4 SIDE アルフレッド
許せない。俺は、次の日、おかみさんに言付けて、一人でギルドに向かっていた。ルチルの泣き顔と、震えていた頼りない肩を思い出すと腑が煮えくり返る。
ギルドに顔を出すと、お疲れ様です、と受付嬢がにこやかに微笑む。
「光弓士アルフレッドさんですね。本日はどのようなご用件で」
「依頼に出ていた新しいダンジョンを踏破した。ギルドマスターを呼んでくれないか?」
かしこまりました、と彼女が頭を下げてしばらくして二階に通される。
そこには、大きめの机があり、髭面の男が座っている。
「まあ、座れや。久しいな、アルフレッド」
「お久しぶりです。マスター」
「で、どうだ? ダンジョンは?」
「はい。階層は40階、中規模のダンジョンです。水竜のダンジョンでした」
いいねぇ、とマスターはヒュウと口笛を吹く。
「こりゃあ、この街に冒険者が増えるな。にしても、また一人で行ったんだろ? 今回、やけに早かったじゃねぇか」
「いえ、今回は二人です」
「お前さんがパーティーだと?」
面白そうにギルドマスターは笑う。
「ちょっと個人的に欲しい情報があるんですが」
「ふうん。そのメンバー絡みか? さては……可愛い子なんだろ。何があった、吐け」
「ええ……可愛い子ですよ」
こうなることは予想の範囲内で、さらっと言い返すと、面白くねぇ、とマスターはぼやく。
「ルチル、という名の竪琴師なのですが」
マスターの顔色が変わった。
「そいつ、黒髪青目の女か? 以前のパーティーメンバーから報告が上がってきている。いつもメンバーの怪我の原因を作っていたとか、そもそもの能力が低いとかだ。三人から証言が取れている。あとはリーダーの男に媚びて寝込みを襲おうとしたとか下の連中が面白おかしく話しているのを聞いたな」
俺は拳をマスターの机に叩きつけた。
「くそっ」
「なんだ、違うのか」
しれっと言うマスターをぶん殴ってやりたかった。
俺は、彼女に出会った時のことを話す。
「身ぐるみ剥いで置き去りね。ひでぇ話だ」
「それだけでは、ありません。彼女は、規格外なほど優秀です」
そう、一般的に竪琴師は器用貧乏とは言われているが、オールマイティーではない。自分の得意なことに比重を置くためか、バフ、デバフ、回復を全てこなせる人材など聞いたことがなかった。
「ほう、それが本当ならギルドとしても欲しい人材だな」
話を聞き終えたギルドマスターは、にやにやしている。もはや、ルチルに興味を持ったことを隠してはいない。
「わかった。ギルドに来るように言ってくれ。お前が嘘を言っているとも思えねぇが、あとは俺が判断する」
「お願いします。そろそろルチルが起きると思いますので失礼します」




