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惑える魔法使いたち  作者: 未愛
第0.5章
8/9

23日⑦

またまたお久しぶりになってしまいました

完結させる気はちゃんとあります

なので気長にごゆるりとよろしくお願いします


「……ひとまず、終わったね」


 メグは向かいの席の宮地に話し掛けた。


「ん、来たばっかなのにもう疲れた……」


「この後、どうする?」


「あー……今日はもう自分の部屋で休むわ」


 伸びをしながら宮地はそう言って、椅子から立ち上がった。


「そっか……」


 じゃ、と軽く手で合図し、食堂を出て行く宮地。メグはそれを見送った。


 食堂を見渡す。今現在残っているのは、メグと裕作と来海桜、そしてあともう一人、金山英美莉だった。


 顔合わせが終わってすぐ。メグの隣に座っていた水城凛音が、我先にと素早く立ち上がって食堂を早歩きで出た。

 一同はそれを見て一瞬だけ驚いたが、その後に世話係のセレスとエリスが、「では、また明日の朝にお会いしましょう」と言って出て行くと、それに続く形で他の魔法使いたちもぞろぞろと食堂を後にした。


 裕作は自分や他の魔法使いたちが使用していたティーカップを洗っていた。

 来海と金山は自分の席に座っており、来海はスマホをいじっていた。


「ほんっと信じらんない……こんな山奥なのにめちゃくちゃ電波良いんだけど~!」


「この館は“設備の整った環境”って、招待状に書いてあったね。それもその一つなのかもしれない」


 一方金山は、顔合わせの時と変わらず不安げに俯いていた。


 それを見た裕作は少しだけ考え込み、「あ、そうだ!」と何かを思い付いた。


「もし良かったらなんだけど、今ここにいるみんなで一緒に館中を回らないか?」


「いいね、賛成!」と来海が乗っかる。


「西の方とか、あたしもまだ行ってないし!」


「メグちゃんも、食堂(ここ)とか自分の部屋以外は、ちゃんと見れてないんじゃない?」


「言われてみれば、確かにそうですね……」


「金山さん、君はどうかな?」


「へっ?」


 話の流れで自分も呼ばれるのは分かっていたようだが、まだ緊張が解れていないのか、少々怯えたような目でこちらを見た。


「えっと……わたくしも、ですか?」


「うん。一人でも人数多い方が絶対楽しいし」


「ごっ、ご迷惑でなければ……」


「決まりだね!」


 裕作はニコッとそう言って、ポケットから館の見取り図を取り出し、1階を指差した。


 まずは食堂を出てすぐ。向かって右側には男子トイレ、左側には女子トイレがある。


 女子トイレのすぐ隣は倉庫となっており、分の飲料やレトルト食品、お菓子が置いてあった。


 そこから少し先に進むと図書室があり、小説をはじめ、絵本や図鑑に最新号の雑誌など、たくさんの本が、天井に届く程の大きな本棚にずらりと並べられていた。

 何箇所かに踏み台や脚立が設置されていて、それらを使えば高い位置の本も取れるようになっている。


「あれっ」


「どうかした?」


 裕作は小説のコーナーにあった内の一冊を手に取った。


「『樹咲伊緒(キザキイオ)』の新作だ……!」


 それは、世界的に有名なベストセラー作家の新作。裕作は彼の小説の大ファンで、メグも何度もおすすめの小説だと電話越しに聞かされていた。しかし、その新作が発売された直後、突然執筆活動の休止を発表した。


「あーね。名前くらいならテレビで聞いたことあるかな……あたし、本とかあんま読まないからさ」


 トイレの隣、図書室の向かいの部屋は、『リビングルーム』と記載されていた。

 中に入ると、大画面のテレビや足を伸ばせる程のソファなど、名前の通り一般的な家のリビングだった。

 その一方で、煉瓦(レンガ)で造られた本格的な暖炉や、高そうなグランドピアノなど一際目立つものも置かれており、ややチグハグな印象を受けた。


「ピアノか……。そういえば金山さんって、初めて会った時どこかで見聞きした名前だな……とは思ってはいたけど、確か、国際音楽コンクールで優勝したって子だよね?」


「えっ、そうなの?すごいじゃん!」


「……昔の話ですよ。今はもう……」


「ん?」


「いっ、いえ!何でも……」


「………」


 皆が黙ってしまい、雰囲気が少し暗くなったことに気付いた金山は、慌てて謝罪する。


「……ごっ、ごめんなさい!」


「ううん!ねっ、次行こ!次!」


「そうだね、まだまだ折り返し地点だ」


 一同はリビングルームを後にする。

 最初に入って来た玄関を通り過ぎて、次は西側。

 突き当たりの手前はジムとなっていた。本格的なトレーニング器具から、百均でも売っているような手軽に始められるものまでが、あちこちに設置されている。


 そして、西側の突き当たりは大浴場。流石にここは男女二手に分かれて探索する。入ってすぐにマッサージチェアが置いてあり、相違点はロッカーの配置が男女で左右対称になっているというだけのようである。

 さらにその横には、なんとサウナまでもがあった。

 肝心の大浴場は、壁や床は大理石模様のタイルが使用されており、湯船には赤やピンクの薔薇と、その花弁が浮かんでいた。


 これには一同も思わず、「うわぁ……!」と声が出た。


「こんな素敵なところに、これから毎日入れるなんて……!」


「本当ですね……!」


「明日から……ってか、今日から入っていいんだよね!?」


 と、以上が1階の間取り。

 無事に探索が終わり、全員が2階への階段を登り切る。


「……あの、ありがとうございました」


 金山はそう言って深々とお辞儀をする。


「いいってことよ!」


「楽しん貰えたみたいで良かった」


「じゃあまた明日!」「明日からよろしくね!」、と4人はそれぞれ自分の部屋へと戻った。


 ◇ ◇ ◇


 部屋に入った途端に静まり返る。雨音がしたので、窓から真っ黒な外を見てみると、天気予報の通り雨が降っていた。曰く、この雨は明日の昼になるまで止みそうにないらしい。


(兄さんも元気そうだったし、他の人たちとも仲良くなれたし、来てみて良かったかも)


 とりあえず、メグは荷物の中身を取り出すことにした。


 冬休みの宿題に教科書、筆記用具は机の上に。

 着替えやタオル類はクローゼットやタンスに。

 パジャマと下着と明日着る服は出したままにして、軽くシャワーを済ませた。


 髪を乾かしている時にふと時計を見ると、時間はもうすぐ23時になるところだった。


 そろそろ寝ようと思い床に入り仰向けになる。


 しかし、雨音もそうなのだが、いつもと違う天井に、いつもと違う布団に枕だからなのか、それとももっと別の理由なのか、とにかくそれのせいで落ち着かなくてなかなか眠れない。


 それでも寝ないわけにもいかず、頑張って目を閉じた。―――それからしばらくして、漸く彼女は眠りに就いた。

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