第八話 神獣・ガイアゴーレム
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
「........あはぁっ.......♪
旦那ぁ........ こぉんなに大きく立派になっちゃぃゃしたねぇ...............♪」
「.........そんなっ........!!! タヴァータくんがぁっ............!!!!!」
恐怖。絶望。諦め。憎悪。怒り。
ナキシー達が様々な感情が籠もった目で見る目線の先には。
かつて “ タヴァータ ” と呼ばれていた、巨大な人造巨人が堂々とそびえ立っていた。
「......グォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!」
王都の周辺にひっそりとたたずむ湖畔に、ぽっかりと空いた大穴。
その中心部の “ かつてアクド商会の本拠地だった場所 ” の真上から、空間をつんざくような轟音があがる。
その声の主は、まるで山のように巨大な体躯をした.........土や岩、砂などで作り出された人形だった。
「.........この国すべての住人に今すぐ避難命令を出せっ!!!! 早く王にこの事態を伝達するんだっ!!!!!」
「..........近隣国家の金級以上の冒険者をすべてここに集めてっ!!!!!
今ここにいる人達で、少しでも避難の時間をかせぐわよぉっ!!!!!」
ナキシーとクロエが、逼迫した声を上げてその場の者たちに指示を出す。
「.......おぅ!! 任せろぉ!!!!
往くぞ野郎どもぉ!!!!! 俺についてこォい!!!!!!!!」
「..........はいっ!!!! リンドウさんっ!!!!!!」
“ リンドウ ” と呼ばれた冒険者のドワーフの老人が果敢に人造巨人へと飛びかかり、複数の冒険者が後に続く。
「............グォォォォォォォォ!!!!!!!」
人造巨人が、土でできた大きな腕をまるで空間を切り裂くように振り下ろす。
それをなんとか躱し、巨大な土埃をあげて巨腕が地面に叩きつけられた。
その衝撃で人造巨人の腕が木っ端微塵になるも、またたく間に破損部位が完治していく。
「......グワァァァァァァァァァァァ....................!!!!!!」
自傷のダメージをものともせず、人造巨人の口から、禍々しいオーラと凄まじいエネルギーを持つ極太の光線がリンドウめがけて発射される。
「...........危ないっ!!!!!!!」
「......どわあああっ.........!?!?」
掛け声に応じて、なんとか間一髪で回避に成功する。
さっと振り返ると、光線が直撃した背後の山がまるで平地のように跡形もなく消し飛ばされていた。
「....なんだよあのバカみてぇな火力...........おかしいだろ.......!!!!」
「.........あのリンドウさんが、手も足も出ないなんてっ........!!!!」
「.............もうだめだ.........俺達、ここで死ぬんだっ.......!!!!!」
それを離れて見ていた騎士団の騎士たちが、眼の前に迫った圧倒的な恐怖に怯える。
全世界の冒険者の中で13人しか存在しない白金級のリンドウでさえ手も足も出ないこの状況には、これ以上ない程に “ 絶望 ” という言葉が重苦しく響いていた。
「........あはぁっ.......♪
これが、あーしの..........ダンナの力ぁ.......っ!!!!」
その惨状を見ていたヴィーラムが、恍惚とした表情でにやけた。
彼女がタヴァータを依り代にして召喚した.........神獣・大地の人造巨人は、その圧倒的な力から神と名乗ることを許された非常に高位なものたちの中の一柱である。
あまりにも膨大すぎる魔力を依り代に注ぎ込んで生まれるそれは、母なる別世界の地球の大地から湧き出る魔力をふんだんに取り込みながら急速に成長し、ものの数分でおおよそ数百メートルにも及ぶ巨大な体躯へと成長する。
古来から異世界に伝わる神話では、我々が生きる地すべてが大地の人造巨人であると記されていたほどだ。
まさに、母なる地球の化身。
そんな異世界の歴史に類を見ない強大な敵を相手に、人類は絶望の窮地に立たされていた。
「.........あんなの........勝てっこねぇよ!!!!! もう終わりだぁ.........!!!!!」
「.....ああああ.......!!! もうダメだあっ!!!!!!」
「....死にたくねぇ........死にたくねえよォ...........!!!!!」
ほぼすべての人々が震え、おびえ、絶望し、すべてを諦めそうになる中。
まだ希望を捨てずに...........諦めず立ち向かおうとする者たちがいた。
「..............まだだっ!!!!!! “ まんが ” の勇者なら、こんな所で決して諦めたりなんてしないっ....!!!!」
王都直属騎士団団長、ルリオン・ナキシー。
彼女が、皆に訴えかけるように大声で鼓舞した。
「.......お前たちが憧れた勇者は、窮地に立たれたときに絶望していたか!?!?
