第十三話 超大熱狂のヒーローショー③
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
「...........ふぅ...........やっと終わったぁ........!!!!」
まるで嵐のような朗読会が終わり、特設ステージの控え室に入った僕はそのまま倒れ込むように椅子に座る。
僕が意図的に巻き起こした勇者旋風は今だ衰えを見せず、勇者パーティーの役を演じてくれた冒険者のみなさんがひっぱりだこにされている。
なんでも、勇者たちを神として祭り上げる新しい宗教団体を設立する動きが盛り上がっているとかなんとか.............
(.......異世界はやっぱり、スケールが違うなぁ.........)
僕がさっきまでの夢のような時間を、噛みしめるように目を閉じる。
しかし、そんな束の間の休息も長くは続かなかった。
(........ん? なんだ? この音..............?)
さっきまで歩いてきた控え室までの道から、大きめの地震が起きたときのような振動と大勢の人の声がする。
それを不審に思うような暇もなく、控え室の扉が勢いよく爆発四散する。
「........うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?!?!?」
あまりの唐突な事態を飲み込めずに目を白黒させていると、僕がいる控え室に大勢のお客さん達がなだれ込んできた。
「タヴァータさんっ!!!! こりゃあ一体どういうことだ!?!?!?
なんであの魔王と勇者様たちが、この世界にいるんだ!?!?!?!?!?」
「......勇者様御一行は、いったいどちらに行かれたのですか!?!?!?!?」
「........あああっ♡♡ タヴァータさまぁっ.......♡♡
わたし、感激でどうにかなりそうですぅぅぅっ♡♡♡♡」
「..................パパ...........!!!! すごい................!!!!!!
わたし.......................... かんげき....................!!!!!!!」
「.......我が黒竜騎士団っ.......!!! 勇者殿たちと共に戦えたこと、この上ない誉れでありまするっ.......!!!!」
「..............すげえっ!!!!!! すげえよっ!!!!!!!!!!!!!
しょもつのなかのゆうしゃさまが、ほんとにおれたちをたすけてくれたんだっ!!!!!!!!」
「..........突然の無礼を失礼いたしますわっ!!!!!
貴方様と勇者様御一行に財産の支援をして差し上げたいのだけれど、どちらの方にお渡しすればよろしくって!?!?」
「.........天使新聞の記者のものです!!!!!
タヴァータ様っ!! ぜひ今回の奇跡について、お話をお聞かせ願えないでしょうか!?!?!?」
「..........ええとっ.........ええとっ!?!?」
その中には、保護した子どもたちやレムなど見知った顔も混じっていたが..........
ほぼほぼ.....いや、まったく知らない大勢の人たちからいきなり質問攻めにあい、僕の脳内が混乱しそうになる。
「..........すみませんタヴァータさん.......... ここは関係者以外立ち入り禁止って念入りに注意をしておいたんですが...............」
「........お疲れのところごめんなさいねぇ......♡ この子達がどうしてもタヴァータくんに会いたいって聞かなくってぇ........♡」
勇者パーティー役を演じてくれた冒険者の人たち(着替え済み)と、子どもたちを引き連れたクロエさんが申し訳無さそうに頭を下げる。
なだれこんできた大勢の人の中から保護した子どもたち(+レム)の方を見ると、全員目をきらきらと輝かせながら希望に満ちた目で僕に興奮を伝えようとしていた。
(.........ふふっ........!!! どうやら、うまくいったみたいだ.........!!!)
僕が心のなかで湧き上がるうれしい気持ちをおさえ、子どもたちに向かって話しかけようとするが.......
「........まさか書物の中の勇者様が本当に実在するのか!?!?!?!?
なあ、本当のことはどうなんだ!?!?!?!?」
「.......勇者様御一行はどちらに行かれたんですの!?!?
わたくし、窮地を救っていただいたことについて一言御礼を申し上げたいんですの!!!!!」
「..........わたし、なんでもしますっ!!!!!!!
ですので、どうか..........勇者さまとお話をさせてくださいっ♡♡♡」
「.........タヴァータ様っ!!! まず勇者様はどのようなお方なのでしょうか!?!?!?!?
