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第22話 見学

 討伐目標であるベリースライムが生息している林まで行くため、僕たちは馬車に乗った。だいたい片道五十分ほどかかるようだ。

 待ち時間としては決して短い時間ではないため、当然、馬車内では雑談が始まる。



「実は自分、まだDランクだけど既に擬似スキルを一つ『極』にしてるんだぜぃ」

「そうなんですか!」

「【擬似鍛治師・極】。実家は鍛冶屋、だもんね」

「おうよ!」



 なんでもスミスさんは最初からその能力を所持していたらしい。

 子供の頃から親のそばで鍛冶の手伝いをし、自分も儀式で鍛治師系のものになると思っていたら上級剣士になってしまったとか。


 実はこのように、子供の頃から何かしらの経験を積んでて擬似職系の能力を持つことになる人は少なくない。とはいえ最初から『極』となると、相当才能があったんだろう。


 最初は親御さんにはそのまま能力を生かして鍛治師として働くと宣言したらしいけど、その親御さんがスミスさんに「上級剣士としてしばらく働いてみた方が後に鍛治でその経験を活用できるかもしれねぇぜぃ」と言ったから、スミスさんはその考えに賛同したらしい。

 そうして通っていた王都の学び舎から試験を受け、マスターにスカウトされ、冒険者になったのだとか。たしかに全貌を聞くとあの人が好きそうな内容だ。


 リンさん曰くこの三人の武器は全てスミスさんが調整したものらしく、また、ギルド内では他のメンバーの武器のメンテナンス代行をしてお小遣い稼ぎをしているらしい。


 そしてリンさんがそのまま続けてこのパーティ結成の経緯を話し始めた。


 このパーティのうち学び舎に通い、テストからスカウトされたのはスミスさんだけらしく、リンさんとヘリンさんは自分から駆け込んでブレーメンに登録している。そのため、このような研修もスミスさんしか受けていない。研修はスカウト組の特典のようだ。


 詳細は話さなかったけれどリンさんとヘリンさんの二人の人生の境遇が似ていたらしく、二人は冒険者となってからすぐに仲良くなりパーティを組んだ。

 そうして仕事しているうちに前衛職が足りないことに悩まされることが増えてきたので、武器ばかりに非常に強い興味を持ち、変な手出しをしてこなさそうなスミスさんを引き入れたらしい。



「一番後に入ったスミスがリーダーな理由は、単純に私たちの中で一番強いからなの!」

「一番早く、単独でDランクに、なったから」

「そうなんですか」

「まー、三人しかいねーし、リーダーとかあんまり関係ないんだがよぃ……ん? おぅおう、そろそろつくぜぃ」

「ほんと? おしゃべりすると早いなのね!」

「ねー」



 林の入り口付近で馬車は停まり僕たちは外に出た。これから人生初、冒険者として現場に立つんだ。僕が戦うわけじゃないけどこの仕事をしてる感はなかなか良い。

 

 なお、新人である僕が荷物持ちをしたりなんかは、パーティとして共通の『空間の鞄』を買ってあるためしなくていいらしい。

 正直助かった。僕は重いもの持つの苦手だから、頼まれても断るしかなかったし。

 ……寝袋とか結局持ち歩けてないから、僕もお金貯めて『空間の鞄』を早めに買わなければ。お父さんが仕事で使ってるのを見てきてるからどれだけ便利かは知ってるもの。



「よーし、じゃあリン、たのむぜぃ!」

「任せてなの!」



 リンさんは『探索』という種類の魔法を持っているみたい。目標物の居場所や、仲間の居場所などがわかる冒険者にとって優れてる魔法だ。

 この魔法種を扱えなかったら探索専用の道具を買わなくてはならずいろいろ面倒がかかる。その上、探知できる範囲や数などが、最終的には魔法の方に軍配があがる、って本で読んだ。



「ここからねー、二時と三時の間の方向! まっすぐ行ったところにたくさんベリースライムが居るみたいなの! ちょっと歩かなきゃいけない距離だから、詳しい個体数はわからないなのー」