ただ泣きわめき、すべてを諦めたのか!?!?」
その声を聞いた者たちが、絶望して地に伏していた顔をハッと上げる。
「........お前たちは、どんなに窮地に立たされていても決して諦めない姿に憧れたんじゃないのか!?!?」
そう彼女が声をあげると、あちらこちらでつぶやくような声があがる。
「........そうですっ........勇者さまなら、どんなときでも絶対に諦めませんっ.......!!!」
「.........勇者殿は........タヴァータ殿は、絶対に諦めない大切さを教えてくださった.........!!!!」
「.......オレも勇者みてーに.........人々を助ける英雄になりてえんだっ!!!!」
「..........わたしだってっ...........タヴァータくんを守りたいっ..........!!!!!」
気づけば、蚊の鳴くように小さかったつぶやきが大きな声となり、その場にいたほぼ全員が強く芯の通った眼差しで彼女を見つめていた。
「..............私に一つ考えがある。 協力してくれるな.......!?」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「............はいっ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
一度は消えかかった闘志の炎が、また勢いよく燃え上がった。
「............くそったれぇ............手も足も出ねえっ............!!!」
「.........ちょこまかちょこまかと、よぉ逃げやすねぇ。
さっさとおっ潰れちまってくださいよぉ。」
今だに最前線で攻撃を引き付け続けていたリンドウが、吐き捨てるように叫ぶ。
いくら大振りな攻撃といえど、攻撃範囲はほぼ無制限。体力も魔力も無尽蔵だ。
そんな規格外の化け物の相手を延々とさせられ、リンドウの体は消耗するばかりだ。
「.........そろそろ、ハエを叩き潰す遊びも飽きてきやしたねぇ。
じゃあ........そろそろメインディッシュといきやしょうか..........♪」
そう呟いて不敵な笑みを浮かべたヴィーラムが、人造巨人の口を王都の方へと向けてエネルギーの装填を始めさせた。
「..........貴様っ........まさかっ..........!?!?!?」
「......あーしと旦那の愛の結晶っ............ 目ぇかっぽじってよぉーく見といてくださいねぇ.......♪」
「.......やめろぉ...........やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!!!!」
無慈悲にも、王都へ向けて光線が発射されてしまった................
かに、思えたが。
「........漆黒の牢獄っ........!!!!!!!!!」
「............なっ.............きさまぁっ.........!?!?!?」
クロエが放った檻のような拘束魔法が、ヴィーラムを包みこんだ。
たちまち、人造巨人の動きが完全に停止する。
「........今よっ!!! みんなぁっ!!!!!」
「........こっ........小癪な真似をぉっ!!!!!!!」
ナキシーが考えた作戦はこうだ。
魔力量が一番多いクロエがヴィーラムに拘束魔法をかけ、その隙に全勢力で一点を集中攻撃し、中心に存在する依り代のタヴァータを救い出す。
ヴィーラムを封じたとしても人造巨人まで無力化できるかは完全に賭けだったが、良い方に転がってくれたようだ。
「.......全員、総攻撃ぃぃぃぃっ!!!!!!!」
「「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
ヴィーラムの右腕から伸びる、タヴァータがいる中心と繋がる魔力供給管。
その管が、クロエの拘束魔法によってヴィーラム共々しっかりと外界と遮断されている。
魔力の供給が遮断されれば、人造巨人の体が再生する術もなくなる。
全員が、今できる最大級の攻撃を中心へと浴びせ続ける。
「.........くそぉっ!!!!! やめろっ!!!! やめろぉぉぉっ!!!!!!!」
ヴィーラムの決死の抵抗も虚しく、人造巨人の外装がどんどん破壊されていく。
「...........タヴァータぁっ!!!! 今助けるぞっ!!!!!」
「.........また、俺たちに面白え話いっぱい聞かせてくれよぉ!!!!!」
「........ぜったいにっ........ぜったいに、諦めませんっ!!!!!」
「.......勇者殿はっ........タヴァータ殿は、拙者たちに立ち向かう勇気を与えてくださいましたっ!!!!」
「.......タヴァータくんっ......!!! 私が、私達が、絶対に助けてやるっ!!!!!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「.......タヴァータ(くん)(さん)(どの)っ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」
「............やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?!?!?!?!?!?」
そんな、永遠のように思える時間が過ぎたのち。
人造巨人の中心からタヴァータが現れ、人造巨人の体がぼろぼろと崩れていった。
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