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第十話 子どもたちのためにできること

「..........そういえば、きみのお名前ってなんて言うの?」


僕がそうたずねると、彼女は少し困ったような表情を浮かべた。


「............わたし.............なまえ................ない。 


 .........なまえ.................ほしい...........................パパ..................なまえつけて....................」


「.......この子は生まれたてだし................神獣はごく少数しか存在しないから、種族名がそのまま名前みたいになっちゃってるのよぅ。 

 タヴァータくんっ!! この子に、ステキな名前をつけてあげてねぇ........♡」


「.........はいっ!! まかせてくださいっ!!!!!」


僕が、やる気に満ちた大きな声で返事をする。


そうは言っても、名前かぁ.........うーん。

土...........巨人............女の子............

ガイア......ゴーレム..........ガイア..................ゴーレム...................


..........だめだ。 いい名前をつけたいけど、全然思いつかない。

数分ほどじっくり考えたあと、僕はゆっくりと口をひらいた。


「.............レム..........って名前は............どうかなぁ............?」



「..................................!!!!」



僕らの間に、長い沈黙が流れる。

さすがに、名前が安直すぎたかな。 気に入ってもらえたら嬉しいんだけど.....。


「...............れむ...............!!! 


わたしのなまえ..................!!! わたしは.......................れむ..................!!!!!!」



