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魔王と呼ばれた男  作者: あき
2/50

男の名前は、穴道 徹

夏季休暇に書きためた分です。

2、 男の名前は、穴道 徹。


 爆弾が爆発した瞬間は覚えている。


 コンサートなんか行ったこともないのに、娘にキャンプ連れていってと頼まれて、テントを張ったら・・・フェスの会場?だったらしい。


 予定表を見ながら楽しそうにコンサートを聴きにいく娘達。何万人も来ているようで、至る所でビールや軽食を売っている。昼間っからいい酔い加減だ。コンサートが終わった直後はすごい行列だったが、今は結構すいている。ふと見ると、大きなリュックを背負った集団が、散り散りになりコンサートを聴いている集団に入っていった。荷物を預けるところが無かったのかな? そういう僕も荷物番だが・・・。


 今日一番の来日アーティストの出番がはじまる。あまり音楽を聴かない僕でも知っている曲が流れてくる~♪ついついビールのお代わりのついでに、会場の後ろの方で聞き耳をたてる。


 そしてそれは爆発した。



 観客の集団の真ん中あたりから、赤黄色い光が広がっていくのが分かった。その間、僕は楽しかった小学生の頃を思い出していた。


 「ねぇ~。ドラえもんの道具の中で何が一番欲しい?」


 「僕は、絶対どこでもドアだな! だって行きたいところにすぐ行けるんだよ!!」





 その光が顔に達し、熱を感じた直後・・・・僕は空中にいた?


 ちょっと違うな・・・・僕は空から落ちていた。


 夜だったが、下の方で爆発のような光が点滅するおかげで、なんとなく周りが見えた。たくさんの少年少女が同じように落ちている。

 そして、下を見ると山よりも大きな巨大芋虫が、たくさんの手足を動かしながら、目の前の山を飲み込んでいるところだった。文字通り山を食べていたのだ。とても冷静だったのは、まだ現実味がなかったせいだろう。


 しかし、次の瞬間パニックになりかけた。


 巨大芋虫の体からたくさんの触手みたいなものが出てきて、一直線に落ちてくる子ども達を捕まえたのだ。捕まった子ども達は、触手の中に沈んでいくようだった。顔がひきつり、目が飛び出している。口はすでに触手と同化し声は出ていない。

 そんな触手の一つが目の前まで来ている。足に触れた部分と足がくっついているのがわかる。



 触手が太股を伝ってくる間、どうすれば助かるか考えた・・・



 あれ???僕の足が小さくなっている?体も小さい?もしかして僕も子どもになっているのか?でも確かめている時間はない・・・なぜか僕は、ある能力を使えることを知っているようだ?


 空間と空間を穴で繋げる能力。


 まずは、すぐ下に穴を開けて、地面の上と繋げた。その穴を通った瞬間、僕は下の地面から飛び上がっていた。穴を閉じると触手は切れて足に同化していった。


 すぐ横で、一目見て魔法使いと分かる人物が大きな炎をだして巨大芋虫を攻撃していた。


「よく助かったな。ほんとうは城の中庭に転生させるはずだったのだが、魔王に城が飲み込まれてしまった。」


「魔王?」


「あの山のような生き物だよ。もう自我はない。ただひたすら喰らって大きくなる魔力の化け物だ!もうペニの城も街も終わりだ。すべて飲み込まれた・・・転生者の少年よ。なにかあの魔王をやっつける魔法をつかえないか?」


「転生者??魔法??」


「神託によると、もうペニが滅ぶのはしかたないらしい。王族も姫様も、民も船に乗せるだけ乗せて、この大陸を離れた。このままではこの大陸全てが喰われる。でも神託では転生者を召還すれば、魔王を滅ぼせるらしい・・・。だからできるだけ沢山の魂を召還したんだが・・・この様だ。」


 そうは言われても、僕は魔法を使えない。というよりこの世界のことを何も知らない!どうやって魔王を滅ぼすのか??

 他の魔法使いによって何人かの子どもたちが助けられている。それでもほとんどが魔王に吸収されてしまった。助かった子どもたちはみんな震えて、魔王を倒すどころじゃない・・・・それは僕だって同じだ・・・なぜ僕は冷静なんだろう??



 とりあえず、僕の能力・・・空間を繋げる力で何かできないだろうか?



 どうやら出した空間の穴は動かせるらしい・・・でも穴の大きさは直径1mが限界だ。少し穴を小さくすれば何個か出せそうだ。出口の穴いくつかを目の前に出したまま、数個の穴を魔王にぶつけてみた・・・・



 ぶつかった瞬間、目の前の穴からトコロテンのように、魔王の肉塊が飛び出してきた!!



 その肉塊をもろにかぶり、ぼくは肉塊に同化されてしまった?はず?

なぜか意識がはっきりしている。どうやら魔王から切り離された肉塊は、同化する力はあるみたいだが、魔王の意志から離れるらしい?



 子どもだった体が、大人になった。



 穴によって開けた魔王の穴は??あっという間に塞がっている。あまり意味のない攻撃だったみたいだ。


 どうやら魔王を滅ぼすのは、僕の役目ではないようだ。他の子ども達にお願いするしかない・・・そう思うと肩の荷が降りたような楽な気持ちになった。ごめんな、魔法使いのおじさん・・・。


 ふと夜空を見上げると、流れ星が見えた。あっという間の転生人生だったが、次の人生は、もう少しゆっくり楽しみたいものだ。そうお願いしようと思った。





 ん?流れ星???



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