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監獄の花嫁 プロローグ

 白磁のような肌は汗で艶めき、黒髪は枕に乱れて張りついていた。

 母となってなお張りを残す胸が上下に揺れ、しなやかな腰は黒褐色の巨躯に押さえつけられている。

 体位は正常位──全体重を覆いかぶせるように圧し掛かり、太い肉が深々と彼女を突き上げていた。


 外は真夏の夜。開け放たれた窓からは湿った風が吹き込み、狭く汚れた部屋には汗と肉の匂いが籠もっている。

 敷布はすでに汗と体液でじっとりと濡れ、熱気は息苦しいほどだった。


 静香は目を閉じ、呼吸を整えながら突き上げを受け入れている。

 ──これは欲望のためではない。

 夫と子を取り戻すための、彼女が選んだ犠牲だった。


 最初は痛みしかなかった。

 だがいつの頃からか、奥を抉られるたび熱い痺れが走り、甘い震えが生まれるようになってしまった。

 その事実が、何よりも屈辱だった。


「……っ、は……っ」

 静香が吐息を抑え込むように噛み締めたその瞬間──


 ごつごつとした先端が、最奥に当たった。

「……あっ……!」

 思わず洩れた声に、自ら驚き、すぐ唇を噛んで押し殺す。


 だが覆いかぶさる黒人はそれを見逃さない。

 にやりと口角を上げ、わざとその最奥をぐりぐりと抉り始める。


「……っあ……っ、ん……っ……!」

 必死に堪えようとする静香の喉から、抑えきれない声が漏れた。

 腰を打ち込まれるたび、結合部はぬめりを増し、肉の音と彼女の息が混ざり合って室内に広がっていく。


 涙は流さない。

 羞恥も屈辱も呑み込みながら──ただ、家族を取り戻すために。

 静香は声を押し殺し、己の決意だけを胸に抱いていた。


 男の厚い胸板──と呼ぶには、あまりにだらしない肉の塊。

 ランプの灯りを遮るその影は、鍛え上げられたものではなく、怠惰に膨れた脂肪が揺れるだけだ。

 艶やかな黒褐色の肌と、異様に逞しい股間だけは目を引く。


 本人曰く「黒人の中では小さい方」らしいが──

 日本人の男、それも夫しか知らない静香からすれば、あまりに大きすぎた。


 黒人の名前はマイケル、体格も心根も醜悪で、助けてくれた恩を盾にして身体を要求する、最低の人間。

 ……それでも、家族の情報を聞き出すには、このクズに抱かれることを受け入れるしかなかった。


 音は規則正しく、しかし容赦なく強く──水と肉の混じり合う響きが増していく。

 そのたびに、静香の背筋がわずかに震え、結わえた黒髪がふわりと揺れた。


 男は、薄く口角を上げた。

「……まさか、和樹と正文があんな監獄にいるとはな」

 低く湿った声が、熱気に溶ける。


 夫と子の名を聞いた瞬間、静香の体がびくりと反応した。

 奥を貫かれた肉が、無意識にきゅうっと締め付ける。


「おお……」

 マイケルがにやりと笑い、腰をゆっくりと揺らす。

「昨日も思ったが──家族の名前を出すと、締め付けが強くなるなぁ」


 その言葉と同時に、ひときわ深く突き込まれる。

「あ……っ、ん……っ……」

 噛みしめた声が、どうしても漏れてしまう。


 ──クチュッ、クチュチュチュ……。

 水音は一段と高く、速く、室内に反響していった。


「……あの監獄は、どこ……?」

 熱を帯びた瞳が、男をまっすぐに射抜く。

 声には焦りと、わずかな怒りが滲んでいた。


 男は低く笑い、静香からの問いを気にせず無視。

「ふ……俺の棒に、もう慣れてきたじゃねぇか。褒めてやるよ」


 一瞬、動きが止まる。

「……あとは誠意を見せろ」


 ズルリと、熱を孕んだものが引き抜かれる。

 ぱくりと開かれた膣口から、愛液が糸を引いて垂れ、空虚になった奥がひくひくと痙攣する。

 熱を失った途端、静香は小さく息を呑んだ。


 視線を落とす。

 抜かれたマイケルのものは、汗と粘液に濡れ、赤黒く脈打ちながら天を衝いていた。

 (……汚い……っ……こんなものが、私の中に……)

