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美脚ミミック、ハルミさん ~転生モンスター異世界成り上がり伝説~  作者: 藤孝剛志
2章 闇の森

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第27話 モンスター使い

 冒険者ギルドを出て、モンスター使いが住んでいるという家へと向かことになった。

 日が暮れつつある街の中を、スアマちゃんと並んでとことこと歩いていく。

 乗せてあげてもいいんだけど、たいした距離でもないし、街中だと余計に目立つのでやめておこうということになったのだ。


「でも、改宗するだけで冒険者になれるというのは、得られるメリットのわりにはお手軽すぎるような気もしますね」

「でも、もう普通の生活はできなくなっちゃうから、それをデメリットに感じる人間も多いんじゃない?」


 冒険者は様々な掟に縛られている。その中には冒険や戦いを強制されるものもあったりするので、平和に暮らすことは二度とできなくなってしまうのだ。


「ま、簡単になれるとしても、だいたいはすぐに死んじゃうんだろうね。で、使い物になる奴だけが冒険者として生きていけるようになるってことかな」


 そのあたりはモンスターと一緒だ。レベルの低い奴は使い捨て感覚でガンガンと戦いに放り込んでいって、生き残ればそれでよしって方法なんだろう。

 で、金やら地位やらがあればガイド付きで手厚く守られながら冒険することもできるって感じか。

 ああ、世知辛い。


「で、勘違いしないでね。私たちは冒険者をするつもりはないよ。これは人間社会に紛れ込むための偽装なんだから」


 スアマちゃんがちょっと浮かれてる感じだったので、一応釘を刺しておく。

 スアマちゃんに冒険者として実績を積んでもらうつもりなんてまるでないのだ。

 モンスター使いに話を聞くのも、偽装をより完璧にするためにすぎないしね。


「私の目的の一つは、冒険者を殺してレベルを上げること。スアマちゃんもそれに荷担するってことを忘れないで。そう、スアマちゃんは、ミミックの甘言に誘われて闇落ちしてしまったのだ! 闇の軍勢の一員になっちゃったのだよ!」


 総数二名の闇の軍勢だけどな!


「はい……覚悟はできています」


 まあ、目的地に着いたらスアマちゃんは解放してもいいんだけどね。

 とりあえずは人間の仲間がいたら中央大陸を旅するのが楽かなって程度のことであって、北の大陸まで連れていく意味はまるでないし。

 そんな話をしながら歩いていると、すぐにモンスター使いのドルホイさんちに到着した。


「村長さんのお屋敷より立派ですねー」


 こじゃれた感じの屋敷だった。

 なんでも、冒険者というのはたいていその日暮らしで転々としているらしく、定住しているのは珍しいらしい。

 まあ、金がないってのが主な原因なんだろうけどね。この屋敷の主は銀級の冒険者で、例外的に人生上がりってぐらい金を稼いじゃったらしいのだ。

 庭を通って玄関へ。

 スアマちゃんがノッカーを叩くと、すぐにドアが開かれた。

 出てきたのはメイドさんだ。

 けど、妙に背が高い。不思議に思って足下を見てみると、蛇だった。

 ラミア種のモンスターだ。なるほど。家のことは使役してるモンスターにやらせてるっぽい。


「ギルドより話は伺っております。こちらへどうぞ」


 おお。人間言語スキル持ってんのか。やるな、君!

 ラミアさんが応接室に案内してくれるので、素直に従う。


「その、女の子のモンスターばかりですね」

「うん。私も気になってた」


 応接室までの間に見かけたのは、ハーピー、ケンタウロス、マーメイド、ドリアード。

 みんな女の子で、メイド服を着て働いていた。

 なんかすごく趣味の偏りを感じるんだけど。

 まあ、人の趣味なんてどうでもいいか。ソファに座ってちょっと待ってると、ドアが開いて男が入ってきた。

 貴族っぽい格好の優男だ。名前はドルホイさんで、凄腕のモンスター使いのはず。


「やあ! 君がモンスター使いを目指しているというレディな……ぎゃあああああああ!」


 で、そのドルホイさんは部屋に入ってくるなり、飛び下がって出ていってしまった。

 ん?

 どうしたんだろ?


「あの、大丈夫ですか?」


 スアマちゃんが、立ち上がって廊下に出たので、私もついていった。

 ドルホイさんは、尻餅をついていた。


「ななななな、なんで、レベル102なんてバケモノがこんなところにいるんだ!」


 あ、原因は私か。

 そういや私はまだ鑑定系のスキルを取ってないから、普通の冒険者がどの程度のレベルなのかとかよくわかってないんだよね。

 けど、今まで騒がれてなかったのはなんでなんだろ?


