第22話 伊集院 剛 6日前 ④
なかなか 更新が出来ずに申し訳ありません。
どんどん話しが深みにはまって行きそうで……
自分でも困ってます。
気長にお付き合い下さい。
「現時点で、この件に関しては我々が最も詳しい状況にある。
悲しいかな、政府や国の情報機関をひっくるめて僅かにここにいる8名………と官房長官の9名。
いや、正確に言えば源五郎丸君の部下で何名かいるが……
アメリカがあてにならない上に、国内でもこれ以上情報が拡大したら、対策をうつどころか、対策すると言う選択肢を説明し納得させるのに、必用以上のパワーを裂くことになる。」
伊集院は、全員が話しの内容を整理出来たかを探るように見渡した。
「ECや中国、ロシアはどうなんですか?」
裏の世界で名だたる、イギリスやロシア、ましてや中国が掴んでいないはずがないと確信を持って、西郷が尋ねた。
源五郎丸がパソコンを操作しながら
「画面を見ていただけますか。」
画面には、現時点での情報の相関図が記されていた。
「なるほど、日米は関係者と言える者達で、噂をEC圏とロシア、中国、北朝鮮、韓国が嗅ぎ回っておるんじゃな。
若干イギリスがリードといったところか……
しかし、世界最大手のロイズ保険とEC最大手の製薬会社のユニバーサル・サイエンスケミカル?は何故なんじゃ?」
野口が目を細めて画面を見ながら質問をすると、画面が切り替わった。
「ほ、ほうー。
ロイズのタウンゼントの馬鹿者が、蔵前翁を巻き込んだのじゃな!そんなことをしても、あの油田事故は…後数ヶ月は治まらんじゃろ。蔵前翁が介入したとしてもタウンゼントは破産しかないじゃろうに。
はて?流石の半蔵もユニバーサル・サイエンスケミカルはお手上げかのぉ?」
納得した顔で、野口は源五郎丸をに顔を向けた。
「はい。残念ながら………」
源五郎丸は首をすくめて降参のポーズをとった。
「確か、この製薬会社には、ドイツ連邦情報局(BND)の元長官のゲルト・マイア−君がおらんかったかのぉ?
半蔵にとっては、今の自分があるのもマイアー君のお陰じゃしな。
恩師の方が一枚上かのぉ?」
顔と声は笑っているが、眼光だけは鋭く画面から離さずに野口は言った。
「はい。今回ばかりは分が悪いです。
この時点でのマイアーの介入もさることながら………」
源五郎丸が言葉に詰まった。
「これ以上、悪いことなんて、そうはないように思いますよ……先輩」
西郷が気をつかい源五郎丸に声をかけた。
「源五郎丸君が話し辛いことみたいなので、俺から説明しよう。
野口さんみたいに、源五郎丸君の公僕時代を知っているわけではないので詳細なところは省かせてもらうが、元々、蔵前翁の『蘇り』や『不老不死』については、かなり怪しげな研究者や団体に資金が流れていたそうだ。本来、会社とは完全に無関係なことなんだが……まぁ、俺の親族と言うことや財界・政界への影響力が高いと言うこともあり、蔵前翁が暴走しないように、源五郎丸君の判断で密かに監視および適当な妨害を行っていたらしいんだ。
ここ2年に渡る妨害だったが、流石に素人の翁も気がつき始めたらしく。それなりに対策をうってきたらしいが所詮は素人。源五郎丸君の方で騙された不利をしながらも、ポイント、ポイントで妨害を続けたらしい。
しかし、4ヶ月前から状況が一変した……
妨害工作が頻繁に裏をかかれる様になり、とうとう先月、一番阻止したかったキャサリン・バース博士の加入を許してしまったんだ。
その頃にやっと、翁の側についた軍師が判明した。
名前はホアン・チャン。アメリカ国籍のベトナム系中国人だ。」
「ホアン・チャン!?ホアン?……あっ………!
半蔵の兄弟子じゃったホアンか?
