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10話 もう一人の死神

「驚きました。エリカ様が噂よりも遥かに美しい方で」

「あら嬉しい。でもメイウッド様がお世辞まで上手な方とは聞いてませんでしたよ?」


 人懐っこい笑みを浮かべてお世辞を言ってくるイケメン騎士に対して、私もフレンドリーな笑顔で返事をした。


 …心の中では目の前のイケメンを警戒しまくってるけどね。


「ロイでいいですよ。これからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願い致します。…ロイ様のようなお強い方に来ていただいてとても嬉しいです。頼りにさせていただきますね」


 もちろん、実際には彼を頼りにしたりはしない。できるわけがない。逆に彼からどうやって身を守るかを真剣に考えないと。


 今、私と挨拶を交わしたイケメン騎士はロイ・メイウッド。


 先日の魔物騒動のあと、国境警備と魔物討伐のための援軍として王都から派遣された騎士団の一部隊の隊長。


 まだ20代前半と若いけど、ものすごく腕が立つうえに武家として有名なメイウッド伯爵家出身ということもあり、異例の出世を重ねているらしい。


 気さくで人懐っこい性格のイケメンで、男女問わず誰にでも好かれる人たらしでもある。


 しかし、はっきり言って私は彼のことが全く好きではないし、今後も好きになることは絶対にないと断言できる。


 理由はもちろん前世の記憶。


 恥ずかしい話、私は一周目でロイに口説かれ、簡単に落とされていた。


 もろ好みのタイプと言っても過言ではない、少しワイルドな感じの年上イケメンで、有能な騎士。性格もよく、女の扱いにも慣れている。


 そんな彼に言い寄られた一周目のバカな私が、あっという間に彼に夢中になったのはある意味仕方のないことだと思う。


 問題は彼のその後の行動だった。私をメロメロにしたあと、彼はあろうことかベルさんのことも口説き始めたのである。


 一周目の私は元からわがままで傲慢で高飛車で攻撃的で短気な性格(うん、最悪だね…。)で、まさに物語の中の「悪役令嬢」といった感じのダメダメな小娘だった。それは認める。


 でも私がベルさんに対して本格的ないじめや嫌がらせをするようになったきっかけは間違いなくロイの行動にあった。


 それまでの私はベルさんにとって単にめちゃくちゃ気難しくてわがままな主人に過ぎなかったはず。


 それが「嬲り殺してやりたいくらい憎い小娘」になったのは、きっとロイのことで嫉妬に狂った私がベルさんに対して執拗で悪質ないじめ・嫌がらせをするようになったからなんだ。


 しかも一度死んでから落ち着いて思い出してみると、ベルさんはロイのことをほとんど相手にしてなかったんだよね。


 それなのに私はベルさんに激しく嫉妬して、今思うと自分でもどん引きするような陰湿ないじめ・嫌がらせ行為をしていたわけですよ。


 …うん、嬲り殺されても文句は言えないね。いや、さすがに命まで奪うのはちょっとやりすぎだとは思うけど、でもベルさんに強烈な恨みを持たれたこと自体はどう考えても自業自得だと思う。


 そして一周目の最後の瞬間、アンデッドの大群を率いてリュミエールの屋敷を攻撃するベルさんの隣には、ロイの姿があった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 一周目の記憶だけなら、私はロイのことをただの女たらしの浮気者としか思わなかったと思う。


 最後は性格に致命的な問題があった私じゃなくて、ベルさんを選んだのね、と。


 実際に二周目の私はロイのことをそのように思っていたし、だからベルさんだけじゃなくて彼とも一切関わろうとしなかった。


 放っておけば二人は勝手に付き合うなり結婚するなりするだろうと。


 私がロイと関わることで今度は逆にベルさんが私に嫉妬したりしたら最悪また殺されるかもしれないからね。だからロイには絶対に近寄らないようにしていた。


 でも二人が結ばれることはなかった。しかも単に結ばれなかっただけではない。


 全力で二人と距離をとっていたから具体的に何があったかは知らないけど、二周目の終盤、ベルさんを屋敷から追放すべきと強く主張していたのは他ならぬロイだった。


 彼の主張は、ベルさんはネクロマンサーの中でも異質な力を持っていて、ベルさんが意図していなくても彼女の存在がリュミエール辺境伯領に魔物を誘き寄せているというものだった。


 ネクロマンサーは世間から忌み嫌われる存在で、リュミエールの屋敷内でもベルさんはネクロマンサーの力を持つことが明らかになってから孤立していたようで…。


 結局誰も積極的にベルさんの味方をすることはなく、彼女は屋敷を去ることになった。


 ちなみに私はベルさんが持つ異常な力を一周目で目の当たりにしているので、心の中でなんとなく「ロイの言う通りかも?」と考えていた。


 …うん、やっぱり二周目の私もバカだったよ。


 でも真実はロイの主張とは真逆だったようで、ベルさんが屋敷を去ってから魔物たちによるリュミエール辺境伯領への侵攻が本格的になったんだよね。


 そこで私はやっと「もしかしたらベルさんは、魔物を誘き寄せていたんじゃなくて、逆に食い止めていたのかもしれない」ということに気がついたんだけど…。


 それに気づいてベルさんに土下座して謝罪したところで「もう遅かった」というわけで、私の二周目は終了した。


 ということで、ロイは私の過去の人生終了に二回とも関与していた男なんだよね。そして私の死だけじゃなくて、リュミエール辺境伯家の崩壊にも深く関わっている。


 今思うと、私は一周目のロイとベルさんが「結ばれた」と勝手に思い込んでいたけど、もしかしたらそれも違っていたのかもしれない。


 さっきも言ったけど、ベルさんはロイに全く興味がなさそうな感じだったんだよね。だから、一周目の最後の瞬間、ベルさんのそばにロイの姿があったのも、もしかしたら当時私が思っていたのとは違う理由だった可能性があると思う。


 たとえば、ベルさんの私に対する恨みや敵対心を巧みに煽る形で彼女の心を操って、リュミエールの屋敷を攻撃させた…とかさ。


 …まあ、あくまでも推測にすぎないけどね。今から真実を確認する術もないし。でも、ロイという男に何か裏の目的があることは間違いないと思う。


 ロイのその裏の目的が何なのかは分からないけど、おそらく彼は今回もこのリュミエール辺境伯領で何か良からぬことをしようとするはず。


 当然、そんな彼は今回も私にとって死神になり得る。


 そして私が自分の行動を改めることで私を直接殺したり見殺しにしたりするのを考え直してくれるかもしれないベルさんと違って、何らかの裏の目的のために動いているロイは私の行動とは関係なく最終的に私に牙を剥いてくる可能性が高い。


 ということで、私は彼を全力で警戒しつつ、なるべく彼とベルさんの接点を作らないように努力することにした。


 今までの経験から、ロイとベルさんが接点を持つと私にとってはロクなことにならないことが分かっているから。


 まぜるな危険。


 …そう、私はすでに人生三周目。


 相変わらずポンコツなのは認めるけど、それでも他の人にはない「過去二回分の経験と知識」がある。


 覚悟しときなさいよ、ロイ・メイウッド。今度こそ簡単にはやられないぞ!


 ……たぶん。

作者のその裏の目的が何なのかは分からないけど、おそらく作者は今回も後書きでブクマと☆評価のおねだりをしようとするはず。

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