第十四話 とらわれのヴィーラムさん
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
「............ふぉっふぉっふぉ。 それでは、わしはこれにて失礼するぞい。
........お前たちも、ここは関係者以外立ち入り禁止じゃ!!!!
部外者は、すぐに出ていくように!!!!!!」
「「「「「「「「「「「「「「..............は、はいぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!!!! 」」」」」」」」」」」」」」
王さまの鶴の一声で、まるで蜘蛛の子を散らすようにお客さんたちが控え室から退散していった。
そんな王さま自身も、僕に伝えたいことを伝えられたのかゆっくりとした歩みで外へ向かって歩き出した。
王さまが見えなくなるほど遠くへ離れたのを確認すると、僕とクロエさんがいきおいよく安堵のため息を吐き出した。
「..............も、ものすごく緊張しましたぁ..................!!!!」
「........そうねぇ........ まさか国王陛下が直々に足を運ばれるなんて、夢にも思わなかったわぁ............」
僕たちがさっきまで起こっていた衝撃の事態に思いを馳せていると、騒ぎを聞きつけたナキシーさんたちが血相を変えて控え室に飛び込んできた。
「..........タヴァータくん!!!! これは一体、何事なんだっ!?!?!?!?」
「........じつは、さっきかくかくしかじかで...........」
僕は、先程起こった出来事を事細かくナキシーさんたちに話した。
「............なるほど...........まさか、国王陛下が................!!!」
「........これは、勇者の正体は黙っておいたほうがよさそうですな.............!!!」
僕たちが身震いをしていると、子どもたちが心配そうな目で僕たちを見てきた。
「............ねえねえ、おにいちゃん............. ”ゆうしゃさまのしょうたい”って.........?」
「おれたち、もうゆうしゃさまたちにあえねーの!?!?!?!?」
そんな子どもたちの目を見たぼくが、夢を壊さないように慌てて子どもたちへ話しかける。
「..............う、ううん!!! そんなことはないよ!!!!」
なるべく明るい笑顔を心がけながら、僕はさっき伝えたかったことを子どもたちに話した。
「.......勇者たちはね。 みんなの心のなかにいつでもいるんだ。
勇者も言ってたでしょ? ”この先どんな困難にぶつかっても、決してあきらめないで” って。
“仲間と協力して立ち向かえば、どんな強い敵にも勝てるはずだ“ って。
そんな勇者の “ ことば ” を大切に胸にしまっていれば、きっとみんながピンチのときに助けてくれるはずだよ!!!」
僕がやわらかな笑顔で、子どもたちにそう告げた。
「......タヴァータくんの言う通りだ!!! 私も大地の人造巨人と対峙したときに、勇者がくれた言葉にとても助けられたのだ!!!!!」
「.........そうだぜ!!!! 勇者の言葉をしっかりと想っていれば、きっとみんなも勇者が助けてくれるはずだぜ!!!!!」
ナキシーさん含む騎士団や冒険者の方も、口々に子どもたちへ向けてあたたかい言葉をおくる。
「...........きしだんのおねえちゃんも、ゆうしゃさまにたすけられたことあるのー!?!?」
「.............おれ、ゆうしゃがおしえてくれたことば、おとなになってもぜったいわすれない!!!!!」
「..........................わたしも.......................わすれない................!!!!!」
その言葉を受け取った子どもたち(+レム)が、瞳をキラキラさせながら答える。
(.............ああ..........!!!!
いろいろあったけど............... 頑張って、よかったなぁ............!!!!!!)
ようやく、子どもたちに伝えたいことを伝えられた。
夢と希望を与えられ、今後どんな困難にも立ち向かう勇気を教えることができた。
心からの安堵と喜びを噛みしめる僕に、肩の荷が降りたようにどっと疲れが込み上げてきた。
.........本当に、頑張ってよかったなぁ。
嵐のような朗読会兼ヒーローショーから、一夜が明けた今日。
いまだに興奮が冷めやまない人たちも多いなか、僕は日が登る前に早起きをしてとある場所へと足を運んでいた。
「.........おっ!!!!! タヴァータさん!!!!!! 昨日はお疲れ様でした!!!!!!!
ずいぶんお早いですね.........!!!!!!」
「おはようございますっ!!!!