そうそう、ベトナムからの難民ながら、ハーバードからFBIに入って、マイアー君のところに研修で来ておった!彼かぁ。
そりゃ、半蔵も分が悪いわのぉ。」
野口はさも面白そうに続けた。
「ホアン君と半蔵は確か、2つ違いじゃったかのぉ。半蔵。お前は幾つになった。」
「37です。それと、自分には拓也と言う親から貰った立派な名前があるんですが………。いい加減に半蔵は止めて貰えないもんでしょうか。」
無駄だとは思いながらも、苦笑しながら源五郎丸が野口に頼みこんだ。
「だめじゃな。単なる情報屋なら本名で読んでやってもいいが……
あの事件以来のお前さんはまさしく、服部半蔵気取りじゃからのぉ。
まぁ、気持ちは分からんでもないが……
いまだに、さっきの嬢ちゃんみたいな別嬪さんを手元に置いているようじゃのぉ」
意味ありげに源五郎丸の願いは一笑にふされた。
「脱線してしまったのぉ。マイアー君から聞いた話しじゃ、二人は彼の弟子の中でも最上位だそうじゃ。
『静のホアン』に『動のゲン』
二人で、マイアー君がてこずってたネオナチ一番の過激派グループのラインハルト一派を殲滅して、ネオナチを壊滅状態にしたんじゃからのぉ。
半蔵にとっては、実の兄以上の存在じゃったからのぉ。
はて?何故、ホアン君が蔵前翁の元にいとるんじゃ?」
「ホアンは……
結婚したんですが、子供には恵まれませんでした。どうも、原因は彼の難民時代にあったようで……結局、里親として3人の子供を引き取って育てていたんです。
1年程前に、長女のリーシェちゃんが原因不明の病気で倒れ、3ヶ月後に意識不明の植物状態になったんです。
しかも、入院していた病院は偶然にも翁の配下の病院でした。
もちろん、この病院も翁の大事な研究施設の一つでした。
本当の理由はわかりません。
膨大な医療費に困っていたホアンを翁が引き入れたと見るのが最も落ち着きますが……
俺のカンでは、翁の蘇りや不老不死の研究結果で自分の娘を助けようとして、翁を利用してるんだと思います。金だけで、ホアンがFBIを捨てるとは思えないですからね。」
残念そうに声を絞り出して源五郎丸は答えた。
「すみません!段々と話しがズレて行ってるような気がするんですが……伊集院さんには何か『策』があって、我々を集めたんではないんですか?さっさと、本題に入っていただけませんか?
それ次第では、僕は僕なりに判断しないと行けないことがありますんで。」
上岡が、ピシャリと言い放った。
「そうだな。あらかたの登場人物もできったみたいだからそろそろ本題に行こうか。
源五郎丸君、例のスライドの用意をしておいてくれ。」
「さて、問題をはっきりさせようじゃないか。
1・2日以内に『ゾンビ』が福岡市内に運びこまれる。しかし、現時点では誰にも止める手立てがない」
「ちょ・ちょと待って下さい。
未知の病原体を国内に持ち込むんだから、何らかの法律なりで、規制が出来るでしょ?」
上岡が異議を唱えた。
「通常の相手ならな。
しかし今回の相手は、あの蔵前翁だぞ。しかも、ブレーンのホアンはアメリカの情報機関さえ、手玉に取る強者だ。
翁は既に大統領に脅しをかけているんだ。
どういうことか分かるかな?」
上岡が困った顔をして、西郷や野口に助けを求めるように視線を投げた。
「そこのところは私が説明した方がいいみたいですね。」
姫山が会話に割って入ってきた。
「アメリカ軍は、陸・海・空軍に海兵隊・沿岸警備隊と5軍編成になってます。その中でも海兵隊は、海外での武力行使を前提とし、緊急展開部隊として行動し大統領の勅命で作戦行動を行うことが出来る上に、議会にも事後承諾でいいんです。」
(数年前までの定説でだったようですが…誤訳であると言うのが現在の見解だそうです、物語的に都合が良いので…利用しました。)
「つまり、大統領は海兵隊なら自由に派遣出来ると言う訳ですか?」
上岡が、そんな馬鹿な!という顔をしながら続けた。
「まるで、大統領個人の軍隊みたいじゃないですか!」
「まぁまぁ、上岡知事。そうカリカリされんで下さい。
法的な解釈などはさて置いて、事実、アメリカ軍の海兵隊ルートで日本に向かっているんです。
先ほど、私のところへアメリカ軍司令官が嫌みの連絡があったと話しが出てたでしょ!?
