2 SIDE アルフレッド
竪琴師、ルチル。ふんわりとした黒髪に青色の大きな瞳をもつ女。
俺の久しぶりに得た旅の仲間は、性格も悪くないし、その腕は確か。
普段、人と関わるのが面倒でソロで動いていた俺だったが、彼女を仲間にしたのは即決だった。短い間だったが共闘して、そのサポートに惚れ込んでしまったのだ。
ダンジョンは不思議な作りだ。一階ずつ降りるごとに、敵は強くなり、宝箱の報酬はよくなる。5階ごとにボスが待ち受け、特別な宝箱が開けられる。10階ほど降りて、俺たちは宝箱を開けることにした。
罠が仕掛けられているかもしれないので、普段はこのくらいの層階の宝箱は素通りする俺だが、今は、ルチルの装備をどうにかしなければいけない。
ナイフを手に、慎重に宝箱に近づく。
幸いにも罠はなく、腕輪が出てきた。
差し出すと、ありがとう、と彼女は微笑む。
可愛い。決してそんなつもりで誘ったわけではなかったが、この笑顔は心臓に悪い。
「いつも、こんなペースで降りてるの?」
15階まで差し掛かって、周りの様子が水を含んだ緑のような空間に変わってきた頃、ルチルが聞いてきた。
いや、と首を振る。今回のペースはありえないほど早い。
「身体強化をかけてくれているだろう? 感覚が鋭くなるから、罠や敵に気づきやすくなる。面倒臭そうなのには遭わなかっただろう?」
「確かに。でも、アルフレッドさんだから出来るたのだと思うわ」
彼女は少し寂しそうな顔をした。ああ、これは前のロクでもないパーティーを思い出しているのだ。
「そろそろ休憩にしよう。歩き詰めで疲れたろ?」
俺は、ルチルのそんな顔が見たくなくて、努めて明るくそう言った。
彼女を傷つけた顔も知らぬ連中が許せなかった。