森の魔女
日曜日に少し続きを書いて力つきました。
6、森の魔女
「黒こげの肉塊も1000年間たてば人の形に戻るもんなんだな。ほれ、目覚めたのは分かってるんだ!さっさと起きな。」
らんぼうに毛布をめくられると、そこはベッドの上だった。妙齢な女性が毛布をたたんでから木の椅子に座ると、顔をのぞきこみながら続けた。
「300年前までは、庭の片隅にほっといていたんだけど、人間ぽくなってきたからベッドに移してあげたんだよ。ここ100年は完全にイヒンの体だったから毛布までかけてやったんだ。」
「僕は・・・たしか隕石に焼かれて・・・燃えながら避難したような・・・。」
「おまえさん、やっぱり1000年前の隕石落下の場にいたんだな。突然、庭の上に穴が開いて、爆風と共におまえさんが落ちてきたんだよ。おかげで森が焼けて大変だったよ。」
おもむろにその女性は、両手で僕の顔の両頬を包むと、そっと上を向かせ、正面から目を合わせてから言った・・・
「謎が3つある!」
「まずは・・・おまえさんはイヒンではないな。イヒンでも魂が向上すれば1000年でも2000年でも生きることはできる。でもあそこまで丸焦げの肉塊で1000年間生きるだけでなく回復することまでは不可能だ!おまえさんは何者だ?」
「僕!? ・・・僕は・・・こっちの世界であった魔法使いは、転生者だと言っていた。」
突然頭を軽く小突かれた・・・
「そんなこと聞いてない! こっちの世界の住人は全員転生者だよ。でもおまえさんは、イヒンでもイフアンでもない。ましてドルークでも亜人でもない。いきなり魔人に転生したのか?どれだけ現世で魂の修行をしたんだ!?いやその魔力量は魔人をも越えとる。今も少しずつ地面から魔力を吸収して増えているぞ。 この1000年間ずっと魔力を吸収しておった・・・おまえさんは何者だ?」
「?? そんなこといきなり聞かれても・・・元の世界では普通のサラリーマンだったし・・・家族も普通だったし・・・??そもそも魂の向上とか修行ってなんなんだよ?」
少し怒鳴り気味に答えると、女性はしばらく目をのぞき込んでいたが・・・
「まぁ~よい。ふたつ目の謎だが・・・1000年前何があった?神の浄化が始まった様子はなかったが・・・なぜあんな隕石が落ちたんだ?」
それはたぶん分かる・・・たぶん僕が原因だ・・・でもあの魔王は何だったんだろう?
「それは、たぶん僕のせいだと思う・・・。ペニの街を自我を失った魔王が襲ったらしい・・・それで神託が降りて・・・ペニの街は滅ぶけど転生者を転生させたら魔王を倒せると・・・それで転生させられたみたいなんだけど、転生直後に魔王に襲われて・・・それで、たまたま上を流れていた流れ星を魔王に落としたんだ。」
「う~ん・・・。いろいろ聞きたいことは多いけど・・・何ともタイミングのいい神託だな。おそらくその魔王は神様に目をつけられていたな・・・。とするとこれも浄化かな。ワーガ大陸が一時は死の大陸となったからな。」
女性は、ひとりで納得したように頷いていた。
「ワーガ大陸を飲み込んだのは魔王だよ。なんでも同化する魔王で、山も城も、たくさんいた人々もみんな魔王の体に触って同化してしまったんだ。」
必死に魔法使いの言葉と、見てきた記憶を思い出しながら説明を続けた。
「魔王を倒せなければ、大陸だけじゃなくてこの世界が危なかったと言っていたような。」
目を見開いた女性は、頷いたあと・・・
「それは運が良かったな。たまたまそのタイミングで神様が気がついて神託を卸してくれるなんて・・・運がいい。」
大陸が滅んだのに、運がいい??何を言ってるんだこの人は??不満気な表情を見せると・・・
「ふん。神界と物質界や下位の霊界とでは、流れている時間が違うのさ。この世は神様が作ったけど、神様がちょっと目を離したすきに、こっちでは何百年何千年、何万年と経っている。そして取り返しがつかなくなると浄化だ!いいかげんなもんだ。大陸が飲み込まれる前に神託が卸りるなんて、本当に運がいい。」
女性は、投げ捨てるように言うと改めて僕を見つめ直し・・・
「最後の謎だ・・・これがどうしても分からない・・・・おまえさん、どうやってここに来た!?」