軍司令官の頭越しに大統領から海兵隊に指示が出てて、海兵隊も大統領名を笠に着てやりたい放題の無理難題を空軍・海軍の輸送部隊に押し付けてるみたいです。
少なくとも、海・空で延べ20程のカモフラージュした輸送作戦が繰り広げられています。
先ほど、源五郎丸君とも検討したんですが、急に明後日に呉にブルーリッジ(揚陸指揮艦・第7艦隊旗艦)が表敬寄港すのですが、我々の認識ではブルーリッジは沖縄沖で訓練作戦中だったはずなのです。
本土から空軍機でフィリピンに、そこからは、海軍か海兵隊の輸送機か大型ヘリで沖縄に、そこでブルーリッジへと思われます。途中で福岡にヘリで運び込むつもりのようです。」
何かを言いたそうにしている、上岡を手で制止ながら、姫山は源五郎丸に目配せをした。
画面は切り替わり、左反面に簡単な組織図、右反面に九州と沖縄の地図が表示された。
「検討している案はこの通りです。 基本的に、米海兵隊に主導権を渡さずに、自衛隊を中心に警備体制を取ります。
幸いに、九州には対「北」の部隊として、西部方面普通科連隊(WAiR)や津島警備隊が駐屯しています。
自衛隊内では、レンジャー資格保有者の多い部隊ですが、流石に米軍のデルタみたいにはいかないでしょうが、今回は起こり得る事態が事前に予測出来るので万全の体制を敷くことが可能かと考えています。
手薄になった場所と、中国や北朝鮮には、第7艦隊の緊急演出か何かの口実で展開させて牽制します。
遅からず、中国や北朝鮮も情報を掴むことでしょうし……」
姫山は言い終わり、質問を待った。
「柊研究所に駐在する自衛隊の数ですが2個小隊と記載されてますが、何名位なんですか?」
「今回は任務の特殊性から、1班7名。1分隊が2班で14名。1小隊を4分隊で56名で編成します。
2個小隊ですので、112名。これに、特殊作戦群の第3科(作戦立案、部隊運用)より管理部隊として1分隊、14名。合計126名です。
この内、警備や実戦には西部方面普通科連隊の隊員を中心とした6分隊(86名)が24時間体制で研究所内を警備します。」
「なるほど。で、私が呼ばれた理由が分からないのですが、警察は何をすればいいんですか?」
西郷が、困惑気味に質問をした。
「西郷は、福岡県警の前の所属は、警視庁のSAT(警視庁特殊部隊)の管理官だったな」
源五郎丸の質問に『ハッ』とし西郷は、伊集院と源五郎丸の顔を交互に見つめた。
「福岡県内でのSATの出動の場合は、本部長の指揮下に入る。という事を言いたいんですね。
ついでの、福岡の1班だけでは物足らないので警視庁のSATからも応援させろという事ですか?」
「せいか〜い!。流石は西郷くん。SATと2班と銃器対策課、機動隊で警察としての緊急部隊を組織してほしいんだ。」
源五郎丸はPCを操作し、次の画面を写しだした。
「SAT2班と銃器対策課と機動隊で、この範囲を警備ですか?
九州管区の機動隊総員でも400名(連隊規模)です。
県警本部の第1機動隊の総員135名では全然足りませんよ。
交替勤務のことも考えないといけませんし
警視庁のSATからも、どうやって1班を福岡に連れてくるんですか?
それより、警察はかまいませんが。
平時に自衛官が武装して県内で活動する事についてはどうするんですか?下手すると、野党の星野さんあたりが騒ぎ出しかねませんよ?」
「警察庁、警視庁、国家公安委員会は僕たちに任せてもらえればいい。
僕も、元警察庁長官だし、今の、長官や警視総監、国家公安委員長も全員伊集院派だから、問題はないよ。」
姫山は任せろと言わんばかりにグッと立てた親指を突き出した。
「自衛隊の武装での警備については、『治安出動』と『国民保護等派遣』で行くつもりだ。」
伊集院が全員に言い切った。
「『治安出動!』・・・・・・
それがどれほどの意味を持つのか分かっているのじゃろうな?
伊集院君!大変な決断じゃぞい!」
凛として野口の言葉が室内に響いた。
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