18話 真剣に考えなきゃ
ケネスくんと話し合いをした日から数か月が経った。私は15歳になった。
エリカ・リュミエール審判の時まで、あと3年。でも今のところすべてが順調だと思う。気を抜かずに引き続き頑張ろう…!
あの日、案の定ケネスくんは私に告白をしてきた。でも私は彼に全く興味がなかったから丁重にお断りし、その後の話し合いもうまくまとまった。
次の日からケネスくんが私に積極的に絡んでくる回数は大幅に減って、それに伴い「ベルさんが不機嫌になる」という非常事態が発生する頻度も自然と低くなっていた。
…よかった。全く予想外の原因で訪れた命の危機だったけど、なんとか乗り越えることができたみたい。今回もよく頑張った、私。えらい!
ちなみにそのケネスくんだけど、最近お姉ちゃんとの交流が増えてきたような気がする。どちらかというとお姉ちゃんの方が積極的にケネスくんに絡みに行っている感じ。
少し遠回りになったけど、結局二人は過去二回と同じように親密な関係になっていくのかな?これも運命の強制力ってやつ…?
もちろんそれならそれでOK。どうぞお幸せに。今回は最後までうまく行くといいね!
ケネスくんのことはどうでも良いとして、そのケネスくんとの一件があってから、今度はベルさんの言動が少し怪しくなっていた。
最近の彼女の言動はなんというか、えっと…。
…うん、うまくオブラートに包んだ感じの言葉が浮かんでこないからストレートに言うと、私に恋をしているように見える。
明らかに前とは違うんだよね。前からベルさんは私にすごく優しかったし、常に私のことを最優先にしてくれてたんだけど…。
でもやっぱり違う。今のベルさんの様子は、まさに「恋する乙女」だった。
熱っぽい視線でじーっと私のことを見つめてきたり、私に優しく触れてくる回数が前よりも増えていたり、私のいつもの「敵じゃないよ」「だから殺さないでね」アピールになぜか頬を赤らめて目をそらしたり。
そして最近のベルさん、私と話をしている時は常に目がハートになっているような気がする。
最初は気のせいだと思っていたけど、ベルさんがずっとそんな調子だから、私は徐々に「もしかしてベルさんは私を恋愛対象としてみているのか?」と考えるようになっていた。
…ベルさんのあの視線、あの表情、あの仕草は「敬愛するお嬢様」に対するものでも「可愛い妹」に対するものでも「大切な親友」に対するものでもない。
いやもちろん、それらの感情も持ってくれてはいると思うけど、最近のベルさんの言動はそのすべてを遥かに上回るほど強烈に「恋愛対象」に対するものになってるんだよね。
あと、相変わらずバカな私は理由についてちゃんと考えようともせず、ただベルさんが不機嫌になるなら無条件でケネスくんと絡むのは控えなきゃと思っていた訳なんだけど…。
よく考えたらケネスくんと私が仲良くするのをベルさんが嫌がった理由も、私のことをケネスくんに取られたくなかったからと考えると納得がいく。
逆にベルさんはケネスくんに惚れていて彼に言い寄られている私に嫉妬してたって可能性は…うん、全くないね。ケネスくんを見るベルさんの目、二周目の最後の時に私に向けられていたものと同じくらい冷たかったもん。
だから、私がケネスくんに言い寄られていた時にはすでにベルさんは私に恋愛対象としての好意を抱いていたと考えた方が自然だよね。
不機嫌になっていたのは嫉妬で、その後、急に積極的になったのは「また他のライバルが現れる前に私を自分のものにしたい」と思ったから。
うん、そう考えるとすべて辻褄が合う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「エリカさん、今日も本当にお綺麗ですね…。エリカさんのお顔を毎日見られてわたし、幸せです!」
「…ありがとう。こちらこそベルさんに毎日たくさん褒めてもらえて幸せです」
…ベルさん、キャラ変わりすぎだよ。そして褒めすぎ。しかもその褒め言葉が毎回本心だということが分かりやすく伝わってくるんだよね。
私を褒める時はいつもとろけそうな表情で、瞳をものすごくキラキラさせながら褒めてくるから。
そんなベルさんの姿を見ながら、私はもし彼女が私に恋愛感情を持っていることが事実だとしたら、私はどうしたらいいんだろうということを考えていた。
正直、私は今まで自分が生き残るためにベルさんに媚びを売って彼女の機嫌をとることしか考えてなかった。
私がベルさんに恋愛感情を持っているかどうかはもちろん一度も考えたことがない。それ以前に、私は自分がベルさんのことをどう思っているかについても考えたことがなかった。
私の気持ちなんかを考えている場合じゃなかったし、考える必要性も感じなかったからね。
私にとってベルさんは、過去の2回の人生で自分を恐怖や絶望のどん底に突き落とした相手で、今回の人生でも自分の運命を握っている相手。
生き残るためにはそんなベルさんがどうしても必要な訳だから、私は彼女に気に入ってもらえるように全力で頑張る。ただそれだけだった。
でも、もし私の今までの行動が原因で、ベルさんが私のことを恋愛対象として好きになったとしたら?
もしそうだとしたら、私は自分がベルさんのことをどう思っているのかについて真剣に考える必要があると思う。
仮にベルさんが本当に私に対して恋愛感情を抱いているとしても、彼女の機嫌をとるためだけにベルさんと付き合うことはあり得ないからね。
それはベルさんに対して失礼だし、現実的な問題としてそんな理由でベルさんと付き合ったことが万が一後からバレたらそれが原因で三度目の死がやってくるかもしれない。
というか私がまた死ぬ云々よりも、そんなことになったらベルさんが深く傷ついちゃうんだろうしね。
だから、自分がベルさんのことをどう思っているのか、ベルさんと今後どういう関係になりたいのかについて、そろそろちゃんと考えなきゃ。
…今まで全く考えたことがなかったから時間はかかっちゃうかもしれないけど、真剣に考えて納得できる結論を出すからね。
それまで待っててね、ベルさん!
最近の作者の言動はなんというか、えっと…。
…うん、うまくオブラートに包んだ感じの言葉が浮かんでこないからストレートに言うと、ブクマと☆評価に恋をしているように見える。