ぶりっ子と見栄っ張り
俺の名前は相模亮。一流私立の大学生である。親は両親健在だが、俺自身は一人暮らしをしている。学業と家事の両立は結構大変だけれども、なんとかやれている。今いる場所は空いている教室の中である。
「ねぇ~、さっきの講義難しくなかった」
そう猫なで声で尋ねてくるのは、同じ学年の女子で名前は毬山さんという。声も可愛いし、口調も可愛くて、さらに仕草も可愛い。完璧と言って良い。
「俺は大体理解できた」
俺がそう言うと、彼女が驚いたような顔をして返す。
「大体分かったんだ。すごーい」
毬山さんが声を高くして褒めてくれた。
「あの教授の教え方分かりにくいと思わないかな」
「そんなことはないと思うけど」
「じゃあ、相模君が凄いってことだね」
「俺なんて全然だよ」
そう、同じ学年の秋川さんはガチの優等生だからな。俺とは全然違う。
「ねえねえ、私にさっきの講義内容教えてくれないかな」
毬山さんは両手を顎に乗せながら、頼んでくる。可愛い。
「いいよ」
「本当」
「本当だよ」
「わーい」
彼女が両手を上げて喜んだ。可愛い。
「てか、次のコマは大丈夫」
「うん。次のコマは何も取ってないよ」
「分かった。じゃあ、安心して今から教えられるね」
「うん」
こうして、俺は毬山さんに勉強を教えた。
「大体分かったかな」
「うん。ありがとう、相模君」
毬山さんが両手を合わせて、お礼を言った。可愛い。
「どういたしまして」
「じゃあ、次のコマに講義あるから、またね」
「うん、また」
2日後。俺は次の講義に行くために、教室に向かっていた。
「ぎゃははは」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。そちらを覗いてみると、脚を広げて座っている毬山さんがいた。
「ていうか、相模がウザいんだけど」
毬山さんがそう言うと、他の友人らしき女子が聞いてきた。
「なんで、特に欠点とかなさそうだけど」
「あいつ中途半端に頭が良いくらいで良い気になってるんだぜ」
「そんなにウザい言動してるの」
「言動はないけど、何となく女の感ってやつだぜ」
「うわー、毬山さん厳しいね」
俺の陰口を叩いていた。そっか毬山さんはぶりっ子だったんだ。ショックだなあ。俺は見つからないようにそっと去って行った。
あれから2日後。
俺は空いている講義室で優等生の秋川さんと話していた。
「相模、芸能人で不倫する人いるけど、最悪よね」
「そうだね、まあ、芸能人だけじゃないけどね」
「そうそう、一般人でも不倫や浮気する人いるわよね。何考えてるのかしら」
秋川さんは眉を潜めながら言う。
「まあ、俺達のような普通の人間には分からないと思う」
「本当そうよね」
それから、俺達は様々な話題で盛り上がった。
週明けの月曜日。俺は次の講義のため移動していると、聞き覚えのある声がした。覗いてみると、秋川さんと何人かの女子が話していた。
「秋川さんって相模君と付き合ってるの」
「いえ、相模君とは付き合っていないわ」
秋川さん、相模君って。2人きりの時は呼び捨てなのになあ。
「てか、秋川さんって彼氏いるの」
「いるわよ。とっても素敵な人なのよ」
ドヤ顔の秋川さん。嘘つけ。お前彼氏いないだろうが。前も彼氏欲しいと嘆いていただろう。見栄っ張りだなあ。
俺はそう思いながら、顔を引っ込めてから、次の講義室に向かうのだった。