 心の奥で震える嫌悪と屈辱。


 男はそのまま仰向けに寝転がり、腹の肉を揺らしながらニタニタと笑う。

「……ほら、跨れ」


 短く瞼を閉じ、静香は覚悟を決める。

 ゆっくりと脚を開き、濡れた秘裂を導かれるように押し当て、腰を沈めていく──


「……っ──ああぁっ……!」

 重力に引かれ、最奥まで一気に突き刺さる。

 甘い衝撃が脊髄を駆け上がり、理性を奪い去った。

 背筋が大きく震え、吐息が途切れる。

 彼女の意志とは裏腹に、全身が絶頂の波に呑まれていった。


 ──何度受け入れても、この大きさには慣れない。

 ぬるりと押し広げられ、奥の奥までこじ開けられる感覚。

 熱く、重く、脈打つたびに中を擦られる。


 ……このクズのものだと思えば吐き気すらするのに、

 身体は勝手に熱を帯び、震えを止められない。

 悔しさと嫌悪が、汗に紛れて胸の奥で渦を巻いていた。


「……自分から動け」

 低く命じられ、静香はゆっくりと腰を動かす。

 ──ゆっ、くり……浅く……。

 自分が絶頂に呑まれないよう、呼吸と動きを必死に調整していた。


 だが、男は目を細め、とろけるように呟く。

「……お前のまんこ気持ちよすぎる……っ……」


 次の瞬間、男は口元を歪めた。

「じゃあ──俺が動かすぞ」


 両手が静香の腰にまわされ、がっちりと掴まれる。

「……っ──!」


 そこから一気に、容赦ない動きが始まった。

 床板が軋み、水音が爆ぜる。

「あ、あっ……ま、まって……っ……!」

 静香は腰に力を込め、動きを止めようとするが──止まらない。


「……だ、め……っ──あぁ……っ!」

 堪えきれず、すぐに絶頂が押し寄せる。

 それでも、男は止まらず突き上げ続けた。


「……っ……止まって……っ……!」

 必死の懇願も、汗に濡れた笑みで無視される。

 そして──


「一緒にいけ、静香ッ!」

 雄叫びとともに、最奥まで突き上げられる。

「……っ──ああぁぁっ……!」


 その瞬間、どろりとした熱が奥に流れ込む感触──

 ……熱い、重い……汚い……汚い……汚い……。

 背筋を震わせながらも、心の奥では何度もその言葉を繰り返していた。


 全身の力が抜け、抗うこともできず──汗だくのマイケルの胸元へと倒れ込む。

 だらしなく垂れた肉が、ぬるりと頬に押しつけられる感触。


 熱と脂汗が肌にまとわりつき、吐き気を誘う。

 それでも静香は目を閉じ、胸の奥の目的だけを必死に抱きしめていた。


 連日、静香を抱いてきたはずなのに──

 マイケルの胸に、その熱が冷める気配はなかった。


 最近は、自分から腰を動かすようになった静香。

 その変化が、彼を密かに喜ばせていた。


 繋がったまま、静香はふっと力を抜き、ゆっくりと男に話しかける。

 額が厚い胸板に触れ、耳には鼓動と荒い息が響いた。

 逞しい腕が背に回され、しっかりと抱き寄せられる。


 数日間──マイケルは「監獄の場所」を餌に、決して核心は語らず、静香を弄ぶように抱き続けていた。

 彼女もそれを理解しながら、耐え、身体を差し出し続けてきた。


「……もう、どうでもいいの。ただ……せめて亡くなってるなら旦那たちのお墓を作ってあげたいの」


 彼の胸に頬を預けた静香が、ふと小さく呟いた。


 湿った吐息と共に零れたその声は、決して計算ではなく、疲れ切った母の素直な願いだった。


 マイケルは一瞬、目を細める。

 長い間、何人もの女を抱いてきた彼には、それが嘘や色仕掛けではないことが分かった。


「……おいおい、殊勝なことを言いやがって」

 口元ににやりと笑みを浮かべながらも、内心で妙な居心地の悪さを覚える。


「いいえ」

 静香は首を振り、伏せた睫毛の下から囁く。

「……旦那と息子の居場所だけ、知りたい。あとはあなたの言うこと聞くわ……あの監獄は、どこ?」


 マイケルはしばらく黙った。

