表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/41

16話 そんな暇はない

 私、やはりちょっと有能なのかもしれない。北の池での一件は、我ながら完璧な対応ができたんじゃないかと思う。


 あの日からベルさんは北の池でメリッサさんを召喚することをやめ、メリッサさんと連絡を取る必要がある時は必ず私の部屋で彼女を呼び出すようになった。


 元々ベルさんがメリッサさんとの面会の場所を北の池にしたのは「人が来ない」というのがその理由だったらしい。


 なぜベルさんの部屋じゃないのかというと、ベルさんの部屋がある使用人用の別棟は防音の面でも心許ないし、何よりも一人ひとりの部屋が狭いから。


 ベルさんの部屋でメリッサさんを召喚すると近くの部屋にいる人が原因不明の死の恐怖に震えることになるかもしれないから別の場所を探す必要があって、夜は滅多に人が来ない北の池がちょうど良かったと。


 でも結局北の池には私がやってきてメリッサさんの存在やベルさんの力がバレてしまったわけだし、今後も似たようなことがないとは限らない。


 だから私は、他人に見つかる危険性がより低い場所として私の部屋を提供するから、今後はメリッサさんを呼び出す時は必ず私の部屋を使ってほしいとベルさんにお願いした。


 最初ベルさんは遠慮してたんだけど、私以外の人間にメリッサさんと一緒にいる姿を見られるのはまずいし、私はできればメリッサさんとも仲良くなりたいからと強引に説得し、渋々了承してもらった。


 その後はベルさんとメリッサさんの定期連絡は私の部屋で行われるようになり、私はいつの間にかメリッサさんともかなり仲良くなっていた。


 もちろん、今でもメリッサさんが来ている時は死の恐怖を感じてはいるんだけど…。別に我慢できないほどの怖さではないんだよね。


 私にとって死は「未知のもの」ではないし、最初から18歳になったらまた殺されるかもしれないという状況の中、常に死の恐怖と戦っているわけだからね。もしかしたら他に人に比べると死の恐怖に対する耐性が高いのかもしれない。


 単純に慣れの問題なのかもしれないけどね。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 北の池での一件があった夜から数か月が経った。


 最近、ちょっと謎めいた動きを見せている白い生命体がいる。その白い生命体とはケネス・ブライトン伯爵令息のことなんだけど…。


 彼がうちの屋敷の近くに居を構え、うちに頻繁に挨拶に訪れながらも比較的静かに療養生活を送っているという大まかな流れは一周目、二周目と同じだった。


 でも最近の彼の行動が過去の二回とは明らかに異なっていて、何だかとても怪しい。


 別にケネスくんがロイのように何か良からぬことを企んでいそうという意味ではないよ。ただちょっと予想外で、かつ私にとって割と面倒な動きを見せているだけ。


 過去の二回のケネスくんは、ちょうど今くらいの時期からお姉ちゃんに急接近して、どんどんお姉ちゃんと親密になっていったんだよね。


 だから今回もそうするんだろうなと思っていたし、ぶっちゃけ彼がどこで何をしようが私には関係ないからどうでも良いとしか思ってなかったんだけど…。


 なぜか今回のケネス君は私に興味津々だった。しかもその興味というのが明らかに恋愛対象としての興味のような気がするんだよね。


 だから私はちょっと戸惑ってるというか、困っている。


 私は自惚れや勘違いに定評がある女だから、今回のことも私の自意識過剰なのかもしれないけど…。


 仮にケネスくんが何らかの理由で今回はお姉ちゃんじゃなくて私に興味を持ってくれたとしても、私がケネスくんと付き合うことはあり得ないんだよね。


 だって、私は恋愛をしている場合じゃないから。3年半後にまた死ぬかもしれないのに、悠長に彼氏なんか作っている暇はないからね。


 そんな時間があったらベルさんの様子を見に行くべきでしょ。ベルさんが必要としているものがないか確認すべきだよ。ベルさんが寂しい思いをすることがないように彼女のそばにいるべきだと思う。


 それが、生き残るために私が今やるべきことだからね。


 ということで、私はケネスくんには全く興味を示さず、彼のお誘いは失礼にならない程度に冷たくあしらっているんだけど…。


 ケネスくん、儚げな見た目に反して割と粘り強い人で、なかなか諦めてくれないんだよね。しかも周りも「お似合いだ」とか言って妙に乗り気でさ。


 そんなことを続けているうちに、私は「ケネスくんと私が絡んでいるところを見ると、ベルさんがなんとなく不機嫌になる」という恐ろしい事実に気づき、とんでもないことになる前にケネスくんとの関係に決着をつける必要があることを痛感した。


 そして私からケネスくんに話をしようとしたタイミングで、何かを決心したような表情のケネスくんに「大事な話がある」と言われたので、私はちょうど良いと思って彼が指定した場所に向かうことにした。


 これ以上ケネスくんと絡むことでベルさんの心証が悪くなるとシャレにならないからね。突然降って湧いたような白い物体に今までの努力をすべて台無しにされてたまるか。


 …この話し合いで完全に決着をつけなきゃ!

これ以上エリカとケネスが絡むことで読者様の心証が悪くなってブクマと☆評価をいただけなくなるとシャレにならないからね。突然降って湧いたような白い物体に今までの努力をすべて台無しにされてたまるか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >…この話し合いで完全に決着をつけなきゃ! あっ…(察し) [一言] いつも楽しみにさせてもらってます。 完結までこれからも頑張ってください。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