第7話 やっちまったもんはしょうがねぇ。
教会の中では、光り輝く剣は無く、無残にも刃が折れた剣を囲むように剣を見つめる3人、自衛の為に目を閉じ、耳を手で覆い隠している少女がいた。
「オイオイ、ナニシテンノ?! 」
正気に戻った神父は声を荒げヤネンに問い詰めた。
ヤネンも気が動転しつつも口を開いた。
「だって壊れるなんて思わなかったんだよぉ! 」
「コワレルデショウガ!というか!壊れてるでしょうが!」
「そ、そーよ。そーよ。」
神父の突っ込みに便乗する少女を見逃さず、視線を便乗した少女に向けた。
「あなたもですよ?」
「はい。すみません・・。」
便乗した少女なじむは俯いた。
溜息を吐き神父は続けた。
「だいたいですね。貴方方は何かですか?魔王の使いか何かですか?だいたい入ってきた・・・・・」
神父が小言を言っていると小さい声でヤネンはなじむに声をかけた。
「なぁなぁおばさんってなじむに何言おうとしてたの・・?」
「黙って聞いてなさい。」
「こっほん。」
わざとらしい咳き込みをし空気を一蹴した。
「いいですか?これは勇者の剣であり、天界へと繋ぐ為の道具でもあるのです。これは魔王軍にも見つかってはならない事案となっております。」
力強い小声でヤネンとなじむに耳打ちをした。
「わかっていますね?これは勇者にばれてはまずいです。」
「うぇ?!マジで?!」
ヤネンの突っ込みに顔を近づけ神父は答えた。
「大マジです。これは勇者が気がついてしまうと剣本来の力を発揮できなくなる恐れがあるからです。いわば信仰心の様なものです。」
「し、しんこうしん・・・。」
「そう。信仰心です。」
神父は目を見開き、ヤネンは神父の目を見て何かに取り付かれたかのようになった。
「しんこうしんならシカタナイデスネ・・。」
「ちょっとヤネン大丈夫?! 」
慌ててなじむはヤネンに声をかけた。
「シンコーシン、ダイジ、ボクタチ、ナカヨシ・・。」
期待した返答とは裏腹な答えが返ってきた。
なじむはヤネンを心配しつつも神父に問い詰めた。
「ヤネン?!ちょっと何したの?! 」
「言え何も?私は少し教えてあげただけです。」
神父はそっぽを向き、部屋の一室へ何かを取りに行き持ってきた。
「これを勇者の剣に入れでください。」
差し出されたのは五体満足だったら立派そうな鞘だったが、折れた鞘の下半身だった。
「何で折れてるの・・?」
なじむは疑問に思い神父に聞いた。
「モトモトデス・・。」
神父は額に汗を掻きながら答えた。
なじむは眉を顰めながら質問攻めをした。
「なんで片言なの・・?」
神父は背中に汗を掻きながら答えた。
「モトモトです・・。」
「少し疑問に思っていたけど、あの棚に置いてある鞘の切れ端みたいなのは何?」
「うるさいですね!そうですよ!ここに来る前に転んで折れてしまったんです!だいたいがこんな田舎まで来るのも大変だったんですよ!人使い荒いんですよもう!」
遂に痺れを切らした神父は逆上した。
それになじむは苛立ちが募りキレ口調になっていた。
「もしかして!私たちに全部擦り付けようとしたわね!」
「そ、そーですよ。何が悪いんですか?剣を折った貴方方に言われたくはないですね。」
開き直り神父は本性を表し始め、なじむは呆れつつも怒りを露にして態度に出した。
「いいわ!もともと私たちは素直にリコちゃんに伝えるつもりだったし!あなたも伝えなさい!」
「そ、それは困る!」
ヤネンを正気に戻そうとする手を止めさせるように声を上げた。
「何よ。あんたリコちゃんが可愛いから嫌われたくないってこと?」
少し冷たい眼差しで見つめるなじむに神父は怖気づいた。
神父は唾を呑み込み口を開いた。
「そ、そーです。私は・・・私は・・・!!」
その時、正気に戻ったヤネンは神父と目が合った。
「好きです!!!」
「え・・・。あ・・・。ごめんなさい。」
ヤネンは動揺しつつも答えてしまった。
暫くの沈黙の後ヤネンの腹になじむの拳が入った。
リコはもう大丈夫だろうと思い恐る恐る瞼を開くと、神父となじむとヤネンが頭を下げていた。
「「「折りました!ごめんなさい!!!」」」
3人同時に謝罪をした。
リコは3人の行動に動揺し現状把握する為周りを見渡したら、主祭壇に折れた勇者の剣を見て驚き、主祭壇にゆっくり歩き、柄を手に掴んだ。
「リコちゃん本当にごめんなさい!大切な勇者の剣なのに・・。」
なじむは声を震わせながらもう一度謝罪をした。
リコは柄を手に取り刃の折れた勇者の剣を鞘に入れ振り向いた。
振り向いたリコに恐る恐る3人は顔を上げ顔を見た。
リコは笑顔で左手で綺麗に鞘の中に入った、折れた勇者の剣を胸に抱えながら、右手は顔の近くにあり、親指と人差し指で丸を作り他の指は大きく広げ笑顔でいた。
誰しもそれをみて「大丈夫。」そう伝えている事が分かった。
「リコちゃん・・。リコちゃーん!」
なじむはリコに飛びつき抱きしめた。
神父とヤネンは脱力感と緊張感もあり、胸を撫で下ろした。
少し長くなったんですけど、次こそは町から出たいです。