「ありがとよ。じゃあいくぜぃ! ギアルは怪我しねぃように気を付けてついてこいよぅ!」



 パーティは進み始めた。

 途中で何回かターゲットじゃない魔物に遭遇するも、この辺りはランクが低い魔物ばかりなせいか僕たちのことをスルーしてくれる。

 魔物はランクが高くなるにつれて人間を舐めるようになり、エサ目的やオモチャとして遊ぶ目的で襲うようになっていく傾向にあるらしい。例外もたくさん存在するけど。


 おおそよ30分ほど歩いて、ついに朱色のぷよぷよしたものが一つ、遠目ではあるけど僕たちの視界に入った。間違いなく図鑑で見た通りのベリースライムだ。



「よぅし、見つけたぜぃ。スライムは逃げるのも遅い。このまま近づいて一網打尽にする」

「「了解(なの)!」」



 見えているベリースライムに向かって駆けてゆき、一定まで近づいたところで僕たちは足を止めた。

 そこにいたのはおよそ十二匹ほどのベリースライム。全個体こちらに気がついたようで、目であり核である球体をこちらに向け、のそりのそりと近づいてくる。

 ……おかしいな、ベリースライムは知能が高くないから、攻撃されない限り人間と出会っても無視して自由気ままに動き回るはずなんだけど、どうしてこんなに統率が取れてるんだろう。



「たしかに、多い。それに、逃げようとしない?」

「腹減ってんじゃねぇのかぃ? どぅせリンの持ってきた飴玉の匂いでも嗅ぎつけたんだろうよぃ」

「そーなのなの? でもこれは都合がいいなの!」

「……ギアル、よく見ておけよー!」

「……はいっ」



 スミスさん、ヘリンさん、リンさんはそれぞれ自分の武器を構え、ベリースライム達にその矛先を向けた。






1日4話投稿は今日まで! 次回からは1日1〜2話の投稿になります。

次の投稿は明日の午後6時と午後10時に1話ずつの計2話です!



「擬似 職について」


 擬似職の能力はその名の通り、擬似的に該当する職業の力を手に入れられる能力のこと。

 例えば魔法使いが【擬似 剣士】を習得したならば明らかに剣の扱いが上手くなり、肉体も近接職にふさわしいよう強化が施される。本職が魔法使いなのに剣士のように魔力が少なくなってしまう等のデメリットはない。

 また、擬似職の能力にも段階があり、普通の能力と同様に無印~極まで存在する。


 擬似職はその段階によって、普通の職業と同じように数値で表すことができる(第5話のあとがき参照)。


無印→×0.50

改→×0.75

真→×1.00

極→×1.25


 仮に先程の魔法使いが【擬似 剣士・極】まで成長したとしたら、剣の扱いや肉体の成長速度が、本職の『上級剣士』と同等になる。

 (本職の者は最初からずっと剣を扱い続けているため、剣のみで勝負した場合、練度の差で勝つことは難しいが)


 さらに例えば本職が『剣士』でも【擬似 剣士】の修得は普通より難易度は高くなるが可能である。

 もしそうなった場合、元の倍率に能力の倍率を加算したものになるので、その剣士の剣の強さは本来なら2段階上の『剣豪』と同等。『真』まで育てれば最上級の『剣聖』、極めればそれ以上となる。


 なお、本職でも擬似職でも、職業の力を得られるものを個人が複数入手していた場合、肉体・魔力の成長度は加算されない。しかし、「良いとこどり」に近い状態にはなる。


 例えば『短剣使い』が【真・擬似 斧使い】を習得していた場合、斧使いのように力の強さと体の頑丈さが育つようになりつつ、短剣使いとしての行動力の速さの育ちはそのままとなるが、その域を超えることはない。





(非常に励みになりますので、もし良ければ感想やブックマーク、☆評価、レビューなどの方、よろしくお願いします!)


(それはそうと、投稿が早すぎて追いつけないという意見を何件か私本人に直接いただきました。やはり5日で22話投稿はやり過ぎだったと反省しています。申し訳ないです)

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