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第十六話 旅立ちの覚悟

数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!

「・・・ということで、僕は “ 東の摩天楼 ” を目指して旅に出たいと思うのですが.............

 みなさんは、どう思われますか...........?」



「「「「「「「「「「「「「「..........いや、何を言ってるん(だ)(ですかな)(ですか)!?!?!?!?

」」」」」」」」」」」」」」


だだっぴろい会議室に、僕以外のほぼ全員の大声が一斉に響き渡る。


あの後.......僕が騎士団の居住スペースに戻ったところ、僕の右手の紋様がナキシーさんたちにばれてしまい...............

ギルドの会議室で急きょ緊急会議が行われることとなったのだ。


いい機会だったので、その場を借りて今朝から今までに起こったことを説明し、僕が旅に出たいという旨の話をみなさんに伝えたのだが.............



案の定、ほぼ全てのみなさんから猛反対を食らってしまった。



「............ぜったいダメよぅっ!!!! タヴァータくんまだ小さいじゃないっ..........!!!!」


「..........魔法もろくに使えないのにひとりで旅に出るなんて、まるで自殺行為だぞっ!!!!」


「.......オレ、タヴァータが死んじまったりしたらやだよっ........!!!」


「...........お気持ちはよぉーくわかりますが、どうか考えを改めてくだされっ.........!!!」


「........パパ..................ひとりでいかないで.....................!

 わたしも................つれてって..................!!」






「..............うぅ............」


みんな、僕のことを本気で心配してくれているのだろう。

その気持ちが痛いほど伝わってくるがゆえに、僕はこれ以上主張を強めることができなかった。



「..........まあ、とにかく兄ちゃんのステータスの変化を調べようや。

 その紋様のこともまだわからねぇし、兄ちゃんになんの変化があったのか調べねぇとな。」


「.......そうねぇ。

 まずは、ヴィーラムにかけられた紋様を解析するのが最優先ねぇ。」



リンドウさんの意見によって、僕の話はとりあえず保留になり........

僕の身になにが起こったのか調べるべく、僕のステータスを調査することになった。









 数時間後。

クロエさんの部屋の中でみんなが神妙な面持ちで待機しているなか、クロエさんが必死の形相で、解析結果が書かれた紙を持って現れた。


「.......クロエ様っ!!!! タヴァータくんのステータスはどうでしたか!?!?!?」


「......はぁ....はぁ..................

 たいへんだわぁっ.........!!! みんな、ちょっとこれを見てちょうだいっ.......!!!!!!」


クロエさんが、肩で息をしながらすごく焦ったように口を開いた。


「........... 体力指数(HP)が13、素早さ指数、攻撃力指数、防御と魔法耐性指数すべて1。 状態異常耐性が0.63。 総合レベル指数が2なのは変わりないんだけど.............

魔力指数(MP)が20000近くあるのよぅ...........!!!!!!!

しかも、固有能力(スキル)に『空間転移』ですってぇ..........!!!!」


「「「「「「「「「「「「「「..........な、なんだってぇーーーーーーーーーっ!?!?!?!?!?」」」」」」」」」」」」」」


それを聞いた途端、僕とクロエさんとレム以外の人が全員驚愕する。


「.........その、えむぴー? が20000と、くうかんてんい? のスキルって、どのくらいすごいんですか........?」


イマイチ状況が飲み込めないなか、僕がクロエさんにおそるおそる質問する。


「すごいなんてもんじゃないわよぉっ!!!!!

 20000なんて数字、よほどの強者.........それこそ七罪人か神獣クラスでなければ到底ありえないわぁ.........!!!」


クロエさんが、早口でまくしたてながら興奮したように一心不乱に話す。


 「それに........レムちゃんと魔力の質がまったく同じなのぉ。

 これはまちがいなく、ヴィーラムから魔力を譲り受けたとみてまちがいないわねぇ......!!!!」


「......なぁ、固有能力(スキル)の『空間転移』ってのはなんなんだ?」


「それも謎なのだけど........

