王女に謁見!
馬車が王宮の門を抜けると、広大な庭園が広がっていた。
庭園は左右対称になるように区画されていて、幾何学模様の生垣や、バラ、スイセン、チューリップなど色鮮やかな花々が植えられた花壇が広がっている。
門から建物までもかなり長い距離があるが、道は綺麗に舗装されていて、馬車の中はほとんど揺れなかった。
中央の大きな噴水をぐるりと回って、また長い道を行き、ようやく宮殿そのものにたどり着く。
「お疲れ様でございます。ようこそいらっしゃいました」
出迎えてくれた執事の案内で、応接間へと向かう。
「こちらでしばしお待ちください。今、王女自らこちらへいらっしゃいますので」
そう言って、執事は王女を呼びに、部屋を出て行った。
やはり王女は忙しいのか、俺たちは応接室でずいぶんと長く待たされた。
「なあ、もう帰ってもいいか?なんか、そこらじゅう金ピカで落ち着かねえし……」
俺は痺れを切らしてクロティルドさんに訊く。
「ダメに決まってるだろう。王女殿下が直々にお前の功績を讃えてくれるとおっしゃっているのだ」
「それなんだけどよ……俺、そんなすごいことしたか?」
「あのドラキュラの一件……ヤツは、伯爵の持つ王国の機密文書を盗むために子爵令嬢に化けてあの晩餐会に出席していたのだ。そして、伯爵の書斎を物色しているところを伯爵に見つかり、伯爵を殺害したと言うわけだ……。あのままヤツに逃げられていれば、王国の機密が魔族に漏れるところだった。だから、お前は王国の危機を救ったと言っても過言ではないのだ」
クロティルドさんは自分のことのように誇らしく語ってくれるが、俺からしてみれば、やっぱりそんなにすごいことをしたという実感はない。
とにかく、早く王女への挨拶を済ませて帰りたい……。
そんなことを考えていると、応接室の扉が開いた。
ようやくお出ましか、と思いながら顔を向けると、145cmくらいの小さな女の子と目が合った。
この子が王女だろうか……?
俺がジッと見つめていると、彼女のキラキラした目がだんだんと輝きを失って、ジトっとした目つきに変わる。
「無礼者め!!そなた、今わたくしを見て”ちっちゃいな”と思ったじゃろう!!!」
「お、思ってないですよ!」
王女が突然怒鳴ったので、俺は慌てて否定する。
すると彼女は青いドレスと長い銀髪をさらさらと揺らし、俺をジト目で睨んだまま近づいてきた。
「……ふむ。そなたがアカツキか」
「はい。そうですが……」
「そうか、そなたが……」
王女はくるりと向きを変えて、俺に背を向ける。
うつむいて何か考え込んでいるようだったが、しばらくしてまた俺の方に向き直った。
「そなたには、明日からこの王宮に住んでもらう」
「え?えっと……」
「ドラキュラの一件を聞いて、そなたにわたくしの警護を頼みたいと思ったのじゃ」
「はあ……いや、でも……」
王女の警護なんて、なんだか面倒くさそうで気が進まない……。
俺が断ろうとしたのを察したのか、クロティルドさんが俺の肩を引き寄せる。
「王女の頼みを断ることは許されない。痛い目に遭いたくなければ、黙って引き受けろ」
彼女が俺の耳元でそう囁いたので、俺は仕方なく王女の警護を引き受けることにした。
王女の警護と言っても、王女はあまり外出しない性格だったので、俺はもっぱら王宮に与えられた一室で日がな一日ゴロゴロしているだけでよかった。
しかも俺には専属のメイドがついてくれて、俺の頼みをなんでも聞いてくれた。
試しに「ぱふぱふ」を頼んでみたら了承してもらえたので、俺は今メイドの谷間に顔を埋めている。
……と、扉が急に開いて、悲鳴にも近い叫び声が聞こえてくる。
「何やってるのおおお!!!」
そう言って、ロゼが飛び込んでくる。
王女の許可で、ロゼやクロティルドさんも一緒に俺の部屋に住んでいるのだ。
「ぱふぱふしたいなら私のおっぱいで良いでしょおおお!!!」
ロゼが俺の肩を捕まえて勢いよく揺するので、俺の頭がだん、だん、とロゼの小さな胸に叩きつけられる。
「……それで、二人ともどこに行ってたんだ?」
俺は呆れた顔をしているクロティルドさんに訊く。
「実は騎士団どうしの会合があってな。新人の騎士団員であるロゼにも同行してもらったんだが……。アカツキ、大変なことになったぞ」
「?」
「近々、オーガ討伐作戦を決行することになった」
「……そうか、頑張れよ」
「いや、お前も参加するんだ」
「え?でも俺には王女の護衛という仕事が……」
「いや、だからーー」
クロティルドさんが言いかけたところでまた扉が開く。
「わたくしもオーガ討伐に参加するのじゃ!」
ーー例の銀髪ロリ王女が入ってきて、両手を腰に当てて言った。
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