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惑える魔法使いたち  作者: 未愛
第0.5章
5/9

23日④

 部屋を出て、階段を下ろうとした、その時。


 下った先に、()()()()()()()()()()()()見慣れた服を着た人物が、食堂に向かって歩いているのが目に入った。


「あの人……」


 間違いない。


 真っ白なフードの付いたメンズもののつなぎなのだが、趣味の絵画の影響で、いろいろな色の絵の具やペンキで、フードの部分からくるぶしの部分まで全体的に汚れている。

 そして、裸足にスリッパ。

 これを私服と豪語してどこへでも出掛けるのだから、変わり者なのは正直否定出来ない。


 しかも、ミルクティーベージュの髪で目が隠れている。なので普段何を考えているのかを読み取るのが難しい。


 それでも、性格は至って普通に明るくて物腰も柔らかく、誰もが少し話をするだけで、すぐに打ち解けてしまう。


 名前は古戸裕作(フルドユウサク)。メグの従兄で、学年は1つ上。


 ちなみに宮地の時とは違い、以前からお互いに自分たちの正体を知っている。

 メグがこの集いへの参加を決めたのも、実は事前にその従兄と連絡を取り合っており、彼は参加してみたいと言うので、それに何となくで便乗したからなのである。


 メグは急いで階段を駆け下り、従兄の名を呼ぶ。


「ゆ、裕作兄さん……!!」


 名前を呼ばれた従兄は声がした方向へと振り返る。


「メグ、ちゃん……なのか…!?」


「うん、久しぶり…!」


「久しぶりだね……!もう随分会っていなかったよね。元気そうで良かったよ」


「兄さんこそ!」


 お互いに遠く離れたところで暮らしていて、電話で連絡は取り合っていたものの、長らく直接は会っていなかった。

 だから余計に会話が弾む。時間を忘れてしまうほどに。


「ここに来たのは、ちょうど1時間くらい前だったかな。その時はまだ誰も来てなくて、僕が一番乗りだったんだけど」


「だんだん人も増えてきた頃、ちょっとトイレに行きたくて席を外したんだよ。それで、食堂に戻る途中で、今君に声を掛けられたんだ」


 メグは一番に、自分が不安に思っていた事を訊いてみる。


「えっと……ここに来てる人たちって……ど、どんな感じ……だった…?」


 裕作はメグを落ち着かせてみせる。


「そう身構えることはないさ。()()()()()()()()だけど、僕たちと同じ高校生くらいの子しかいなかったよ。席に座ってた全員とは一応挨拶ついでに少し話もしてみたけど、みんな悪い人って感じじゃなさそうだったしね」


 メグははっとする。ここはもう現実世界とは違うんだと改めて思い知らされた。

 それでも会話を続ける。


「そ、そうなんだ……よかった……」


「あと、宮地くん……だっけ?そういえば彼とはご挨拶がまだだったな」


 うんうん、こんな感じ!

 兄さんとお話をするのは、いつだって楽しいから好き。


 会話を重ねるうちに、少しずつメグの緊張は解れていった。

 さすが従兄。コミュニケーション能力の高さは伊達ではなかった。


 クラスメイトの宮地に、従兄の裕作。裕作の言う通り、知っている人間が、頼もしい仲間が、なんと2人も。招待状を受け取った時の不安がまるで嘘のよう。

 むしろ少しだけわくわくすら覚えた。


「……じゃあ、中に入るとしようか」

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