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いざ、オーガの巣食う城へ

ついにオーガ討伐作戦の決行日がやってきた。

俺たちは、オーガが巣食っているというシュヴァルツブルク城という廃城の前までやって来ていた。

空には暗い雲が立ち込め、時々雷鳴が轟く中、俺は壁面に蔦の這う不気味な廃城を見上げて、思わず生唾を飲み込んだ。

俺の隣に立つアンナさんも、どうやら目の前のおどろおどろしい光景に足がすくんでいるように見える。

「……ってか、なんでアンナさんまで来てんだよ?」

「え?……えと……私の仕事は、王女様とアカツキ様の身の回りのお世話ですから」

アンナさんは俺の質問に対して、戸惑ったように目をきょろきょろさせながら答える。

「いや、そりゃ王宮の中とか、ちょっとした外出の時の話だろ?こんなところまでついてくるのは、流石にメイドの仕事の範疇を超えてるだろ……」

俺が呆れていると、

「まあまあ、アカツキよ。アンナは普通のメイドではないぞ。他人の魔力を増強させる能力を持っているのじゃ。」

と言って王女がアンナさんの肩を抱く。

「魔力を増強?」

「はい。例えば、王女様は私の助けがなくとも風速20mまでの風を起こすことができます。しかし、私が能力を使って魔力を増強して差し上げることで、風速30mの風を起こすことができるようになるのです」

王女に肩を抱かれたまま、アンナさんがおずおずと自分の能力について説明してくれる。

「へえ、ってことは俺も1分30秒ぐらいまで時間を止められるようになるのか?」

「おそらくは、そのように思います」


オーガ討伐作戦には、シュヴァリエール騎士団、シルト騎士団、コンキスタドール騎士団の三つの騎士団から選りすぐりの精鋭たちが参加することになった。

例えばシルト騎士団からは「長槍のアルトゥール」、コンキスタドール騎士団からは「火薬のハビエル」などが派遣されてきていた。


そして、騎士団連合から指揮権を与えられたクロティルドさんの号令で、一行はオーガの住む城へ突入した。


廃城の中に入ると、無数の敵が俺たちを待ち構えていた。

敵は緑色の肌の小人のような姿をしていて、毛むくじゃらで、いかにも邪悪な目つきをしていた。

「ーーゴブリンだ。ヤツら、オーガの手下になることでおこぼれの酒や人肉をもらっているらしい。遠慮なく叩き斬れ!」

クロティルドさんはそう叫ぶと、目の前のゴブリンに向かって斬りかかっていく。

その後ろから、アルトゥールとハビエルが走っていく。

「ふんっ!ゴブリン如き、俺の槍の餌食にしてくれる!」

「僕の火薬の実験台になってもらおうか!ゴブリン共、とくと味わえ!」

アルトゥールは槍で次々とゴブリンを仕留めていき、ハビエルは火薬でゴブリンを次から次へと吹き飛ばしていく。

「す……すっげえ……」

俺が二人の戦いぶりに思わず見惚れていると、ロゼが俺の肩を叩く。

「感心してる場合じゃないでしょ!アカツキはもっとすごいってところ、見せてあげなくちゃ!」

そう言いながら弓を引くロゼ。

ケンタウロス討伐の時よりも弓の腕は格段に上がっていて、遠距離からゴブリンを確実に討ち取っていく。

「わ、わ、私もやってやるのじゃ!」

「あ、おい、待て王女!」

「ま、待ってください!」

駆け出す王女を追いかけて、俺とメイドは戦闘の前線に飛び出していく。

「うりゃあああああああ!」

王女が敵に両手を向けると、台風のような風が起きて、ゴブリンたちを吹き飛ばしていく。

ーーしかし。

「王女!後ろっ!!」

しぶといヤツもいるもので、暴風に耐えたゴブリンが王女の後ろに回り込み、大きな斧を振りかざす。

「はわっ!?」

背後のゴブリンに驚いた王女は、そのまま体勢を崩して尻餅をついてしまう。

ゴブリンが黄色い歯を剥き出しにして、ニヤリと笑う。

「クソッッッ!」

俺は指を鳴らし、時間を止める。

王女の方へ向かって走り、王女を抱き抱えて安全なところまで移動させると、聖刀を抜き、王女を狙ったゴブリンを斬り殺す。


時間が動き出す。

「な、なんじゃ……?」

我に返った王女はきょろきょろして、仁王立ちのまま死んでいるゴブリンと、その脇で刀を鞘にしまっている俺を見つける。

「そ……そなたが助けてくれたのか……?」

「ええ。王女様、こんなことを言うのは恐縮ですが、もう少し周りを見てください。ここは戦場ですよ。魔族との戦闘ってのは、カッコいいだけじゃない。一瞬の油断が命取りになるんです」

「むぅ……す、すまぬ……」


それから俺は王女を守りながら無数のゴブリンたちと戦闘を繰り広げた。

しかしゴブリンたちはあまりに多く、倒しても倒してもきりがなかった。

とうとうアルトゥールとハビエルが「くそっ!このままじゃラチがあかねえ!お前ら、ここは俺たちに任せて先に進め!」と言うので、俺たちは先に進んだ。


ゴブリンをなぎ払いながら廊下を進み、階段を上がると、炎に包まれた部屋があった。

「なんだこれ……?」

「えと……多分、オーガの魔法です。人間の侵入を阻むために、魔法で火を起こしてるんです……」

「私に任せろ。火なら私の能力で消せる!」

そう叫んだかと思うと、クロティルドさんは両手を天に掲げて、水の精霊・ウンディーネに祈りを捧げる。

次の瞬間、彼女の手から水が噴き出してきて、部屋の炎を鎮めていった。


「よし、これで先に進めるな」

炎が完全に消えたことを確認して、クロティルドさんが言った。

俺たちの先頭に立って進み、ドアを開き、一歩を踏み出す。

ーーしかし、その瞬間。

「あぁぁぁれぇぇぇぇ〜」

滑稽な悲鳴をあげて、クロティルドさんはゴブリンたちのいる一階へ落ちていった。

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