表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/41

2話 今度こそ言わせないよ

 自室のベッドで目を覚ました私は、自分が涙を流していたことに気がついた。


 あんな夢を見ちゃったんだから仕方がない。そりゃ泣くよ。両方とも自分が死ぬ直前の記憶だからね。


 ここで簡単に自己紹介させてもらうと、私はエリカ・リュミエール。魔族の住む西の大地との国境を守護するリュミエール辺境伯の次女で、現在13歳。


 ただ、表面上は13歳だけど、実際には人生23年目である。


 …うん。ちょっと意味分からないよね。


 なぜそんなことになっているかというと、私が現在、人生三周目だから。


 過去の二度の人生はいずれも18歳で命を落として、その度に過去の記憶を持ったまま13歳の誕生日の日に戻るという不思議な体験をしている。


 そして先ほど私が見ていた夢は、過去の二度の人生の終盤…つまり命を落とす直前の記憶だった。


 一周目ではあのままイザベルに殺されてしまったし、二周目ではイザベルの説得に失敗して屋敷に戻る途中に魔物に襲われて命を落としている。


 そして魔物に命を奪われた次の瞬間、私はまたしても13歳の誕生日を迎えたばかりのエリカ・リュミエールとして屋敷に戻っていた、という状況である。


 どうしてこんなことになっているかは自分でも分からない。分からないけど…。


 今日、あんな夢を見た理由ならなんとなく推測できる。


 その理由は、今日が先ほどの夢に出てきたイザベル・ホランズワースと私が出会う日だから。


 今日うちの屋敷にやってくるイザベルは、これから約一週間、簡単な新人研修を受けてから先日退職してしまった私の専属メイドの後任として働くことになっていた。


 で、正式に私の専属メイドになるのが一週間後とはいえ、屋敷に到着した段階で主人となる予定の私のところにまずはご挨拶ということで、今日の午後に私の部屋にやってくる予定だった。


 ということで、こうしてはいられない。早速準備を始めないと。


「マーガレットさん!!」


 そう考えた私は、イザベルが私の専属になるまでの間、私の面倒を見てくれることになっているベテランメイドのマーガレットさんを呼びつけた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「うん、いい感じ」


 鏡の中の美少女の身だしなみを隅々までチェックし、私は満足げに頷いた。


「はい、本日も天使のような美しさでいらっしゃいます、お嬢様」


 そんな私の姿をみてマーガレットさんは、今日も最上級の褒め言葉をかけてくれた。


 半分は私が機嫌を損ねないためのお世辞で、半分は本音だろうね。


 自分で言うのもなんだけど、私、顔はめちゃくちゃ良いんだ。輝くようなプラチナブロンドに、神秘的な紫の瞳。ものすごく整った顔立ちに儚げで幻想的な雰囲気。


 正直、これ以上ないくらい外見には恵まれてる。


 ただ、良いのは顔だけで、あまりにも性格に難があったから「天使の顔をした悪魔」とか「顔以外のすべてが残念」とか「あんな娘にあのような美貌をお与えになった神様は不公平」とか…。まあ、そんな評判です。


 たとえばマーガレットさん、数日間、私が彼女をマーガレット「さん」と呼び続けたことによってやっと慣れてくれたみたいだけど、最初私が彼女をさん付けで呼んだ時は幽霊でも見たような顔してたんだよね…。


 ……今までの私の性格の悪さはとりあえず置いといて、そんな顔だけが売りの私が本気で着飾っただけあって、鏡の中の私は相当レベルの高い美少女になっていた。


 しかも嫌味にならないよう派手なアクセサリーなどは控えて、シンプルな感じに仕上げてもらったから、落ち着いた性格の穏やかな娘に見える。


 うん、すべてが狙い通り。


 なぜ私が本気で着飾ったかというと、初対面のイザベルに少しでも良い印象を与えたいから。


 過去の二度の人生における私の死には、いずれもイザベルが深く関わっていた。


 一周目では彼女にかなり本格的ないじめ・嫌がらせをしていたことが原因で、長年蓄積された怒りや憎悪の気持ちを爆発させたイザベルから直接の報復を受けて命を落としている。


 二周目の私は彼女に対してそれはもう深い深い恐怖心を抱いていたわけだから、当然ながら彼女をいじめるなんてことはする訳もなく、逆に彼女との接点を持つことを徹底的に避けていた。


 でもその対応も実は破滅につながっていたことが後から判明したんだよね。


 彼女が冤罪で屋敷を追放された後、実はうちの領地を魔物の脅威から守っていたのが彼女の持つ規格外の力だったことが分かったから。


 一周目の記憶からそのことにいち早く気づいた私はなんとか彼女を見つけ、必死になってうちに戻ってきてほしいと懇願したんだけど、それに対する彼女の返事は先ほどの夢のとおりだったわけ。


 だから三度目の人生、私がやるべきことは決まっていた。それは…。


 これから毎日、全力でイザベルに媚びを売り、間違っても彼女がリュミエール辺境伯領を去ることがないようにすること。


 私は今13歳で、過去の二度の人生ではいずれも18歳で命を落としているから、私に残された時間は長くて5年くらいしかないんだ。


 だから私は、その5年以内になんとかイザベル…いやイザベルさんのお気に入りの存在になる必要がある。


 …それが、私が今度こそ生きて19歳誕生日を迎えるための絶対条件で、生き残るための唯一の手段なのだから。


 で、そんな大切なイザベルさんとの初対面が今日だから、私は身だしなみに細心の注意を払ったわけですよ。


 やっぱり第一印象はものすごく大事だからね。イザベルさんにはぜひ「おっ、この子、めっちゃ可愛いじゃん。ちょっと仲良くしてみようかな」と思ってもらいたい。


 そこまで思ってもらえなくても、少しでも興味を持ってもらいたい。


 あ、専らイザベルさんに頼るんじゃなくて、自分の身は自分で守れるような力をつける方向で努力すれば良いじゃないかというご意見もあるとは思いますが…。


 結論から言うと、二周目で試してみたけどダメでした。私、魔力は皆無だから強くなれる方法があるとしたら剣術くらいで、実際に二周目の時は毎日死ぬ気で剣術に打ち込んでたけど…。


 イザベルさんが去った後の魔物との戦いで簡単に魔物にやられちゃったんだよね。


 ……そう。実は私、性格が悪いだけじゃなく、これといった才能もないんです。


 もう本当に「顔だけの女」なんだよね……。


 だから三度目の人生、私が何よりも優先すべきなのはイザベル・ホランズワース。生き残るために、全力でイザベルさんのご機嫌を取る。何があってもイザベル・ファースト。


 彼女には一刻も早く「エリカちゃん大好き♡」状態になってもらわなければ。


 ……覚悟しててね、イザベルさん。今度こそ「もう遅い」とは言わせないからね!

だから今回の作品、私がやるべきことは決まっていた。それは…。


これから毎日、全力で読者様に媚びを売り、間違っても読者様がブクマ・☆評価を入れずを去ることがないようにすること。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