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金髪巨乳の女騎士団長と偽装カップル作戦②

「いいか、アカツキ。晩餐会では私のことをクロティルドと呼べ」

「はい。えっと、クロティルド……さん」

ロゼから偉い人だと聞いたせいか、呼び捨てにすることにどうしても抵抗を感じてしまう。

「……まあ、それでも良いだろう。乗れ」

俺はクロティルドさんと一緒に馬車に乗り込む。

ロゼは連れて行けないので、クロティルドさんの屋敷に置いていくことにした。


晩餐会の会場であるフリムラン伯爵の屋敷へは、ものの数十分ほどで到着した。

馬車から降りると、執事が出てきて俺たちを出迎える。

「こちらでございます」

執事の後にしたがって屋敷の中を進むと、天井にいくつものシャンデリアが下げられた絢爛豪華な大広間に案内された。

大広間では、すでに集まった上流階級の男女が談笑している。

「あら、見ない顔ですわね」

その中の一人、真っ赤なドレスを着た女が話しかけてきた。

周囲の男と比べても遜色ないくらいの長身で、黒い髪を胸の辺りまで伸ばし、口角を片方だけ上げてニヤニヤと笑っている。「ぽっと出の成金が、上流階級の晩餐会にお呼ばれってわけ?」

「ーー公爵令嬢のアデル・ド・ラ・プルミエール嬢だ。失礼のないように、口の利き方には気をつけろ」

クロティルドさんが俺の耳元に手を当てて教えてくれる。

「……これはこれは、公爵令嬢。ご機嫌いかがですかな?」

途端に襟を正して白々しい挨拶をする俺に対し、プルミエール嬢は軽蔑したような目でフン、と鼻を鳴らす。

「まあ、せいぜい楽しむことですわね。成金がここにいられるのなんか、どうせ今だけでしょうから。そう長くは続かないわ」

そう吐き捨てると、プルミエール嬢は俺に対する興味を失ったらしく、友人たちとの談笑に戻ってしまった。


次に挨拶をしてきたのは白いドレスを着た小柄な少女だった。

「あの、お初にお目にかかります……男爵の娘のイリス・オーストレームと申します……」

彼女は顔を赤らめながらそう名乗り、上目遣いで俺を見つめてきた。

俺はその視線にドキッとして頭をかきながら、

「あ、お目にかかれて光栄です。この度新たに男爵の爵位をいただきました、アカツキ・カワダと申します。よろしくお願いします……」

と、クロティルドさんに指示された設定通りに自己紹介をする。

オーストレーム嬢はプルミエール嬢とは対照的に、初対面の俺に対しても礼儀正しい言葉遣いで、暖かく接してくれた。

俺はしばらくの間、彼女と談笑を楽しんだ。


そんな風にして、俺はいろんな人と代わるがわる挨拶を交わした。

大公の妾ジャンヌ=アントワネット・マルシャンドール、侯爵の未亡人アイラ・シェラード、子爵令嬢メリッサ・ホルヴァート、準男爵ゾエ・リベラータ……。


揃って美女ばかりで俺はずっと緊張していたし、そもそも貴族の振る舞いなんてわからないから、うまく会話をできていたのかどうかは分からない。

クロティルドさんはそんな俺をフォローしつつ、時々情報収集のための質問を巧みに交えながら、スパイの可能性のあるゲストたちを探っていた。

しかし、具体的な手がかりはなかなか得られていないようだった。


……久しぶりにこんなにたくさんの人と話したから、ちょっとクラクラしてきたな……。

そう思い始めたところに、突然ゆったりとした音楽が流れ始める。

「なんだ?」

「ダンスタイムよ。ほら私の腰に手を当てて」

腰に手を……?

動揺する俺の腕を引っ張って、クロティルドさんが踊り始める。

一気にクロティルドさんとの距離が縮まって、俺は思わずドギマギしてしまう。


ふわっと香る女性特有のいい匂い。

手のひらに伝わる、クロティルドさんの身体のやわらかさと温かさ……。

それに、額と額がぶつかりそうなくらいすぐ近くに、クロティルドさんの顔がある。

その必死な表情とおぼつかない足取りを見ると、クロティルドさん自身もダンスに不慣れでありながら、この晩餐会に溶け込むために努力していることが分かった。


俺はクロティルドさんに体を委ねるだけでなく、分からないながらも彼女をリードしようと努めた。

現実世界ではフォークダンスとかが苦手な俺だったが、クロティルドさんとなら楽しく踊ることができた。

時々プルミエール嬢がこちらを見てクスクス笑っているようだったが、俺は気にせずクロティルドさんとのダンスに没頭していた。


ーーキャアアアアアア!!!!!


不意に悲鳴が響いた。

音楽が止まり、貴族たちがダンスを止める。

突然のことに、全員が困惑した顔を浮かべている。

「今の悲鳴……」

「おそらく、二階の方からだ」

俺とクロティルドさんは顔を見合わせ、頷くと、悲鳴が聞こえた方へ走った。


赤絨毯の敷かれた廊下を抜け、階段を駆け上がると、メイドが呆然とした表情で座り込んでいた。

「ご、ご主人……ご主人様が……」

メイドが震える手で指さした先を見ると、

この屋敷の主、フリムラン伯爵が書斎の椅子にもたれかかった状態で息絶えていた。

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