第13話 西脇分隊 福永組
なかなか、主人公の再登場までたどり着いないです。
皮肉なことに、西脇に反抗した福永と3名は、本体より離れて行動させられていたために、曲がり角まで後10メートルのところで、立ち尽くしていた。
その時に、青島からコード・レッドの無線が入ったのだ。
「こちら、福永1曹。既にゾンビと遭遇。隊長以下8名が殺られました。」
「!!!! 青島だ!直ぐに斉藤分隊を向かわす。10分いや6分持ちこたえれるか?」
(わかんねえよ!事件は現場で起きてんだが……現場は曲がり角の先なんだ!)
「こちら、福永。こちらは4名です。一列横隊で退却しながら弾幕を張るしかないです。1分でも早く頼みます。」
吹き出る汗を袖口で拭い
「酒井!木村!矢野!覚悟決めろよ!。
俺と酒井。
木村と矢野がバディで行く。
リロードは声を掛け合え!」
一歩・一歩後方に下がりMP5を構えながら、福永は怒鳴った。
(良子、明美、元気でな。良子、明美をたのんだぜ!)
「こちら、斉藤。状況は把握した。
竹原と数名を先に向かわせる。
残りは装備をM870に替えて駆けつけるから、何とか持ちこたえろ。」
「こちら、須永。我々はメディカルルーム方向から撹乱に出る。
福永。すまん!我々が気づけば良かったんだが…」
「了解!今から交戦に入ります。」
曲がり角の床に人影が見え、そして、ゾンビが現れた。
(今の時点で曲がり角から約20メートル強か!?
もう少し距離をとるべきなのか?
引きつけて狙うべきなのか?
クソッ!戦術訓練じゃ習ってねえことばっかりじゃねえかよ!
てか…ゾンビと戦う想定の訓練なんてなかったわな。)
「俺と木村が撃つ!酒井と矢野はそれぞれのバックアップ位置につけ!
いいか!お互いに干渉しない程度に距離を置くからな、少し離れるぞ」
福永は指示をだしながら、更に後方に開きながら動き始めた。
曲がり角から距離にして25メートル。
「撃てぇ」
言いながら、福永はMP5の引き金を引いた。
タンタンタン!3発の弾丸が銃口から飛び出し、ゾンビに当たり、当たった数だけゾンビが仰け反った。
(クソッ!簡単に頭にゃ当たんねえなぁ)
よく狙ったつもりだが、弾丸は肩付近に当たっただけだった。
横目で見た限り、木村も頭には当てられなかったみたいだ。
第2射を躊躇していると、次々にゾンビが曲がり角から現れた。
鈴元からの報告の通り現れたゾンビは、つい数分前には仲間だった奴らである。
「わあぁぁぁぁぁぁあ」と叫びながら木村がフル オートでMP5を打ち始めた。
仲間がゾンビとなって現れたのに耐えれなかったようだ。
MP5は1分間に800発も撃てるマシンガンである。
数秒で30発の弾倉は空になった。
「リロード!」と叫ぶことも忘れて、空になった弾倉を外し、新しい弾倉をセットし、初弾をコッキングした。
木村がリロードしているのを見て、思い出したように矢野が木村の前に出て、射撃をする。
矢野はフルオートで狙いも付けずに、闇雲に撃っている。
2人が撃ち終えた60発で、偶然に頭にあたって、永遠の“死”を迎えたのは、僅かに1体だった。
頭に当たらないことで、木村と矢野は焦り、あろうことか、ゾンビに近づいて撃とうとしゾンビ目掛けて駆け寄って行った。
せっかく、リロードの隙に発生する無防備な時間帯に対する安全を考えて確保した距離が一気に失われていく。
「木村っ!矢野っ!駄目だ!距離を取れ!近づいちゃ駄目だっ!」
言いながら福永はゾンビに向かい引き金を引いた。
しかし、完全に我を忘れた2人は、5メートルという近距離まで接近していた。
(ヤバいぞ!近すぎる)
福永は走り出していた。釣られように酒井も走り出した。
木村と矢野は撃ち始めた。
興奮している2人は、頭を狙うことを忘れ、腹を中心にした上半身に弾をバラまいていた。
弾が当たる度にゾンビは仰け反り、動きは止まるが直ぐに両手を前に突き出し、餌となる人間を掴もうと、ヨロヨロと歩き出した。
