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惑える魔法使いたち  作者: 未愛
第1章
9/9

24日①

 昨日から変わらず降り続いている雨の音で、メグは目を覚ました。


 “魔法使いの集い”1日目。12月24日。世間はきっと今頃クリスマスイブで浮かれているのだろう。

 時間は午前6時。正直お世辞にも良く眠れたとは言い難いが、もう二度寝する気にもなれず、体を起こすことにした。


 朝食の時間は朝の7時30分。

 それまでは宿題を少し進めよう。

 そんな事を考えながら、着替えて、髪を整え、支度をする。髪型はいつも通り三つ編みで、服は白のブラウスに、黒のジャンパースカート。

 そして机に向かおうとしたその時。

 腹の虫が鳴った。

 ……そういえば昨日の夜から何も食べていなかった。

 そのうえ館中を歩き回ったのだから当然だ。


 朝食まで我慢しても良かったのだが、1階の倉庫に大量のスナック菓子があった事を思い出した。


 まだ寝ている者もいるかもしれないので、なるべく音を立てないように部屋を出て、下へ降りる。

 廊下では誰とも会わなかった。


 食堂に着くと、何やら金属音のような音が聴こえた。先客がいるようだ。

 姿が見えた。……正体は水城凛音だった。

 見ると、手にはトレー、その上にはバターロール2個にパックの牛乳、ヨーグルトとそれを口に入れるための小さめのスプーンが乗っていた。


「おっ、おはよう……」


「………」


 メグは食堂に入って声を掛けてみたが、彼女からは特に返事はなかった。何となくそんな気はしていたし、全然想定内だったが。


(……というかむしろ睨まれてる気がするのは気のせい……?)


 そんな事を考え、はっと気が付いた頃には、既に彼女の姿はなかった。


「………」


 彼女がメグの横を通った右側だけ、心做しか物凄く寒気がした。


 一瞬の出来事に呆気にとられる。


 ポツンと一人取り残され、しんと静まり返った食堂に、今度は別の誰かの声が響いた。


「なんだ、もう一人先客がいたのか」


 入れ違いで入ってきたのは、土門慎二郎だった。

 昨日見た制服姿とは違い、今日は黄土色の上着の私服姿だった。


「あっ、おはようございます」


「おはよう。……さっきの子はどうしたんだ?」


「私が入ってすぐに出て行っちゃったんです。一応、声も掛けてみたんですけど……」


「そうか……」


「土門さんは、これから朝食作りですか?」


「ああ。全員分となると、結構な時間が掛かりそうだからな……」


「……私で良ければ、手伝いましょうか?」


「助かる」


 こうして朝食作りが始まった。土門は素早く倉庫から材料を調達し、持参して来たらしいエプロンを身に付ける。今後のメニューは既に事前に決めており、今朝はオムレツとのこと。


「そういえば、何かアレルギーとかは無いか?」


「いえ、私は特にないですけど……」


「……本当は昨日の内に訊いておけば良かったんだが、初対面の人間にいきなり話し掛ける勇気は無くてな」


「そうですよね……」


 などと雑談をしながら、メグはフライパンの上で調理されていくものを横目で見る。

 メグも一応一人暮らしで全く料理をしない訳ではなかったが、作るものは簡単なものばかりなので、その手際の良さなど段違いの腕前にただただ感動するばかりだった。


「どうした?」


「あっ、いえ!……凄くお上手なので見入っちゃって……」


「下に弟が2人と、妹が3人いてな。両親が共働きで家にいないことが多かったから、弟や妹の面倒は俺が見ていたんだ」


 だから自分の中ではそれが当たり前だったのだが、家庭科の授業ではいつもクラスメイトが教わりに集まって来るし、先生からはいつもお手本扱い。家庭科の成績は学年でトップだと誉められていたのだそう。


「そうだったんですね……」


 それ故に、驚かれたりするのは別に慣れているから気にしてない、と微笑していた。


 そんな話をしているうちに、食堂の入口から「おはよー」と声がした。


 欠伸をしながらが入って来たのは来海だった。

 そしてすぐに、テーブルの上に置かれた朝食に気が付く。


「あっ、おはようございます」


「ん?……これ、二人が作ったの?めっちゃ美味しそう……!!」


「今、お皿に乗せますね」


 メグは食器棚からお皿を人数分取り出し、真ん中のテーブルクロスの上に並べた。


 徐々に人も集まり、食堂か暖かくなった。冷え切っていたメグの右肩も、無事体温を取り戻した。

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