第4話 オチが無くても落ちなければいいんです。
ルララ村に向かっている勇者に選ばれた少女リコと金髪泣き虫の少年ヤネン。
道中で、少年の隣に住むボブッ子少女なじむ3人が出会った。
ブルケン山の麓から聞こえてくるのは、風により木々が揺れ葉の擦れあう音と少女の笑い声だった。
「あ、あの~なんで、なじむさんが付いて来られるんですか?」
尋ねたのは、後方に一人トボトボと歩いている金髪ショートの少年ヤネン。
彼の背中には山菜が入った篭を背負っていた。
「え?わからないわけ?あんたじゃ、ルララ村までリコちゃんを連れていけないでしょ?それにリコちゃんが危ないし。」
キレッキレに返答をしたのはボブッ子少女のなじむだ。
その隣を歩いて、剣を抱えている少女リコはなじむを見てはヤネンを見て世話しない動きになっていた。
なじむはその姿を見て答えた。
「あぁ~大丈夫。大丈夫。いつもの事だから。気にしないでね?」
なじむは笑顔でリコに伝えた。
ヤネンは何か言いたそうな顔をし諦めたようだった。
リコはヤネンにアクションを取ろうとしたが、なじむがリコに話しかけた為アクションが出来ずにいた。
ヤネンは俯きながら後方を歩き続けた。
ある程度歩いていたら少女の会話が途切れたので何事かと思い前方を見た。
山と山を繋ぐ橋だったが、それは所々修正されている古びた木と古びたロープによりできた、ロープの吊り橋だった。
一同全員が少し驚き息を飲んだ。
橋の前には注意書きの木製の看板があった。
【60Kg以上の方は別の橋をお使いください。北へ15㎞。】
「き、北に15㎞ってまじで言ってるのか?! 」
ヤネンは驚きのあまり声が漏れた。
「流石にその橋に向かったらルララ村までもっと時間かかるわよ?今日中には確実に付けないわ。」
なじむが少し冷静になり答えた。
ヤネンは橋の下を恐る恐る覗いた。
底は見えなく真っ暗な暗闇が続いていた。
ヤネンは足を地面に擦り付けながら後ろへ下がり橋から離れた。
「おいおい!ここまじでやばいって!!」
ヤネンの顔は青ざめ必死に身振り手振りで伝えた。
その姿を見向きもせず、なじむは話した。
「でも一人一人行けばいいんじゃないかしら? 」
なじむは冷静に言った。
リコもそれには少し悩む素振りをしたが頷いた。
「うっそだろおぉ。」
ヤネンはショックで座り込んでしまった。
「俺も一応体重は問題ないんだよ。でもさ下向いちゃったら無理だよ。ロープ橋とか頭悪いんじゃないの?本当に恨むよ。」
ヤネンは座り込んでぶつぶつと独り言を告げた。
「あんたばっかじゃないの?だから勇者の剣に選ばれなかったんじゃないの? 」
呆れた声でなじむが返した。
「遠回りするとしても北には強い魔物がいるわよ?私だって魔道具持ってないから戦闘には参加できないし、まずリコちゃんを傷一つ付けずに、ルララ村までは無理だわ。現実を見てちょうだい。」
なじむは冷静に状況を今一度伝えた。
「私から行くわ。そのあとリコちゃんで次はヤネンって順番で行きましょう。」
リコは頷き、ヤネンも渋々立ち上がって小さく頷いた。
「それじゃ、行ってくるわね。」
後ろの二人に伝え橋を渡ろうとするなじむ。
なじむは、背中が少し汗ばんだ気がしたが、少しの不安を消し、渡り始めた。
橋の長さは50m。
渡り終わったなじむの姿を見たリコが橋の前に立つ。
やはり怖くて一歩が踏み出せないままでいた。
「私でも大丈夫だったからー!安心して渡って大丈夫よー!」
対岸にいるなじむが大きな声でリコに伝えた。
リコは頷き、先ほどまで肩の力が入っていたが恐怖心が薄くなり、肩の力を抜きゆっくりと歩み始めた。
リコが無事になじむの場所に着きリコは、なじむに抱き着いていたのをヤネンはじっと見ていた。
ヤネンは橋の前に立ちそこから動けなくなっている様子だった。
それに気づいたなじむが声をかけた。
「あんたも60キロないんでしょー!大丈夫よー!」
なじむはヤネンに聞こえるように伝えた。
「大丈夫って言ったって大丈夫じゃないときだってあるじゃないか!!怖いってこれ!ほんとマジ!無理なんだけど!!無理無理助けて!!」
弱音を吐く15歳少年、同い年と年下の少女に、みっともなく助けを請う。
「もぉー!大丈夫だって!!いろんな人が使ってんだから!!!そんなタイミングで落ちたりしないから!!だいじょうぶーー!!」
なじむは少し呆れながらも声援を送った。
リコも肘を曲げこぶしを握り応援してくれている様子が伺えた。
ヤネンは確認の為また安心したが為にまた一度聞いた。
「本当に大丈夫? 落ちたりしない?」
なじむはまた溜息をし答えてあげた。
「落ちたりしないし大丈夫だってー!ほら早く来なー!ヤネンなら大丈夫だってー!」
なじむが元気づけるとヤネンも答えるかのように橋を渡り始めた。
橋を渡り始めたら一歩一歩渡るたびに木のきしむ音が聞こえてくる。
下は見ずにリコとなじむを見ていたが足場の木が何処にあるのかを確認しながら歩いていた為恐る恐る渡っていた。
《ギッーギッー》
あと一歩で半分くらいだヤネンは自分を褒め称えながら一歩を踏み出した。
《ギッーギッーバキッ》
「は?」
一歩踏み出した木の板が割れた。思考が止まった。
「はしれぇーーー!!!」
なじむの声が聞こえ全速力で走った。
次々に割れていく木の板。
山菜が篭から落ちても気にせずに無我夢中に走った。
半分まで進んでいた為かすぐに着いた。
ヤネンは顔面蒼白で息切れをし声を絞りながらなじむに言った。
「だ、だ、だ、大丈夫って言ったじゃん。」
「ヤネンも体重は問題ないって言ってたじゃない。」
なじむは言い返したが少し罪悪感があったらしくいつもの様に強気で言っていなかった。
リコはなじむの服を軽く引っ張りヤネンの方に指をさした。
なじむはリコの指をさす方に目を向けた。
「あっ。」
なじむの声に気づきヤネンも指をさされた方を見る。
「あっ。」
3人が見ていたのは山菜の入った篭だった。
楽しく書いてます。