冬の女王
今回は2話投稿します。これは1話目です。調子よく一気に書きました。
11 冬の女王 降臨
転生してからはじめて居心地のいい10年間を過ごした。
転生直後は何が起きたか分からず必死だった。1000年の間は、前世の記憶を思い出しながら・・・それでも一切の刺激がなかったため、眠っていた時間が長かったように思う。おかげで前世への思いは吹っ切れた。
この10年は、ゲルダのおかげで人間らしい生活を送っている。この世界では、魂の理解度が増すほど魔法が上手に使えるらしい。つまり僕は、全く理解してないようだ。それでも運良くイヒンとして転生し、狭い世界ではあるが、楽しく過ごすことができた。
愛読書の様に「基礎魔法の書」の本を読んではいるが、根を詰めて練習することはやめた。たぶんこの霊界で過ごす時間が解決してくれると思うようになった。
それよりもゲルダの為に、どうやったら次元を越えられるかを考えることが増えた。はっきり言って、隕石を落とした直後の事はあまり覚えていない。1000年の間も、その事は思い出さなかった。
そこで、推理してみた。
覚えていることは・・・
魔王に取り込まれそうになり、絶望したこと。
上を見上げたら、流れ星が流れていて、魔王に落とせないか考えたこと。
小さい穴しか開けられないはずが、巨大な穴が開いたこと。
直後に、魔王の上に眩しい隕石が出現して、体が溶け始めたこと。
で・・・それで僕は何をした??
体が溶け始めていたから、ゆっくり考える時間はないはず・・・
その時の僕の能力は、空間に穴を開けることだけだから、きっと穴を開けたんだろう・・・・
どこに?
体が溶けていて、移動先を考える余裕はあるのか?
とりあえず穴を開けるとどうなるのだ?
僕は、移動先を決めずに、空間に穴を開けてみた。
ザパーン!!!
目の前に海が広がっている!一面の海だ!
そういえば、ゲルダが言っていたのを思い出した。霊界の同じ場所は、隕石が落ちた影響で海になったと。
同じ次元内なら行きたい場所に穴を開けられるが、ただ穴を開けると一番近い次元の同じ場所に穴が開くのか!?いろいろ試してみる必要がありそうだな。
ただ次元の越え方は分かった。
ゲルダとの楽しい生活が終わるのは寂しいが・・・しかたがない。
僕は、大きな声で叫んだ。
「ゲルダ~!ここから出られるぞ!」
ゲルダが泣いている。
ここ10年は、僕もセレナもいたが・・・3000年間、たった1人だったのだ。その気持ちは、僕には想像できない。
とりあえず、ゲルダはゆっくり荷物をまとめることにした。セレナはご馳走をつくっている。物置の物と本は、ほとんど置いていくらしい。
「ここの本は、全て私の頭の中に入っているのよ。それに半分は私が書いた本だって言ったでしょう。それに・・・私がここに封印された理由の半分は、本だと思うの。」
この世界の理に近づいたゲルダは、支配などという馬鹿げたことはもう興味が無いそうだ。この世界を支配しても意味がないことに気がついたようだ。もともと支配に興味がない僕にはよくわからない。これが理解度の差か?
今日の夕飯は、豪華だ。お別れ会だからだ。。
「セレナは連れて行ってもいい? あなたが会話を教えてくれたおかげで、とっても愛着があるの。」
もちろんOKだ。作ったのはゲルダだ。
「この家はもうあなたのものよ。自由に使って。」
「もう戻ってこないのか?」
「だって私の魔法じゃ、ここに来れないわよ。」
首を横に振るゲルダ。少し寂しい。でも空間の穴を固定できるようになったら自由に出入りできるはず・・・
「もっと魔法を勉強して、この次元の出入り口を霊界に固定できるようにするよ。待ってて・・・」
「・・・・・ありがとう、トール。」
楽しい一時はあっという間に終わる・・・
次の日、出発の準備ができたゲルダとセレナの前に大きな穴を開ける。
荷物はセレナが持っている皮のトランク一つ?
「荷物それだけでいいのか?」
「ばかねぇ~。私を誰と思っているのよ。この鞄に、物置がいくつ入ると思ってるのよ。とりあえず、備蓄の食糧持って行くわよ。食事だけは美味しいもの食べたいもの。」
穴の向こう側に移動する2人。下は海だが、空中をふわふわ浮いている。
「それじゃ・・・バイバイ。」
片手を軽くふった瞬間、はるか上空に飛び上がっていく2人。
さて・・・これから1人暮らしか・・・
就職して結婚するまでの数年間しか1人暮らしをしたことがなかったな。とりあえず、料理の勉強しないと・・・
それから暫くして・・・
霊界では古の魔法使いの復活の噂が広まり、世界を恐怖に陥れた。
冬の女王が降臨したと。