彼女の表情が、みるみるうちにぱぁっと明るく輝く。

どうやら、僕の心配は杞憂だったようだ。

綺麗な琥珀色の瞳がキラキラと輝き、大きな体がぷるぷると小刻みに震えている。



「..........................................っ!!!!!!!!!!」


「............うわあああっ!?!?!?!?」


その瞬間、僕の体がひらりと空中に舞い上がった。

自分の身に起こった現象を理解する暇すらなく、その次の瞬間には鮮やかな褐色肌の色が視界全体を覆い尽くしていた。


「...................んむぅっ...........!?!?!?!?」


そして瞬く間に上半身に伝わる、もにゅうううううううっとした暴力的なまでにすさまじい弾力と人肌のあたたかさ...........そして、背中の強い圧迫感。

レムに持ち上げられておもいっきり抱きしめられたのだと理解できたのは、それから数秒ほど後になってからだった。


「............あらあらぁ.......♡

 レムちゃんったら、タヴァータくんにお名前をつけてもらったことがよっぽどうれしいのねぇ.......♡」


クロエさんが、くすくすと笑いながらほっこりしたまなざしで僕たちを見てくる。

僕は、なんともいえない幸せな気持ちのままずうっとレムの胸の中に抱きしめられていた。









 数日後。

ヴィーラムさんと戦ったときの混乱も次第に落ち着き、異世界の生活にも慣れてきた僕は、ナキシーさんとレムとともに()()()()()に向かっていた。


「......着いたぞ。 ここが、修道院だ。」


「...........うわああ.........!!! 綺麗な建物ですね!!!」


僕の喉から、思わず感嘆の声があがる。

王都のはずれの丘の頂上に建てられている “ 修道院 ” といわれる建物は、カラフルなステンドグラスがふんだんに使われており、豪華で神秘的な様相を醸し出していた。


豪華な装飾がされている扉をゆっくりと開くと、中から子どもたちがはしゃぐ楽しそうな声が聞こえてきた。


「................あーーーーっ!!!! タヴァータ兄ちゃんだーーーっ!!!!」


「.....わーいっ!!!! おにーちゃんっ!!!!!」


「.........遊ぼ、遊ぼーーーーーっ!!!!!!」


「......ナキシーさまとでっかいねーちゃんもいっしょだーっ!!!!! わーいっ!!!!」 


建物の中に入ってきた僕たちに気づいた子どもたちが、我先にと一目散に駆け寄ってくる。


「......おお!! タヴァータ殿も遊びに来てくれたのですなっ!!!」


「...........やっぱ子どもたちと一緒に遊ぶのは楽しいなっ!!! 後でタヴァータも一緒に遊ぼうぜ!!!」


「.........ふえぇ.........私はもうへとへとですっ............!!!!!」


「.......みなさん、こんにちはっ!!! 朝早くからお疲れ様です!!!」


僕たちより先に来て遊び相手になってくれていたガーネッコさんたちに軽く挨拶をしつつ、集まってくれた子どもたちの前に立ち、目線を合わせてしゃがむ。

僕の方へと集まってきた子どもたちが、みんな瞳をキラキラと輝かせながら話し始めた。


「.........なーなー!!!  “ まんが ” って、すっげーおもしろいんだな!!!!!」


「.........きしだんのおねーさんたちが、わたしたちにおはなししてくれたの!!!!!!」


「ぼくもゆうしゃさまみたいに、みんなをたすけられるひーろーになりたい!!!!!」


「わたしもー!!! ぶとーかちゃんみたいに、かわいくてつよくなりたい!!!!!!」


「............................ねえねえ................................ “ まんが ” って..............................なに..............?」


「ねーちゃんしらねーの?  “ まんが ” っていう、すっげーおもしろいはなしがあるんだぜ!!!!」


「そうだよ!!!! とってもどきどきわくわくして、おもしろいんだー!!!!」



どうやら、僕が来る前にガーネッコさんたちが子どもたちにマンガのことを話したのだろう。

みんなひどく興奮したように、僕やレムにマンガのキャラクターの魅力を語りまくっている。


「..........なーなー!!! ほんものの “ まんが ” ってやつ、おれたちにみせてくれよ!!!!!」


「.......わたしも!!!!! ほんもの、みてみたい!!!!!!」


「.............わたしも..........................みてみたい......................。」


子どもたち(+レム)が、本物のマンガを見たいと口々にさわぐ。

こんなことなら、マンガを持ってくればよかった.......。


「..........ごめんね...........今は持ってきてないんだ..............。」


「........ちぇー。 たのしみにしてたのにー...........」


「.........ほんもののまんが、みたかったなー................」


僕がそうやって伝えると、子どもたち(+レム)はさぞかし残念そうに落胆していた。







 ヴィーラムさんが奴隷として地下に閉じ込めていた子どもたち。

その子たちの保護の仕方について慎重に話しあいを重ねられた結果、里親が見つかるまでの間だけ王国が運営している修道院に預けられることとなったのだ。

保護してすぐのときと比べても、ここ数日でかなり明るく元気になりつつある。


「...........無事に保護することができて.........良かったな。」


子どもたちが無邪気に遊ぶ様子をほほえましく見つめていたナキシーさんが、そうつぶやく。


「..........そうですね.........!!!」


そうやって返事を返し、僕も子どもたちの方へ目線を向けて少し微笑む。

保護されてすぐの子どもたちの様子は、目も当てられないほどひどいものだったのだ。

誰もがみんながたがたと震えて怯えており、小さな体にはたくさんの生傷がつけられていた。

クロエさんの超強力な治癒魔法をかけても、跡が残ってしまった子や未だに完治していない子もいるのだ。


子どもたちが今までどれだけ不安で、恐ろしい毎日を過ごしていたのか...........

想像するたびに、胸がぎゅうっと締め付けられて涙がこぼれそうになる。


そんな怖くて辛い日々を忘れさせてあげられるくらい、楽しい思い出を作ってほしい。

なにか、僕が子どもたちにしてあげられることはないだろうか。


そう思いながら、じっくりと考えていると..............






(................そうだっ!!!!! 僕の大好きな()()をすればいいんだっ!!!!!!!)


僕の脳内が、ビビーンと電流が流れたように光り輝いた。


「..............みなさーんっ!!!! 少し、協力してほしいことがあるんですけどっ.........!!!!!!」


僕はいてもたってもいられず、興奮した様子でナキシーさんたちに “ あるアイデア ” を話した。


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