 魔法式を見る限りは、その場であらかじめ紋様を刻んでおいた場所に空間転移できるもののようねぇ。」



みなさんが、なにかよくわからないような話題で激しい議論をしている。


「.....タヴァータくん。 ちょっと、固有能力(スキル)を使ってみてくれないかしらぁ?」


「........ええっ!?!?!?!?」


クロエさんが、いきなり僕にそんな無茶ぶりをしてくる。

この世界に来てから1度たりとも魔法など使ったことがないのだ。

急に言われても、やり方がわからない。


「.......魔法じゃなくて固有能力(スキル)なら、発動はカンタンよぉ。

 右手の紋様に向かって、直接魔力を注ぎ込めばいいの。」


「......魔力を注ぎ込むって.........それってどうやるんですか?」


「....それもカンタンよぉ。 紋様がある場所に手を当てて、思いっきり力を送り込めばいいのぉ。」


クロエさんが、自分の足元に魔法陣を描きながら答えた。

うーん.......てことは、僕の場合は右手の甲に左手を当てて、ハンドパワーを送るようにすれば良いのかな?


「..........わたしの前にワープできれば成功よぉ♡

 ......さぁ、やってみて♡」


いつの間にか、クロエさんの足元には僕についている紋様と全く同じデザインの魔法陣っぽいものが描かれていた。

クロエさんが両腕を大きく広げて、ハグを待っているときのようなポーズを取っている。


(............うぅ..........ちょっとはずかしいけど...........)


「..........こ、こうですk................うわあああああああっっ!?!?!?!?!?!?」



「「「「「「「「「「「「「「.................!?!?!?!?!?!?!?!?」」」」」」」」」」」」」」



僕が紋様に左手を重ねてちょっと力を込めた途端、僕の体が勢いよく宙に浮く感覚に襲われる。

そして、紫色のまばゆい光に全身が包まれたかと思うと.........



「............きゃっ!」


「......んむぅ............!?!?!?!?」



僕は数歩先にいる、クロエさんの胸の中におもいっきりダイブしてしまっていた。

いきなり視界のすべてを埋め尽くす、圧倒的な肌色。

コンマ数秒遅れてやってくる、顔面全体を襲うあたたかさと、もにゅうううっとした圧倒的な弾力。

僕がなんとなく既視感(デジャヴ)を感じていると、その一部始終を見ていたみんなからわっと驚きの声が響き渡った。


「...........すごぉぃ♡ よくできましたぁー♡」


「........んむぅ...........ぷはぁっ!!!!」


クロエさんが、僕の頭をなでなでと優しく撫でてくれる。

僕があわててクロエさんの胸から顔を上げると、確かにさっき僕が立っていた場所より数メートル移動していた。

どうやら、僕がヴィーラムさんにかけられた紋様はとてつもない力を秘めていたらしい...........。



「........とにかく、タヴァータくんが与えられた魔力と固有能力(スキル)はまちがいなく本物よぉ。」


「.....ああ.......。 眼の前で見せられては、疑いようがないな............」


「........すっげぇ.........オレ、こんな魔法初めて見た..........!!!!」


「.....わたしもですっ..........!!! さすが、七罪人といったところですね..............」


みんなが眼の前で起こったことを半信半疑でいるなか、僕の心の中はやる気に満ちていた。

これなら.........この力があれば、どれだけ危ない目にあっても一瞬でここに帰ってこられる。

僕は、いきおいよくみなさんの方へと向き直り、やる気に満ちた眼差しでさけんだ。


「.......ぼくのこの固有能力(スキル)があれば、もし危ない目にあっても、すぐに戻ってこれます!!!


どうか.........どうか、僕が旅立つことを許してくださいっ!!!!!!!!!」


そういって、腰をおもいっきり90°曲げてお願いする。


「.............っ..........でもっ..........!!!」


「.........こんな小さい子を、ひとりで行かせるなんてぇ............っ!!!!」


「.......兄ちゃん.............!!!」


「..........タヴァータ殿っ..............!!!!」


「.............パパぁ...................!!!!」



みんながおろおろとしたなんとも言えない表情でうろたえているなか、ナキシーさんだけは真剣な表情で僕をキッと見つめていた。


「...........タヴァータくん。

 .........本当に、“東の摩天楼”へと向かう覚悟はあるのか?」


「.....................はいっ!!!!!!!」


「.........どれだけ辛い道のりでも、諦めずにやり遂げる覚悟はあるのか?」


「................はいっ!!!!!!!!! 


 僕、決めたんです!!!!!! 絶対に、空間転移の秘密を解き明かすって...........!!!