「あの、安心してください。ハルミさんは私が使役してるモンスターで……」

「う、嘘を付くんじゃない! そいつは、野良だ! 誰にも使役されてないし、できっこないだろ!」


 お。そんなこともわかるんだ。

 けどまいったな。こっちの素性はバレバレのようだし、これじゃあろくに話を聞けない。


「はろはろー! 私、ミミックのハルミ。素直に知りたいこと教えてくれないなら、ぶち殺すけどOK?」


 ずずいっと、ドルホイさんに近づいて訊いてみた。


「わ、わかった! なんだかわかんないけど、教える! 教えるから!」


 交渉成立!


  *****


 応接室。

 私とスアマちゃんは並んでソファに座って、向かいに側にドルホイさんが座っている。


「で、なんなんだね、君は……」


 落ち着いたのか、ドルホイさんがようやく口を開いた。


「詮索はしないこと。質問はこっちからするから」

「は、はい!」

「まず。私たちは、モンスター使いと、使役モンスターに見えないんだよね? それはなぜ?」

「なぜって……そんなの、ステータスを見ればすぐにわかる。モンスター使いのステータスには、使役モンスター数が表示されるし、モンスター側には、使役状態が表示されている」

「おおう。いきなり計画が破綻したな! けど、ここに来るまでは特に騒がれなかったけど?」

「それは、君がミミックだからだろう。ミミックの持つ擬態スキルには、ステータスを偽装する効果もあるんだ。でなければ、ダンジョンで宝箱のふりをしたってすぐにばれてしまうだろう? もっとも僕ぐらいのモンスター使いが相手となると通用しないけどね!」


 お、なんかしゃべってるうちに調子にのってきやがったな。まあ、いちいち怯えられるよりは話しやすいか。


「じゃあ、モンスター使いのふりをするにはどうしたらいいと思う?」

「そうだな……一般の冒険者が相手なら問題はないだろう。使役状態の可視化は、モンスター使いのスキルだからね。モンスター使いの目を欺きたいなら、擬態のレベルをもっと上げるしかないだろう」


 ふむふむ。擬態のレベルか。総合レベルが上がったら、擬態できる数は増えたけど、それとは違うのかな。そのあたりは誰か詳しそうなモンスターを見かけたら相談してみよう。


「じゃあ、次の質問。私みたいなミミックって不自然じゃない? 自分でもちょっと変かなーって思ってるんだけど」


 ミミックの仲間はダンジョンにいたけど、手足は生えてなかった。

 街中でもじろじろと見られてたし、存在自体がおかしいってことになるといろいろと困る。


「ミミック……としてはギリギリありってところかな。そもそもミミックというのは亜種が多いんだ。君の場合は……ベースはミミック・トレジャー・ボックスで、手足が生えてるのは疑似餌の一種と考えれば……そういうミミックだと言い張るのは可能だろう」


 疑似餌ってあれか。アンコウの提灯みたいなやつか。


「ふむふむ。ということは、宝箱じゃないミミックもいるってこと?」

「壺や岩などベース形態は様々さ。何に擬態しているにせよ、冒険者が近づいてくるのを待って攻撃をしかけるといった生態には変わりないけどね」

「でも、やっぱ珍しがられるのは避けられないかー」

「それが嫌なら、使役モンスターを増やすんだね。複数のうちの一体ならそう目立つこともないだろう。普通のモンスター使いなら、一体のみの使役ということはないからね。戦闘時にのみ召喚というスタイルもあるんだけど、ふりをするなら、常時何体かそばに置いたほうがそれっぽいだろう」


 ということで、モンスターの掴まえ方やら、モンスター使いの戦闘スタイルなんかをざっと教えてもらう。


「こんな感じでいいかな?」

「そうだね。じゃあ、私の正体を知ってるドルホイさんは始末して……」

「ちゃんと教えたじゃないか! それはあんまりだろ!」

「えー? でもさー、生かしとくメリットなくない? ギルドに報告とかされるとめんどうだしさー」

「君たちのことは誰にも言わないから!」


 んー。まあ、ここで始末したらほぼ自動的にスアマちゃんが犯人扱いされるだろうし、それはそれでまずいんだよね。

 けど、誰にも言わないなんて言葉を、はいそうですかと信用することもできない。

 そこで。


「じゃあ契約しようか。一回だけ、ドルホイさんの召喚に応えてあげるよ。だから私たちのことは内緒ね」


 モンスター使いがモンスターを使役するには主に二つの方法がある。

 一つは屈服させて隷属させる方法。もう一つは契約によるもの。って、さっきその説明を聞いたばっかなんだけどね。


「そーだねー。応えるかどうかは、こっちの自由。応じた場合は、一分だけ全力で戦って、その後、元の場所に戻してね。あ、召喚と帰還に必要なソウルはそっち持ちね。あと、約束を破って私たちのことを喋ったら、死んでね」