ちょっと、ある人に用がありましてね...............」
見張り役の騎士団のお姉さんに、元気よく挨拶をする。
少し含みのある言い方になってしまったが、お姉さんに僕が来た目的を伝える。
「..........なるほど、そういうことですね...............。
わかりました。私についてきてください!!!!」
そう元気よく言い放ったお姉さんが、ちょいちょいと手招きをしながら建物の中に入っていった。
警備の方は大丈夫なんだろうかと思いつつ、僕が今日ここに来た意図を察してくれたことに感謝して黙ってお姉さんについていく。
「.............ここが、ヤツが幽閉されている牢獄です。」
建物の階段を長い事下ってゆくと、厳重に禍々しい封印が施された石畳の牢獄に案内された。
僕がどことなく懐かしさを感じていると、見張り役のお姉さんが僕へ話しかけた。
「...........ここの封印は、ヤツ以外には適応されません。
自由に出入りできますが、どんなことを話そうともどんなことをしようとも一切の音は聞こえませんのでご安心ください。」
お姉さんが、真剣な表情で僕に注意事項を説明する。
「...........ヤツの魔力と筋力はしっかり封印していますが、万一危なくなった時は私に合図を送ってくださいね。
.........タヴァータさんのお怒りは、察するに余りあります。
是非、情けなどかけずに完膚なきまでにぐちゃぐちゃに鳴かせてやってくださいね。
...........あ、でも、命だけは奪わないでください。 それ以外ならお好きにしていただいて構いませんので.............」
お姉さんが、至極真剣な表情で僕に語りかける。
........なんか、とんでもない誤解をされているような気がするけど..........まあいいか。
「........はい。万一の際は........よろしくおねがいします。」
僕がぺこっと頭を下げ、厳重に禍々しい結界が施された扉の中に入る。
「.....................................。」
かつん......かつんと、密閉された石造りの牢獄に僕の足音が響き渡る。
僕が歩く通路の両側には、薄汚れた無人の牢屋がずらっと並んでいる。
一歩一歩歩みを進めるごとに深くなる暗闇とともに、僕の胸が締め付けられていく。
様々な感情が僕の頭の中に現れ、浮かんでは消えていく。
そんな、永遠とも思えるような時間が過ぎ去り、とうとう通路の突きあたりのいちばん奥の牢獄へと到着する。
「.............!!!!」
「.............................。」
そこには。
鉄格子の向こう側にいたものは。
大きな鉄製の首輪をはめられて虚ろな目をしたヴィーラムさんが、ぽつりと佇んでいた。
「..........................へ.........へへ............!!!!!!
.........そうですか.............そうですかぃ.............!!!!!」
ヴィーラムさんが、僕を見るなりにへらと笑いながらがくがくとふるえている。
きっと、僕が怖くて怖くて仕方ないのだろう。
「.............................。」
「.............ええ。わかっていやす。 わかっていやすとも。
旦那のお怒りはもっともでさぁ。 あーしのチンケな身体ひとつで、許してもらおうなんざ考えちゃいやせんよ..............」
ここに連れてこられてから一切の手入れができていないであろう、ぼさぼさの髪。
どれだけ洗っても落ちなさそうな...........血や泥のようなものが痕になっている、薄汚れた体。
大きいというほどではないが確かに存在している双丘がかろうじて隠れるような、ぼろい布切れ一枚だけの...........服とは呼べないような服。
初対面のときにあれだけ着飾っていたヴィーラムさんとは、とうてい似ても似つかない。
「.............だからっ...............で、でもっ.............あのっ..............そのっ.............!!!!」
僕が一歩ずつヴィーラムさんに近づくたび、呼吸が荒くなって精一杯後ずさりしようともがいている。
さっきまで虚ろな目をしていた瞳は、恐怖におびえて涙をいっぱいためている。
「.........ぐすっ...........ごめ.......なさ.............ゆるし............て...............!!!!!!!」
綺麗だった顔を恐怖でぐしゃぐしゃにゆがめて、涙ながらに許しを乞うている。
そんなヴィーラムさんの前で、僕は自分のふところに手を入れ........そして、あるものを取り出した。
「.........ひぃっ...........!!!!!!」
僕がヴィーラムさんの前で取り出したもの。
それは...............................!!!!
「...........おはようございます! ヴィーラムさん!!
これ、おみやげです。 屋台で買ったくしやき。 おいしいですよ!!!!!!」
昨日の朗読会で出ていたで店で買った、大きなお肉がたくさん刺さったくしやきだ。
人の家(?)に向かうのなら手土産くらいもっていこうかなと思って買ったのだけど、喜んでくれるかな?
「...........................?」
先程まで恐怖に怯えていた綺麗な顔が、今度は素っ頓狂な心底混乱してそうな表情に変わった。
僕がヴィーラムさんにくしやきを手渡すと、彼女はしげしげとそれを無言で観察したあと.........
「.....................っ!!!!!!」
覚悟を決めたように、はむっといきおいよく口に入れた。
「...............おいしいでしょ?
僕も昨日、屋台のおじさんのご厚意で一本いただいたんですけど、なかなかジューシーで食べごたえがあって・・・・・」
僕が得意げになって説明していると、ヴィーラムさんの黒色の瞳からぽろぽろと大粒のなみだが次々とこぼれおちていた。
「............ひっく...........ぐすっ..................えぐっ..................!!!!!!
うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ........................!!!!!!! あああああああぁぁぁぁぁぁぁあ.....................!!!!!!」
「...........うわあっ!?!?!? ヴィーラムさんっ!?!?!?!?!?
だだだだ、大丈夫ですかぁあっ!?!?!?!?!?!?」
心配して、とっさにヴィーラムさんのそばに駆け寄る。
ヴィーラムさんは、ただ感情の赴くままに、まるで子どものようにひたすらずっと泣きじゃくっていた。
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