 女の髪を指で弄びながら、ためらうように笑い──

「……ったく。墓を作るだと? 負けたよ」


 低く湿った声で吐き出す。

「──《ブラックリーフ監獄》だ」


 その名を聞いた瞬間、胸の奥の緊張がふっとほどけた。


 ──やっと、探しに行ける。

 小さく吐息をつき、静香は抗う力を失い、そのままマイケルの胸に頬を預ける。

 汗と脂の匂いがまとわりつくのも、このときばかりは意識の外にあった。


 まぶたが重くなり、微睡みの底へ沈んでいく。

 その闇の向こうに浮かんだのは──


 ──あの頃。


「和樹さん、今日はあのカフェに行きましょうよ」


「またか。……でも、いいな」


 そんな何気ないやり取りにも笑いがあふれ、陽だまりの中を赤ん坊を抱いて歩く日々。


 貿易で生計を立てる夫の仕事に伴い渡米したものの、静香は持ち前の明るさと柔らかな所作ですぐに人々の心をつかんだ。

 困っている隣人を見れば自然に手を貸し、どんな相手にも臆せず微笑む。

 芯の強さがあるのに、どこまでも人に優しく接する姿は、異国の町でもすぐに受け入れられていった。


「シズカ、あなた本当に美しいわ」

「旦那さんも幸せ者ね」


 そう声をかけられることもしばしばで、夫婦そろって地域の人々に愛され、信頼を寄せられていた。


 白い肌も黒髪も、誇らしく感じていた。

 夜になれば夫と肩を寄せ、未来の夢を語り合う。


「子供は健康に育てたい」「また家族で旅をしよう」──そんな小さな夢を語り合う時間が、

 彼女にとって何よりも愛おしかった。

 互いを求める熱も冷めることはなく、静香は心から「この家族を守る」と誓っていた。


 それが、戦争が始まった途端にすべて変わった。

 笑顔で挨拶してくれた隣人は、冷たい視線を投げるようになり、扉は固く閉ざされた。

 そして──生まれたばかりの赤ん坊と旦那が、ほんの少し外に出たその瞬間、行方不明になった。


 静香は二度と、あの日のような笑顔を浮かべることはなくなった。


 そんなある日、マイケル宛に一通の封書が届いた。

 何気なく受け取ったそれを、静香は手早く開封した──そして、絶句した。


 薄暗い部屋で、血にまみれ拷問を受ける夫。

 そのすぐ傍らで、まだ幼い正文が毛布にくるまれ眠っている。


 生きている──その事実が胸を刺し、同時に、あまりに痛々しい光景に涙があふれた。

 声を押し殺しながらも、嗚咽は止まらなかった。


 そのとき、マイケルがやってきて何気なく口にした。

「……ここは、あそこだな、おそらく和樹は死んでる」


 静香は顔を上げ、目を見開いた。

「……知っているの? どこなの、ここは……!」

 必死に詰め寄る静香。


 だがマイケルは、汗ばんだ笑みを浮かべ、ゆっくりと彼女の肩を撫でた。

「……教えてやってもいいぜ。その代わり──」

 太い指が顎を持ち上げ、いやらしい光を帯びた瞳が絡みつく。

「……SEXさせろ」


 静香は唇を噛み、目を伏せた。

 家族を取り戻すため──屈辱を飲み込む決意を固めた。


 それから数日、彼女は夜ごとマイケルの上で“女”になった。

 拒絶すれば情報は閉ざされる。

 だから、脚を開くたびに胸の奥で軽蔑を噛みしめ、

 信じていたはずの相手に身を預ける自分を何度も罵った。


 だらしない腹が肌にのしかかるたび、

 熱く脈打つものが奥をこじ開けるたび、

 ──汚らわしい。

 そう心の中で呟きながらも、顔には決して出さなかった。


 唇だけは、笑みを作り、耳元で甘く囁く。

 すべては、あの監獄へ辿り着くために。


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多ければ多いほど続けたくなります!


次の話は1時間後予定。

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