「ず、ずいぶんと一方的な……いや、レベル100越えモンスターの力を一回でも借りられるのなら、破格なのか……」


 ただ脅したって、ここを離れたら無意味。約束を守らせるならギブアンドテイクは必要だよね。


「いいだろう。契約しようじゃないか。コントラクトスクロール!」


 ドルホイさんが、どこからともなく巻物を取り出す。

 そして、契約内容を書き入れた。


「あの、ハルミさん。大丈夫ですか? なにかわかりにくい、不利な条件が付け足されてるようなことは」


 スアマちゃんが小声で耳打ちしてくる。この子は気がきくなー。


「うん、大丈夫。一方的に不利な契約とかは、警告が出るから」


 今、私の目の前には、巻物に書かれた条項が浮かび上がっている。私が言ったとおりの内容で過不足はない。

 そして、


『契約しますか? はい/いいえ』


 の文字。

 怪しい内容なら、ここで警告が表示されるのだ。

 うん。そういうシステムなんだよ!

 ということで、ぽちっと『はい』を押す。

 巻物がぴかっと光って契約完了。巻物は人間側が保管する。

 モンスター側は、いつでもステータスウインドウから契約を確認できるってわけだ。


「さてと。じゃあ契約記念ってことで、何かモンスター使いっぽいアイテムちょうだいよ。スアマちゃんは杖しか持ってないし」

「ちょっと待て! なんだそのずうずうしさは!」

「いいじゃんー、可愛い後輩にプレゼントしたってさー! ほら見てよ。スアマちゃんはこんなボロい服しか持ってないんだよ? 可哀想だと思わない? お下がりとかでいいからさー」


 契約はもう関係ない。ここから先は好意に甘えるのだ!


「と言われてもな。レベル1で使える装備となると……ああ、あれがあったか」


 ドルホイさんが指をぱちんと鳴らすと、ラミアの人がやってきた。で、何やら指示して何かを持ってこさせた。

 一つは服だ。可愛らしい感じの女の子用の服。


「おお! これはなんかものすごい装備だったり?」

「ただの服だよ。多少高級ではあるけどね」

「ぶーぶー! けちくさいなー! もっといいもんよこしなよー!」

「モンスター使い専用の能力に補正がかかる装備ももちろん持っているが、レベル1だとどうしようもないんだよ」

「えー? 必要レベル除去とかできないのー?」

「必要レベル除去? そんなことできるわけがないだろ。噂ぐらいは聞いたことはあるけど、どこでどうやればそんなことができるのかなんてわかるわけもない」


 んー? 私の装備してる、深紅の薔薇がそれをしてるってことだったけど、これって一般的なことじゃないのか?

 となると、あの盗賊は何者なんだよ、って疑問が……。

 まあそれは今考えても仕方がないか。


「本命はこちらだ。結束の絆という指輪だよ」


 ドルホイさんは指輪を二つテーブルの上に置いた。これが二つ目だ。


「これは、赤と青の指輪の二つからなっているアイテムだ。必要レベルは30だけど、装備するどちらかがレベルを満たしていれば問題ない」

「これは二人で使うもの?」

「もっと用意できるなら二人以上でもいい。効果は、赤が受けたダメージを、青に肩代わりさせるというものだ。モンスター使いが裏技的に使うものだね」

「ほほう……モンスターに青を無理やりつけさせて、身代わりにさせるってこと? お主も悪ですなぁ」

「人聞きが悪いが、そういうことだ。死ぬほどのダメージを喰らったとしても赤は無傷で、青を付けた者が代わりに死ぬ。青が吸収しきれなかったとしても、死ねばそこでダメージはキャンセルされるんだ」


 さすがにこれを人間同士で使うのは御法度ってことなんだろう。


「へえー。なかなか便利そうだけど、もらっちゃっていいの?」

「自分からよこせと言っておいて……。いいんだ。もう僕には必要ない」

「じゃあもらっとくよ」


 さっそく付けてみる。

 私は両手に、欲深き者の指輪をつけてるので、左手のを外して青の指輪を装着。

 スアマちゃんは、赤の指輪だ。


「あ、そういやスアマちゃんは今日何も食べてないよね?」

「はい、おなかぺこぺこです」

「飯までたかる気なのか!?」


 ドルホイさんが驚きに顔を歪ませる。


「え? もう夕方だし、どうせなら明日まで泊めてもらおうかと思ってたんだけど」


 すっごい嫌な顔をされたけど、帰れとは言われなかった。

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