒトミとアスカが呼ばれ、延々と長い打ち合わせが行われ、終わった時点で、どんよりした冬の太陽が都市を照らし出していた。
「やっぱり!冬だわ。寒いね。アスカ。
ほら、息がしろ〜い!」
そこ、ジャパンテレコムの屋上には、伊集院と源五郎丸との打ち合わせを終えた、ヒトミとアスカが朝日に向かい背伸びをしていた。
「ヒトミ。さっきの室長の話し?がしたいわけ?
私も、流石にニムロド相手の闘いに姉妹喧嘩のままは突入出来ないわよ」
「OK!じゃ仲直りね!」
ヒトミはいきなりアスカに飛びつき、しっかりとアスカを抱きしめた。
(てか…そもそもイスラエルに行く前日に、限定販売のプリンを1個、勝手に食べただけで、姉さんが怒り出したんじゃん。
5個もあったくせにさ。
で、イスラエルの作戦中に思い出して……
散々だったじゃん。
止めに入るモサドのメンバーを20人以上病院送りしたのも…
怒りに任せて、テロ組織を皆殺しにしたのも…
ぜ〜んぶ、あんたなのに!
いっつも、二人揃っての呼び名 dangerous twins。
しかもあんたは一応 angelだけど私なんかDevilだかんね!
まぁ、世界で唯一の肉親だし……
私が我慢すればいいんでしょ!
ねえさん!)
アスカもヒトミを優しく抱きしめて、めでたく数年来の姉妹喧嘩は終結した。
しかし、恐ろしいのは女性のおやつに対する執着である。
たかがプリンで…イスラエルの諜報機関が大打撃を食らったのである。
くわばら くわばら
次回 予告
田中さん かみんぐす〜ん
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