 僕やナキシーさんみたいに.......空間の乱れの事故で困っている人たちを助けたいんです!!!!!」


僕が決死の覚悟を持って、ナキシーさんに胸の中にある思いを吐露する。



「........................そうか。」



長い沈黙のあと、ナキシーさんが優しい声色で口を開いた。


「...........ひとつ、条件がある。


 その旅に、レムと..............私も連れて行け。 それが条件だ。」




「....................っ............!!!!! ありがとうございますっ!!!!!!!!!!!!」


その答えを聞いた僕が、あまりのうれしさにぱあっと顔をほころばせながら叫ぶ。


「............そんなっ!!!! ナキシー団長っ!!!!」


「........タヴァータだけじゃなくて、レムも団長もいなくなるなんて.........オレ........やだよぉ......!!!!」


「.......ナキシーちゃんっ......... 本気なのぉ..........?」


「.........拙者は心配ですぞぉ..........!!! 団長殿ぉ.........!!!!!」


しかし、他の皆さんはかなり引っかかる部分があるようだった。

口々にナキシーさんに向かって講義する皆さんに対し、ナキシーさんが少し照れたように笑った。


「........なぁに。 私なんぞいなくても、騎士団の皆やギルドの冒険者がいればこの街は安泰だろう。

 それに、私ももういい年齢だしな。 いつまでも騎士団長の座に座り続けるわけにもいかない。」


ナキシーさんがそう言ったあと、レムに向かってやさしく問いを投げかけた。


「..........なぁ..........。 レム。


 きみは、家族と離れるのは嫌だろう............?」



「..................やだ..................!!!!


..........もう...............はなれるの.................やだ....................!!!!


............ぜったい...................!!! ぜったい、ついてく........................!!!!」


その場でだまって話を聞いていたレムが、ぷるぷるとふるえて涙をぽろぽろとこぼしながら即答した。

相変わらず無表情だが、彼女がひどく寂しがっているということはありありと伝わってきた。


「.........だそうだ。 やはり、家族は一緒にいてこそだな...........!!!」


ナキシーさんが優しい笑顔でレムに語りかけると、レムは涙をぼろぼろとこぼしながら無言でこくこくとうなずいた。

それを慈愛に満ちた目で眺めていたナキシーさんが、今度は騎士団のみなさんの方へと向き直る。


「..............サーゲ・オトリア。

 お前を、第三十代目騎士団長に任命する。」


「.......................っ..................!!!!!!!!」


そう伝えられたオトリアさんが、口に手をあてながらその場にへたり込んで静かに嗚咽を漏らす。

その場にいる騎士団の人達の瞳にも、涙が浮かんでいた。


「..........私の身勝手な理由で、本当にすまない。 

 どうか、私がいない間も.............この街を守ってくれ。」


「「「「「「「「「「「「「「...............はいっ..........!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」


オトリアさんと騎士団のみなさんが涙ながらに返事をすると、ナキシーさんはにこっと笑ってクロエさんと冒険者のみなさんの方へと向き直った。


「...............どうか、私の自分勝手な行動をお許し下さい。

 ...........私がいない間も、この街をよろしくお願いします。」


そういって深く深くお辞儀をすると、クロエさんは今にも泣きそうな顔でつぶやいた。


「..................それが、ナキシーちゃんの選択なのねぇ............?」


「.........はい。 私は、例え何があっても彼を守り抜くと決めたのです。」


ナキシーさんが迷いなくそう言い放つと、クロエさんが目に涙を浮かべながらつぶやいた。


「..............ナキシーちゃん。 約束だからねっ...........!!!!」


「.........はい。」


ナキシーさんが覚悟を固めたように返事をし、最後に僕の方へと振り返って僕にやさしく語りかけるように言い放った。


「..........私とレムが、なにがあってもきみのことを守ってやる。


..........だから..............絶対、空間転移魔法の謎を解き明かすんだぞ............!!!」






「.................................はいっ...........!!!!!!!!!!!!!」



ナキシーさんが、ここまでしてくれたんだ。

クロエさんや騎士団のみなさん.......冒険者のみなさんが、こんなに心配してくれたんだ。

僕はその好意に...........。 覚悟に............。 決意に....................応えなければならない。


この先どんな困難があっても、絶対に諦めずに空間転移魔法の謎を解き明かすんだ。


僕はそれを噛みしめるように反芻し、今できる最大の熱意と覚悟を持って返事をした。






読んでいただきありがとうございました!!

少しでも「面白そう!」「続きが気になる!」などと思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】の所から評価をして頂けるとものすごく嬉しいです!!!

感想やリアクションもして頂けると、凄く励みになります!!!!!

次回もよろしくお願いします!!

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