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第10話

2500アクセスを超えました。頑張りますので楽しみにして下さい。

増援部隊


「隊長、やはりこのエリアでの無線連絡は無理みたいですね。」


分隊の副隊長である竹原曹長はレシーバを指で弾き、振り返りながら斎藤2尉に話しかけた。


「まぁ、俺たちの任務は最悪でも、適当に弾をばら撒いてゾンビを足止めするだけだしな。そう緊張する必要はないんじゃないか?」


「ゾンビの突然変異で、ICカードを使いこなして待ち伏せされてたらどうします?隊長?」


笑いながら竹原は、隣の隊員に噛み付く真似をしていた。


斎藤2尉は、悪ふざけしている曹長を困った顔でみながら、かと言って強く注意も出来ずにいた。

竹原曹長に釣られて、残りの7名も緊張感なくふざけあっていた。


斎藤は、元々生真面目な事務屋だった。

その事務屋が2尉という階級で現場の分隊長である。


誰の目から見ても、何がしの失敗をやらかし左遷されたことは明白である。

だから、分隊内での人望はない。更には実戦訓練の成績は分隊内で最下位である。

殆どの部下は陰口を言っていた。

それを竹原が補い、庇ってくれている。


異動になってからは飲めない酒にも手を出し、段々と自暴自棄になりかけていた時に、竹原曹長が現れた。


竹原は俗に言う問題児だった。


レンジャーの資格を持ち、自衛官としての能力は高いのだが、強調性がなかった。

特に上官への反抗で何度も処分対象になっていたのである。


その竹原が言ったのである。


「聞いたぜ!○○○基地の司令官の馬鹿娘にストーカーされてたんだって?

心配しなくていいぜ。その基地には連れがいてるんでな。

他の隊員には箝口令らしいな。

相手が悪かったな、あの司令は娘『命』だかんな」


訴えても誰も信じてくれなかった話しだった。


その日から斎藤は竹原と行動を共にするようになり、そのうち自分の分隊の副長として引きずり込んだ。

(もちろん竹原が所属していた分隊長は、小躍りして竹原を譲ったことは言うまでもない。)


斎藤は分隊が機能し始め、竹原は階級をかざす上司から開放された。

それ以降、中隊内では「奇妙なコンビ」の分隊といわれながらも、絶妙な指揮系統で中隊内での立場を築いていた。


ただ、竹原の悪ふざけだけになかなか慣れない斎藤だった。


「ガッ…ガッ…こちら田坂。ガ…斎藤分隊か西脇分隊 どうぞ」


雑音が混じりながらも無線が通じるエリアにさしかかったようだった。


「こちら 斎藤。電波状況が少し悪いが聞こえてます。どうぞ」


本部と会話が始まった瞬間に分隊内の悪ふざけはピタっと止まっていた。

「こちら本部、青島2尉。3佐から引き継ぎます。

作戦行動を修正する予定。

斎藤分隊、装備の確認をどうぞ」


後少しと言うところでかよ!と心の中で毒づきながら……


「こちら竹原。2尉より引き継ぎ。

分隊の装備は、当初の指示通り。

MP5

P226

以外は通常の警戒装備(特殊警棒・コンバットナイフ・スタングレネード)どうぞ」


「こちら、青島 了解。89、またはM870所持者無しだな!どうぞ」


「こちら、斎藤。指示はMP5・P226と聞いている。何故、ショットガンや自動小銃なんだ?どうぞ」


「こちら、青島。

須永分隊の、鈴元、松下か死亡またはゾンビ化。

挟撃作戦から突入作戦へ変更の予定。どうぞ」


「こちら、斎藤。了解。指示を乞う。オーバー」

斎藤は答えながら、竹原を見つめた。


「隊長!ヤバいぜ。状況はわからんが…鈴元や松下が手に負えない奴らなら、覚悟はしないといけないぜ」


答えた竹原を含む全員が……ゴクリと唾を飲み込んだ。


「こちら、西脇。青島2尉 どうぞ」


「こちら、青島。西脇分隊の装備も どうぞ。」

「こちら、西脇。提案あり。

うちは斎藤分隊や須永分隊より人数が多く、レンジャーがいない。

突入には不向き、後方支援を希望する。どうぞ」


自衛官と言うよりエリートサラリーマン然とした西脇ならではの判断と提案である。

確かに、西脇分隊にはレンジャー資格保有者がおらず、一番不向きな分隊である。


「キッタネェ!」

と分隊の1人が手を壁に叩きつけた。

その隊員も、自分の分隊(斎藤分隊)が一番適していることがわかっているのだった。


「こちら、田坂だ。西脇2尉の提案を受けることにする。

斎藤分隊は装備変更に向かい。

西脇分隊はメディカルルームに向かえ。

西脇2尉!処分は免れないからな!どうぞ」


「こちら、斎藤。了解。直ちに装備変更に向かいます。」


言い終えない内に、竹原が全員を鼓舞した。


「任務達成で俺たちゃ、エース分隊だぜ!やるぜ!」

斎藤分隊9名は、回れ右し駆け足で装備庫に向かった。

途中、すれ違った西脇分隊の隊員は……うつむき誰1人、斎藤分隊に顔向け出来る者はいなかった。



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