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美脚ミミック、ハルミさん ~転生モンスター異世界成り上がり伝説~  作者: 藤孝剛志
1章 アルドラ迷宮

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第15話 メンテナンスエリア(1章完)

 はげのおっさんがリヤカーを引いてやってきて、私たちはそれに乗せられた。

 歩ける奴は歩いて帰るらしいけど、一応ミミックな私は歩けない分類らしいね。

 あ、べつに怪我で歩けないってわけじゃなくて、ちょっと待ってたら完治しました。すごいな、このハイヒール。

 おっさんは、私たちをエレベーターへと連れていく。

 シーズンが終わったからなのか、階層の移動はもうできるみたい。

 エレベーターはガタガタと不安な感じの音を立てながら下りていく。

 あたりを見てみれば、オークやら、スケルトンやらそれなりの数はいるようだった。

 まあ、倒されたら同じ数だけ補充されるらしいんだよね。

 だから、地下一階に配置されるなら、後から来るほうが有利なのだ。

 そのあたり実に不公平だとは思うけど、上の人は一階のモンスターなんかそれほど重視していないのだろう。

 なので、何が生き残ろうと、全滅しようと、たいして気にしていないのだ。

 まあ、とにもかくにも私は生き残った。

 今後はやりすぎなければ、平穏に暮らせるんじゃなかろうか。


 ちーん!


 と、そんな音が鳴ってエレベーターのドアが開いた。

 ダンジョンキーパーのおっさんが、リヤカーをごろごろと引いて出ていく。

 そこには森が広がっていた。

 鬱蒼とした、いかにもなんか出てきそうな不気味な感じの森だ。

 まあ、出てくる側なんだけどね。私らは。


「ここって、地下何階なんですかね」

「16階に相当するな。アルドラ迷宮自体は15階までで、ここはメンテナンスエリアってことになる」


 とは、スラタロー先輩のお言葉。

 小さいままなので、私の蓋の上に乗っているのだ。


「ここはダンジョンとは切り離されてるから、冒険者もここまではやってこない安全地帯ってわけだ」


 ほうほう。

 まあ、それは気楽でいいよね。


 がたがた、ごとごと。


 リヤカーが進んでいく。

 森を抜けると、小さなお城があった。

 古城って感じで、ここもなんか出てきそうな雰囲気がバリバリだ。

 そのお城の周辺にはこれまたこぢんまりとしたぼろい建物がいくつか並んでいて、ちょっとした城下町のようになっている。


「あの辺で買い物ができるな。他所のダンジョンから商隊がやってくるんだ」

「ああ、ポイントがどうとかって話ありましたよね」


 そうポイントで買い物ができるのだ。

 けっこういろいろ倒してるから、獲得ポイントには期待できるんじゃない?

 けどまあ、リヤカーは街を素通りして城に向かっているようだった。


「城に行くのはわかるんですけど、何すんですかね?」

「ファーストシーズンを生き残った奴らにはあらためて説明会があるな。他はまあ論功行賞っぽいやつか。リザルトに応じてさっき言ってたポイントがもらえるし、配置が変わったりとか」


 リヤカーは城に入ったところで停止した。中もこれまた薄暗い、わざとらしい雰囲気だ。

 ぽいっ。

 と、私たちは乱暴に放り出された。

 唐突だな!

 文句を言おうとしたけど、リヤカーはとっとと城の外へと出ていった。

 他にもリヤカーは何台もあって、ぞろぞろと出ていく。

 気付けば、かなりの数のモンスターが、大広間みたいなところに勢揃いしていた。

 しばらく待っていると、蜘蛛女(アラクネ)のマリニーさんがやってきた。


「はーい静粛にー! 今シーズンもみんなありがとうねー。今回はリザルトがとんでもないことになってます。ちょっと人間との関係がおかしな感じになっちゃったけど、でも、数年は活動しなくてもいいぐらいの莫大な収益がありましたー。じゃあ、ベテランさんは会計さんのところに行って、ポイントをもらってくださいね。ボーナスもあるよー。そして! ファーストシーズンを生き残った人はおめでとう! あらためて説明があるから、ちょっとここに残っててね」


 ぞろぞろと連なってベテランさんたちが広間から出ていく。会計さんのとこに行くんだろう。


「じゃあな」

「はいー。ではまたー」


 スラタロー先輩がそこらの人の背中にはりついて、一緒に出ていった。

 で、まあ、私は待ってりゃいいんだよね。

 わくわく。

 つーかさ、なんでダンジョンに配置されて冒険者と戦わなきゃなんないの? とかそんなレベルから何もわかってないからさ。

 一から説明してもらえるってのならそりゃありがたい。


「あ、そうそう。ハルミちゃん」


 期待に胸を躍らせていると、マリニーさんが声をかけてきた。

 なんだろ。

 超がんばったって褒められるんだろうか?