何卒、インタビューにご協力お願いしますっ!!!!!!!!!!」
「........わっ!?!?!? み、みなさん.......落ち着いてください!!!!!!」
大勢のお客さん達に囲まれて質問攻めにあってしまい、なかなか子どもたちの方へとたどり着けない。
自分の中にあるそれぞれの熱い想いに任せて発言しているらしく、みんな極度の興奮状態だった。
このままでは、子どもたちの身の安全があぶない。
早急に、この状況をなんとかしなくては..................!!!!
(...........まずい.........どうしよう..........!!!!!)
そのあまりのカオスな状況に、僕が混乱していると.............
「.............皆の者、静まれい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
破壊されてしまった控え室の入口から、覇気をはらんだ声が響き渡る。
その声がする方へと振り返ると、豪華な王冠をかぶって白い立派なヒゲをたくわえたおじいさんが堂々とした威厳ある様子で立っていた。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「........こっ..........ここここ、国王陛下ぁっ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
集まったお客さんたちがそう叫ぶやいなや、僕とレム以外の全員が勢いよくその場で跪きはじめた。
(...........ん? 今、 “国王陛下” って言った............!?!? )
いまいち状況が飲み込めないままぼーっと立ち尽くしていると、おじいさんが叱りつけるように言葉を放った。
「...........見ろ、彼が困っているではないか! 他者を思いやる気持ちを忘れるでないぞ!」
「「「「「「「「「「「「「「........は、はいぃっ!!! 申し訳ございませんでしたぁぁぁぁっ!!!!」」」」」」」」」」」」」」
おじいさんにそう注意されるやいなや、さっきまで僕に質問攻めをしていた人たちががくがくと震えながら謝罪の言葉をさけんだ。
「.........まったく...........謝罪をする相手が違うじゃろうに.............
うちの国民たちが迷惑をかけて、すまぬ。」
そういって、おじいさんが深々と頭を下げた。
「...........あ、あの......その.......ええとっ............ こ、こちらこそすみませんっ!?!?!?!?」
ようやく事態を飲み込めてきた僕があわててひざまずこうとすると、おじいさんが慌てて僕のことを静止しはじめた。
「..........おお、待て待て.......!!!
お主は楽な姿勢で構わん。 わしも勇者様の勇姿に心を打たれた者として、対等に話をしたいのじゃ。」
そういって、おじいさんがにかっと笑う。
もしかしなくても..........このおじいさんが..............!?!?!?
「.......................おじさん.............................だあれ..................?」
レムがきょとんとした顔で首を傾げ、おじいさんに話しかける。
「.......ふぉっふぉっふぉ.........!!! お主がタヴァータどのの娘の、大地の人造巨人の魂を受け継いだ少女じゃな?
わしはこの国を治める王..............コーヴ・コーヤという者じゃよ。」
おじいさんの口から、衝撃の事実が放たれる。
薄々気づいてはいたものの、いざそうだと自覚すると凄まじい緊張が体中に走る。
冷や汗が滝のようにだらだらと流れ、爆音で心臓がなっている僕をよそに、王さまがさも楽しそうに口を開いた。
「.............しっかし..........勇者様のお力は素晴らしいのう........!!!
年甲斐もなく、はしゃいでしまったわい!!!!」
そういって、王さまがにかっと笑う。
どうやら、悪い人ではなさそうだ。
「.......本来なら、わしを魔法で拘束した魔王とやらを探し出して極刑に処したいところじゃが..........
まあ、勇者様が討ち滅ぼしてくださったのでよしとするかのお........ふぉっふぉっふぉ!!!!」
「............!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
まずい。
僕がクロエさんに身体強化魔法をかけてもらって、魔王の幻影を創り出して王様たちに拘束魔法をかけたことがバレたら...............!!!!!!!!!
............考えただけでも、恐ろしすぎて体中ががくがくとふるえる。
「.......聞くところによると、勇者様はお主の故郷に伝わる “ まんが ” という書物に記されていた人物のようじゃな。
このような催しを企画してくれて、本当に感謝するぞぃ!!!!!!!!」
「..........も、もったいなきお言葉です..........!!!!!」
「.......なにかお主らに褒美を与えたいのじゃが........... なにか望みはあるかの?
遠慮せず申してみよ!!!!」
「........あはは.........ありがたき幸せです...............!!!!!!」
僕は顔を真っ青にしてがくがくとふるえながら、勇者の正体は絶対に秘密にしようと強く誓ったのだった。
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