「カチッ」と音が鳴り2人の弾倉が空になった瞬間にゾンビが襲いかかってきた。
先頭にいた矢野が腕を掴まれ、必死に抵抗していた。
木村は、寸でのところでゾンビの手を回避し、数歩だけ下がったが、あっという間にゾンビに囲まれた。
「な・なんて……力だ!」
抵抗していた矢野はゾンビの圧倒的な力に徐々に不利な形勢になっていった。
福永は、木村と矢野を見比べた。
どう見ても矢野は手遅れだった。
その横を酒井が走り抜けあろうことか、木村を取り囲もうとする3体のゾンビに、ドロップキックを放った。
2体のゾンビが吹っ飛んだ瞬間に、福永のMP5がもう1体のゾンビの額を撃ち抜いた。
(流石にこんだけ近いて当たるなぁ。しかし、数が多すぎる。)
酒井は素早く起き上がり、近寄ってきたゾンビに回し蹴りを浴びせ、木村ともに、福永に向かい合って駆け出した。
ゾンビが1体、腕を伸ばしてきたが、ギリギリのところでかわした2人は福永の横を猛スピードで駆け抜けていった。
福永も、負けじと2人を追いかけるため、走り出した。
福永の背中から、矢野の絶叫が聞こえた。
(すまん!矢野、許してくれ。)
必死に逃げ、バイオハザードエリアの入り口で、休憩を取る事にした。
直ぐに、助けが来るだろう。
「何か……身体が凄く痒いんっすけど?」
入り口を開けた時に、木村が言い出した。
「どこだ?」福永が近寄ると
「特に、首の後ろが……ずがえだざあか……」
木村が突然に狂ったような口調なりガタガタと震え出した。
木村は、そのまま床に倒れ込み体中をかきむしりながら、額を信じれないほど強く床にぶつけ始めた。
「木村さん!」
酒井が駆け寄ろうとしたところを、福永が制した。
「見ろよ。首の後ろ。」
福永が寂しそうに言った。
「??…………あれって!!」
首の後ろが腐り始めているようだ。
「どうやら、噛まれる以外でも……傷つけられたら感染するのかも知れないな。」
福永は静かにMP5を構えた。
「でも……まだ生きてます。さっき………噛まれた連中は直ぐにゾンビになったじゃないですか?
俺達たっぷり3分は走りましたよ?」
福永は、ピタリと照準を合わせながら
「高校すらギリギリの俺にわかるはずないだろう!
その高校だってもう30年も前なんだぞ。お前の方がこの間まで現役じゃないか。」
言い争っている内に、木村はピクリとも動かなくなった。
「福永さん?動かなくなりましたよ。どうしましょう?」
酒井はオロオロとしている。
「お前なぁ……ゾンビにドロップキックするくせに、オタオタすんなよ!先ずはだな……………いきなり起き上がって教わればたらかなわんから、仰向けにするか?」
「触るんですか?」
「この際だから、木村にゃ悪いが……よっっっと!」
福永は、足の甲を使い器用に木村をひっくり返した。
「福永さん、亀じゃないんすから……あんまり意味なくないっすか?
しかも、顔を見えてたら撃ちにくくないっすか?」
「なら、お前が考えろよ。文句ばっかで汚ねえぞ」
「えーーーっ」
と言いながら、酒井はMP5の銃口で木村を突っついていた。
突然、木村の目が開いた。
白濁した目で、酒井を見つめながら、いきなり銃口を掴んだ。
「でたぁぁぁぁぁ!」
思わず酒井はMP5を手放し、やおら、木村の頭にローキックを浴びせた。
長靴が10センチ程頭にめり込んでいる。無論、さすがのゾンビも即死した様子だった。
福永はMP5を構えまま、固まっていた。
「お前……えげつない殺りかたすんなぁ。てか、自衛官なら武器を使えよ」
「すんません。自分、実家が実践空手の極道会なんで、身体が勝手に反応するんっす。普段や訓練ではは反応しないんっすけど……」
頭をかきながら首をすくめる酒井だった。
「まぁ、素手でゾンビを殺っちまうんだから、お前が最強かもな……。
さぁ、竹原さん達に合流するぞ」
福永は酒井とともに走り出した。
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