 いやー、自分でも、よくやったなーとは思ってるんだけどね。


「ハルミちゃんには説明しても意味がないんで、出ていってね」

「えーっと……それ、どういうことですか? 今からこのダンジョンのことやら何やらいろいろ説明してもらえるんですよね?」

「うん。そうなんだけど、ハルミちゃんにはするだけ無駄なのよー。私、無駄なことするの嫌いだから」


 え?

 どういうこと?

 私、けっこうがんばったよね?

 なのに、ハブられんの?

 呆然としていると、いつのまにか私はガーゴイルの人に持ち上げられていた。

 地下一階で黙々と清掃してた人だ。

 そして、そのまま広間から持ち出されてしまった。

 あー、その、なに? なんなのこの仕打ちは?

 え、やっぱり、冒険者殺しすぎたのは駄目だったの? けど、いいぞ、もっとやれ、みたいな雰囲気だったじゃん!

 で、気付くと、キラキラした部屋にいた。

 ん? いつのまに?

 そこには女の人がいて、にこにこと私を見つめている。

 なんというか、ゆるふわな感じのお姉さんだ。

 見た目はまるで人間なんだけど、よーく見てみると、ちらりと黒い尻尾のようなものが見えた。


「おっめでとー!」


 ぱちぱち。


 なんか拍手されてんだけど……。なに、この状況。


「あ、はじめましてよね。私は、アルドラ。この迷宮の主でーす!」


 なんか、マリニーさんよりも、さらに軽い感じの人だった。

 マリニーさんの場合は、軽そうに見えても、底に秘めた刃の鋭さみたいなのが時折感じられたりするんだけど、アルドラさんにはそういうのが全然ない。


「えーと、その、なんなんでしょう?」

「えーとね。ハルミちゃんの今回の成果はちょっと想定外すぎて、もうこのダンジョン内で与えられる報酬とか縄張りとか役職がありませーん。そこで! なんとなんと! エリモンセンターに行ってもらうことになりましたー! よっ! 出世頭!」

「はい?」


 なんか、エリモンセンターとやらに行くことになってしまった。

 って、エリモンセンターってなんなんだよ!


  *****


 警告音が鳴り響く中、アズラットは倒れている男、獅子剣のデイモスを見下ろしていた。


「馬鹿な……この俺が……」

「バックスタブですね。まあ、私、これぐらいしか特技がなくて」


 背後からナイフでの急所への一撃。

 アズラットのそれは、勇者にすら届きうる必殺の刃だった。


「あなたが余計な興味を抱かなければ、こんなことをしなくてすんだんですけどねぇ」


 脚の生えた珍妙なミミックの噂は、勇者であるデイモスにまで届いていた。

 そして、デイモスは、ミミック討伐にしゃしゃり出てきたのだ。

 まずは討伐隊の面々が挑むということで後詰めにいたのだが、絶剣のジョージがやられて出陣しようとしたところを、アズラットは背後から攻撃した。

 デイモスは、レジェンドアイテムを三つも装備している上にレベルも桁違いだ。さすがに勇者が相手となると、あのミミックでは勝ち筋がない。


「そろそろお暇しなくてはね」


 警告音は、ダンジョンの活動期間が終わったことを意味している。

 このダンジョンは再構築期間に入るため、早急に脱出しなくてはならないのだ。


「そうそう。さすがにレジェンドアイテムをさらに置いていくのはやりすぎですね」


 アズラットは、剣と兜と指輪をデイモスから回収した。

 このまま再構築が進むと、中にいる冒険者の身体はダンジョンに取り込まれてしまうのだ。この程度の迷宮には分不相応なアイテムであり、あのミミック以上にバランスを崩してしまうだろう。


「さてさて。モンスターの事情には疎いですので、彼女がどうなるのかはわかりませんが……」


 外へ出てくることになればいい。

 そう期待しながら、アズラットはアルドラ迷宮を脱出した。

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